夢の遊園地へご招待
みんなで遊覧船? に乗ってゆったりと園内を回る。柔らかな風が頬を撫でる。爽やかで居心地がいいじゃないか。景色もいいぞ。船が少し高い位置へ登ったりもするので、アトラクションがよくわかる。この遊園地は観覧車もジェットコースターもあるようだ。ホラーハウスや休憩所、食堂の位置も感覚で掴めた。
「学園の技術力どうなってんだか」
「かなり大規模なものを作ったのう……これは今日だけでは回れんのじゃ」
「ホテル常設らしいわ。今日はそこに泊まりましょう」
「楽しみ! あのお城みたいなやつだよね!」
遊園地後方にある城がそのままホテルにもなるらしい。どうせ高いんだろうなあ。でもまあしばらく戦いの日々だった気がしなくもないし、ここらでリフレッシュするか。そう決めたら素直に楽しもう。
「じゃあ次はあの水の滑るやつね!」
スプラッシュなんとかだ。今日はみんなに付き合うので異論はない。ジェットコースターもやって、二連続で動きの激しいやつをやる。学園生のだけあって速くてやばいぜ。
「今度は気分を変えてホラーハウスじゃ」
こいつら怖がる前からくっついてくる。そんな感じでアトラクションを楽しみ、食事ででかいハンバーガーを食う。パレードを見ていたら夕方。観覧車に乗って夕日を見る。
「なんと充実した一日」
素晴らしい。なんとトラブルゼロである。奇跡やん。感動すらしている。夕日が哀愁と達成感を増してくれた。
「楽しかったよ!」
「また来ましょうね」
「ああ、こういう日なら歓迎しよう」
全員でホテルへ。中も西洋風で豪華だ。嫌味にならない程度に装飾品が並ぶ、柔らかい絨毯の上を歩く。そして部屋へ。風呂も豪華だ。順番に入って、豪華な夕飯を食って、そして柔らかいベッドで寝る。素晴らしく運がいいぜ。気分がいいので四人で寝ることも許した。
「……ん?」
小刻みな揺れを感じて目が覚める。三人とも同じらしく、軽く警戒態勢に入った。
「地震か?」
「妙じゃな。地震くらい制限しておってもおかしくはないのじゃ」
「揺れが長いわね」
「なんか激しくなってない?」
ひときわ大きく揺れ、急な静寂が訪れる。警戒したまま、リリアが窓を開けた。
「うーわ」
「不吉な声を出すな。絶対トラブルやん」
「めっちゃ異界化しておる」
全員で外を見る。空が赤く、雲が紫である。だがそれはこの城近くであり、遠くでは夜空が普通にある。なんかごっちゃ混ぜの世界だな。
「解説頼む」
「わしも未経験じゃが、夢の中に近い場所じゃな。さっきの揺れはここに引きずり込まれたのじゃろ」
「嫌な雰囲気ね。暗くて気分の悪い気配がするわ」
「遊園地ごと引っ張られたんだとしたら、お客さんは全員いるのかな?」
ホテルの客を守るなんて絶対嫌だぞ。何人いると思っているんだ。そこまでの義理がねえよ。嫌な予感だけが募る中で、廊下で大きな音がした。
「敵かな? 味方かな?」
「俺たちに味方っているのか?」
「おぬしは交友関係が狭いだけで、知り合いはおるじゃろ」
開けたくねえなあ……絶対面倒事だよ。ゆっくり扉に近づくと、窓から白い糸の塊が飛んでくる。
「おっと、それは読んでいたぜ」
俺とリリアの魔法が直撃し、窓から落ちていく蜘蛛。丸焦げになったし、生きてはいないだろう。
「なんだあのでかい蜘蛛」
「やっぱり敵が出るのね」
「仕方がない。外に出よう」
廊下に出ると、同じように出てきた人間もいるようだ。蜘蛛と戦っている。
「蜘蛛って基本的にいっぱいいるわよね」
「いっぱい倒すのかなあ……」
「ウウゥゥウ……」
曲がり角から人間っぽいシルエットの化け物が出てきた。犬っぽい顔のなんか不快感のある化け物だな。一気にこちらに飛びかかってくるので、容赦なく切り落とす。
「雷光一閃!」
妙に弾力のある肌だ。手応えが独特で、体表に苔がある。あんまり近づきたくないな。なんか不潔だ。
「ウアアウ……アグギ……」
そんなに強くはないらしい。簡単に死んだ。念の為に頭を吹き飛ばすが、ゾンビとは違う生態なのかも。
「外よ。遊園地からも敵が来るわ」
窓から見ると、遊園地内にも敵が出てきている。ホテルを目指すやつを止めよう。
『ガード』
