依頼の終わりと次の予定
試合はエリスタークのギルドが勝利し、狙撃手も逮捕した。リリアからの連絡で、胴元の連中も逮捕できたと報告があった。なんだかんだで大成功である。
「おつかれさん」
「おう、そっちも大変だったみたいだな。ギルドを代表してオレから礼を言うぞ」
試合後にエリスタークのギルドに集合。俺のギルメンも全員いる。なんか知らんが祝勝会に混ざっていくことになった。肉がうまそうなのでよいぞ。
「これで依頼は終了だな」
「ああ、というか修行つけて作戦くれた時点で終わりっちゃ終わりだったんだ。報酬増やしておかないとな」
「そこまでせんでもいいが、まあ受け取っておくよ」
「そうそう、ギルマスとしての器のでかさが問われているのだよ。オレはそこまで計算できる男なのだ」
そして飯を食いつつ話を聞いていく。リリアは囲まれて感謝されているようだ。面白いので少し離れて観察する。
「リリアちゃん凄いよねー。アドバイスバッチリだったよー」
「いやあありがたいね。うちにいて欲しいくらいだよ」
「本人の努力がなくてはできんことじゃよ。みんながんばったのじゃ」
「ええ子や、リリアちゃんはええ子や」
あまりちやほやされる機会がないのだろうか、照れくさそうで愉快だ。
「アジュも活躍したって聞いたぜ」
「相手が強くて助かっただけさ」
そんな感じで普通に飲み食いして終わったのだが、帰り道でやた子がやってきた。
「不吉な……」
「うちは縁起物っすよ。やた子ちゃんを見るといいことがあるっす!」
「でも悪いニュースなんでしょう?」
「……否定できないっすね」
やっぱ不吉じゃないか。そういう役回りなのかもしれないが、まあ間違いなく面倒事だよな。歩きながら四人で聞く。
「まず今回のお仕事お疲れ様っす。それで捕まえた裏賭博の連中なんすけど、なんか強力な呪いで死んだっす」
「えぇ……両方か?」
「両方っす。かなり強力な呪いだったっす。ただギルド関係者が死んでないっすね。なので原因は賭博連中だと思うっす。一応関係者の生死を確認中なんすけど、アジュさんたちは厄介事にかかわりまくるんで、なんか手がかりとか無いっすかね?」
「ねえよ。少なくとも、俺たちがきっかけじゃない」
「うーむ、エリスタークさんのところも無関係だったし、今回の事件は長引きそうっす。みなさんも気をつけてください。呪いが狂気を呼び起こすタイプというか、どうも邪神の気配がするらしいっすよ」
またかよ。最近妙に変な敵と縁がある。出会わないように気をつけよう。学園から出なければ少しは安全だろうか。
「あんまり見ないタイプの呪法らしくて、最近出てきた外の世界の神じゃないかって調査班が言ってたっす。なにかあればうちらに知らせて欲しいっす」
「外の世界の神ねえ……オルインの神じゃ勝てないのか?」
「敵の大ボスがどのくらいかはわからないっすけど、聞いた限りじゃそこそこっすね。人間を狂気に陥れることに特化しているというか、オルインの神とガチバトルできるやつは少なそうっす」
「状態異常特化か……そりゃめんどいな。俺たち以外じゃ狂うだろ」
「ですねえ。深入りしなくてもいいっすから、なんか見つけたら教えて欲しいっす! 今後も事件からアジュさんにぶち当たるはずっすから!」
「やめろマジで」
なぜ普通に学園生活がおくれないのか。余計なことに首を突っ込まず、普通に魔法の研究とかしよう。そう思って家に帰り、数日後の昼。四人で昼飯を食っていたときのこと。
「何も起きないなら起きないで不安になるよな」
「なんじゃろうなこの気持ちは」
パスタの店で楽しく食事している。気候も程よく暖かく、店内の雰囲気もいい。もちろんパスタの味もいい。なぜこんな普通のことが貴重に思えるんだろうね。
「このあたりで誰かが依頼を持ってくる流れがあるわね」
「いつものやつだ。いつものやつがくるよ」
