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私は白猫である。  作者: 堀河竜
私は観光客である
22/63

迷い

案外投稿に時間がかかってしまいました。

一応物語の筋は頭にあったんですが、執筆になるとうまく書けませんでした。


さらに行った事もないハワイを詳しく調べていたので一層時間が掛かりました(汗

いやでも、少しはハワイの事を知れたのでよかったです。

さすが有名な場所のことはあるなと思いますし、そして何より海がすっごい綺麗なんですよ!

いやぁ、ああいうリゾート地、一度は行ってみたいですね。

この場所に来るまで、幾つかの過程があったはずでした。


飛行機が空港に着き、タクシーでホテルまで移動して、さらにホテルにチェックイン。

想太朗さんが水着に着替えるのを待ったりして、少々長い時間を掛けてこの場所に来ました。


その過程あって、私は疲れてしまっていたのですが、そんな小さな事を忘れてしまうぐらいに素晴らしい光景が広がっていました。


底が見えるほどに透き通る、コバルトブルーの海。

太陽に反射して光輝く白いビーチ。


その光景が私達の目の前にあり、私に感動を誘ってきました。


私の心には依然悲しみがありましたが、その心でも海を綺麗だと感じる事ができたのです。


「綺麗なところだね、美尾」


猫の私には答える事はできませんが、本当にそう思います。

今の私の心でも綺麗だと思えたこの海なら、悲しみを癒す事ができるかもしれません。


想太朗さんはホテルの売店でレンタルした、ビーチシートとビーチパラソルを浜辺に置きました。

私達以外に人はちらほらとしかおらず、私達はほとんど自由にシートを敷いて、ビーチパラソルを組み立てられました。


その間、私は走ってみたり、ジャンプしてみたりして、砂浜の感触を踏みしめていました。


さらさらと流れるような感触、包み込んでくれるような砂の感触は、私にとって初めてで、それ故に驚いていたのです。


「君にとっては初めてのものばかりだろうね。驚くのは無理もないよ」


ビーチパラソルを砂浜に立てると、想太朗さんは笑いながら言いました。

その笑顔を見て、私はどきりと心臓が鼓動を打って、思わず足を止めてしまいました。


その笑顔はとても穏やかで、こちらに安心感さえも感じさせるような爽やかな表情です。

私が想いを寄せる人の優しい笑顔なのですから、私が目を止めて反応せずにはいられなかったのです。


しかし、同時に悲しみも思い出してしまいました。

この愛しい人の笑顔は、私が諦めようとしている人のものです。

その笑顔に未だ尚、魅せられている事に、私の胸は再び潰れそうになるまで痛んだのです。


その痛みを紛らわそうと、私は想太朗さんを放って海の方に走っていきました。


私は想太朗さんに付いてきただけですが、できればこの旅行で心を休めればといいなと考えて彼に付いてきたのです。

もう私は悲しんでいてはいけません。


想太朗さんは私を心配して追ってきました。

少し慌てていて、困っている表情をしています。


それでも私は構わず走りました。

普段の私なら、もっと飼い主である想太朗さんを敬って行動しますが、なんとなく、想太朗さんに反抗したくなったのです。


理由は大体ですがわかります。

いけない事ですが、少しでも自分に気を引かせたいから。

それか、これほど私を悲しませる想太朗さんに、少し意地悪したくなったからじゃないかと思います。


いけない事ですし、私らしくない事をしているとも思っていますが、想太朗さんが私をこうさせたのです。

この言い訳さえもどうかと思いますが、私はそう思います。


そんならしくもない私は、波が押し寄せている場所まで行きました。

できるだけ波に近付いたり、足が濡れないように波から逃げたりして、一人で遊びます。


「あはは、猫は水を嫌がるはずなのに、美尾は全然平気みたいだね」


想太朗さんは私が困らせているというのに、はしゃいでいる私を見て、楽しそうに明るく笑っていました。

言葉が通じない猫と人間同士ですから無理もありませんが、私が意地悪している事に気付いてはいないようです。


そんな想太朗さんに、私はまた反抗したい気持ちになりました。

私がこんなに悲しんでいるのに、想太朗さん自身はへらへらと笑っている事に、理不尽とわかっていながら反感を覚えてしまったのです。


「そんな風にはしゃいでると、なんだかあの人を思い出すな……」


そんな事を考えていると、想太朗さんは唐突に物憂げな表情を見せました。

ハワイに来る前、タクシーで見せたものと同じ表情です。


その表情を見て、私は想太朗さんに対する反抗心を忘れてしまいました。

それどころか、想太朗さんを心配して労わる気持ちになります。


あの時想太朗さんがタクシーで見せた表情は、どうやら一時の軽い感情ではなかったようです。


想太朗さんには今、思わず顔に出してしまうの迷いや悩み事がある。

単なる疲労や一時の危機感からの不安や焦りではなく、それよりも重く、心の奥で渦巻いているものがあります。


それが何なのか私にはわかりませんが、私は気になって足を止めました。

波が足を濡らしても、構わず彼に注目します。