ガードキーでホテルをドーム状に包む。これで外敵はどうにかなる。
「散開してホテル内の敵を全滅させる。急ぐぞ」
「了解!」
俺たちがいるのは三階。イロハとリリアが下に行ったので、俺は上だ。階段を登ると、既に戦闘が始まっている。学園の生徒だろう。数が違うからか、じりじりと押され気味だ。逆に言えば、俺に注意を向ける敵がいない。
「サンダースマッシャー!」
戦闘に背後から参加して、敵をはさみうちにしよう。
「雷分身! 急急如律令!」
分身を三体作って一緒に突撃。ざくざく切り刻んでいく。
「おお、援軍か! 助かる!」
「なるべくこいつらまとめてくれ! できるか?」
「雷縛呪!」
分身を三角形に配置。リング状に伸ばした雷の縄で敵を握り込んでまとめていく。
「ナイスだ! 集中攻撃!!」
攻撃魔法の連射で敵を全滅させた。少なくとも、ここの廊下にもう敵はいない。つかの間の歓喜に包まれる中、エリスタークがこちらに近づいてきた。
「助かったぜアジュ!」
「エリスターク? なんでこんなところにいるんだよ?」
「ギルド戦に勝ったご褒美として、みんなで遊びに来たのさ。こういうのもギルマスの役目だぜ」
「そら良心的だこと」
こいつ基本的に有能で善人なんだなあ。俺もギルメンには気を遣ってあげよう。
「そっちもギルメンと一緒か?」
「ああ、みんなホテル内の敵を潰しに行った」
「よし、じゃあこの階の東側はオレらに任せな! 確か三階にはミルドリースのギルドがいるはずだから、そっちとも連携すりゃ楽勝だろ」
「あいつらも?」
「オレらに負けちまったから、モチベ向上のためにギルメン連れ出したんだと。ケアのうまい女だぜ」
案外有能な味方は多く来ているのかもしれない。警備の兵士もいるし、遊園地内には超人もいるはずだ。
「ホテルに結界が張ってある。できる限り出るな」
「あいよ、西側がどうなってるかわかんねえ、気をつけろよ。お前ら、四階東側を制圧する! なるべく複数で動け!」
「了解!!」
未知の場所へ行くより、俺も安全圏を作るべきだろうか。このままじゃ今日徹夜になっちまうしな。
「夢の世界で徹夜ってのも意味がわからんなっと、サンダースマッシャー!」
窓から来る蜘蛛を撃ち落とし、近くの連中と一緒にゾンビもどきを倒す。敵なんて残しておいても得はないからな。
「サンダードライブ!」
他の連中の射線を邪魔しないように、壁や床に電撃を走らせて敵を止める。あとは勝手に倒してくれるので、やはりあいつのギルドは優秀だ。
「よっしゃざまあみやがれ化け物!」
「エリスタークの命令だ。四階東側を制圧する。なるべくまとまって動け」
「了解! あなたリリアちゃんと一緒にいた男ね」
「お前さんも気をつけろよ、リリアちゃん悲しむぞ」
「了解、そっちも気をつけな」
敵はザコばかりだし、この階は問題なさそうだ。ホテルは全五階と屋上だったはず。まずは東側を完全にするべきかもしれない。考えながら歩いていると、シルフィから通信が入る。
『みんな聞こえる? 三階東側でミルドリースさんに会ったよ。ここを安全地帯にするんだって。わたしも協力してるよ』
『こちらアジュ。四階東側でエリスタークのギルドと遭遇。この階の東を制圧するらしい』
『こちらイロハとリリアよ。二階は順調に制圧中。食堂や宴会場のように広い場所も多いから、来るなら第二宴会場が避難場所よ』
『二階は味方の兵士が多いから問題なしじゃ。一階は超人が排除し続けておる。行かなくても問題ないじゃろ』
想定より敵が多いな。どこから湧いているんだ。できる限り急ぐべきかもしれない。指示を出して先へ行こう。
『了解。各自そのまま東側を制圧だ。俺は五階に行く』
『オッケー! 任せて!』
五階はやたら静かだ。蜘蛛もゾンビもどきもいない。だが威圧感を放つ何かが先で待っている。まるで番人だ。コウモリのような翼の獣だな。顔の部分に何も無い。牛のようなツノの生えた悪魔っぽい何か。見たことのない敵だ。
「中ボスってところか?」
リベリオントリガーを使うと殺気に気づいたのか、大きく翼を広げてこちらを威嚇してくる。さて、あまり強くないと助かるんだがね。