みんな警戒している。それだけイベント山盛りの日々なのだ。とりあえず何も起きないうちに完食した。紅茶飲んでまったりしていると。
「おや、アジュさんたちじゃないですか」
カムイが通りがかった。なるほど、今回はダイナノイエ編か。前に行ったし、カムイは常識人だから頼りになるだろう。
「来たな」
「みなさんでお食事ですか。いいですね。僕もここには来るんですよ」
「食事に来たの?」
「いえ、もう食べ終わりまして。別の場所に向かう途中です。偶然お見かけしたので、お邪魔でしたか?」
「気にしなくていいよー」
ごく普通に話が進み、次第に警戒が薄れていく。深刻な話を切り出すムードではない。考えすぎなのだろうか。
「では失礼します」
カムイは去っていった。本当に通りがかっただけみたいだ。
「この無駄な緊張感はよくない」
「そうね、もっとお昼を満喫しましょう」
「アジュではないか。奇遇だな」
「やっほー、イロハちゃん。久しぶり!」
ルシードとそのギルメンがやってきた。確かカグラと、レグルスという男の格闘家だ。カグラは勇者科だし何回か会っているので、気軽に手を振ってくれる。
「そっちも昼飯か?」
「ああ、カグラにたまにはこういう洒落た店はどうかと言われてな」
ゆるい雰囲気だ。何かに困っている気配もない。これは安全か。
「そっちも飯みてえだな。邪魔すんのもわりいし、オレらは奥行こうぜ」
「そうだな、では失礼する」
「またねイロハちゃん。アジュくんと仲良くねー」
「ええ、カグラもがんばって」
そして店の奥のテーブル席へと去っていった。ここからじゃほとんど見えない。本当に食事に来ただけだな。
「違ったな」
「違ったわね」
「知り合いが依頼を持ってくるという考えを改めるべきかもしれんのう」
「まあいいか。暇なら暇で、帰って魔法の実験でもしよう」
「遊びに行ったりもしようね」
「いいぞ、どこに行くか決めてくれ。今なら予定はない」
たまにはしっかり遊んでやろう。貴重な休みだし、俺も学園の施設を見て回りたい気分だ。
「あのね、イベントエリアの遊園地がまた新規オープンするんだって!」
「なんだそのエリア」
「学園の広大な敷地には、アトラクションや遊園地のような施設を建てては一定期間で解体する、実験的なエリアがあるわ」
「それそれ、原理はよくわかんないけど、建築科とか魔法科が関係してたり、あんまり大きな声では言えないけど、神様の魔法で作ってる場所だと思う」
「期末試験のエリア的な?」
「そういう感じ」
なるほど、超広い学園だからこそ、複数の雑に扱ったり組み替えたりできる場所があるのか。少し興味が湧いた。
「行ってみるか」
「やったね!」
「それじゃあ行きましょうか」
というわけでやってきましたイベントエリア。高い壁に覆われて、貴族の屋敷のような門がある。俺たちの他にも多くの客が来ているようで、なかなか期待できそうじゃないか。
「さて何があるかな」
「楽しみじゃのう」
四人で入場料を払って中へ進むと、レンガでできた道と建物がある。噴水や植木もあって、西洋風の街並みだろう。遠くに巨大な城が見える。
「どこから行こうかなー」
「戦闘があるやつは控えめにな」
ここでルールを確認。
・アトラクションは戦闘ありとなしに別れている。
・一定以上のアトラクションをクリアすると、最後の城ステージに行ける。
・戦闘はしなくても最後まで行ける仕組みらしい。
「近くのやつから行ってみるのじゃ」
「あの船のやつか。一回ぐるっと見るにはいいかもな」
でっかい船で外周を回るみたいだ。どこに何があるかわかるし、空いているアトラクションもわかってちょうどいい。木造の船に乗り込み、甲板に立つ。あまり揺れを感じないな。俺たち以外の客も酔っている雰囲気じゃない。
「では出発しまーす!」
船がゆっくり動き出す。何が待っているのか楽しみだぜ。