「実はこの旅行……遊び目的で来た訳じゃないんだ」


想太朗さんはそう言って話を切り出しました。


誰かに話して気を紛らわそうとしているのでしょうか。

彼は猫の私には話が通じないと思っているにも関わらず、自分の身の内を語り始めます。

「この話をする時は言いにくい事から言わないといけないんだけど……でも、率直に言うと恥ずかしいんなぁ……」


どうやら想太朗さんにとって何か恥ずかしい事を告白するようで、彼の顔は心なしか赤くなっていました。

表情は真面目で、真っ直ぐに私を見ていますが、口ごもっていて、なかなか話が前に進みません。


「まぁでも、やっぱり君が僕の言葉をわかる訳ないし、仕方ないから言うよ。実は今……僕にはその……」


そこまで言って、想太朗さんの口は再び止まりました。

それほど言い難いのかと思いながら、私は想太朗さんの顔をじっと見ていると、彼は遂に決心して告白をしました。


「好きかもしれない人がいるんだ」


髪を揺らめかせ、通っていく風。

浜辺に押し寄せる波が立てる海の音。


そんな中、想太朗さんは私に悩みを打ち明けました。

私は予想だにしなかったその悩み……いや、迷いに驚愕しました。


そして想太朗さんは、今回の旅行はこの気持ちの整理の為だ、と言い加えます。


なるほど、想太朗さんは好きだという気持ちが確かか考えたかったのですね。


同時に、私の中で瞬時に思考が巡ります。


想太朗さんはいつからその気持ちを持っていたか。

タクシーに乗っていた時より以前に、その素振りを見せた事があったか。


そして何より、想太朗さんが好きかもしれない人は誰なのかが、一番疑問に思いました。


「それで、その気になっている人の名前は……」


その一番の疑問の答えを想太朗さんは教えてくれるようです。

私は固唾を飲んで、想太朗さんが明かす答えを待ちます。


しかし、想太朗さんはなかなか打ち明けようとしません。

想太朗さんは照れていて、やはり言い難いようです。


そのまま一分ほどの時間が過ぎました。

私は彼の目をじっと見つめ続け、想太朗さんは私の目を見つめ続けています。


待たされた所為か、私の心臓は激しく鼓動を打っています。

想太朗さんの心臓も早く鼓動を打っている事が雰囲気でわかりました。


私が告白される事は、想太朗さんが気になっている人の事のはずです。


しかしこの状況はまるで……まるで、私が好きだと告白されるみたいな雰囲気じゃないですか。

以前、テレビで見たドラマみたいに、想っている人に愛を告白するような雰囲気みたいじゃないですか。


やめて……ください……誤解しちゃうじゃないですか……。

私は想太朗さんの事が好きなんですから、簡単に誤解してしまうのですよ……?


そうです。

今、想太朗さんが言おうとしている名前の人は、以前私が「ひだまり」から出た時に、想太朗さんの隣を歩いていた女の人のはずです。


まさか、一度遊園地でデートしたっきりの私のはずありません。

私が人間化した時の、森田ミオの事を好きになるはずありません。


そうやって気を紛らわせてきましたが、私はこの長い時間に堪え切れなくなってきました。

心臓が痛いほどに鳴っていて、誤解してしまいそうで、辛くなってきたのです。


それでも想太朗さんが打ち明けるのを待ってると、遂に彼は意を決めたようで、長い瞬きをしました。

そして、告白しようと、すぅっと息を吸いました。




しかし、その息が声に使われる事はありませんでした。

想太朗さんは先程吸った息を吐き、俯いてしまいました。


「ごめん、やっぱり言えないや。ちゃんと考えてから言った方がいいし、まだ秘密にしておくよ……」


想太朗さんは苦笑いを浮かべて言いました。

私は複雑な気持ちを心に持ちながら、目を伏せます。


まだ想太朗さんが気になる人の名前を秘密にする事が、私にとって都合が良くも悪くもあるのです。

このまま秘密にされてしまうとどうしても気になってしまいますし、明かされてしまうとどんな私が待っているかわからなかった

のです。


それ故に複雑な気持ちでいると、想太朗さんが慌てた声を上げました。


「うわ、荷物にカラスが!」


想太朗さんの声で荷物を置いてきた方を見てみると、そこには一羽のカラスが居て、バッグの中を開けて何かをついばんでいました。

バッグには食料も入れていましたし、カラスはそれを食べているのでしょう。


想太朗さんが走って荷物の場所に戻るとカラスは飛んで逃げていきましたが、食料は袋を開けられていました。

それにしても、ハワイにもカラスがいるんですね……。


「あーあ、結構散らかされちゃったなぁ」


食料は半分以上食べられ、辺りに荒々しく散っていました。

想太朗さんはまたも苦笑を浮かべています。

今日は旅行に来たばかりというのに災難続きですね……一部は私の所為でもありますが……。


しかし想太朗さんは「まぁ、これも思い出になるかな」と言って、散らかされたものをさっさと片付けて、シートの上に寝っ転がって日光浴を始めました。


真実を寛大に受け入られる。

それが想太朗さんの良いところであり、私が惹かれたところです。


今となっては忘れたい事ですが、そうだったなあと改めて想太朗さんの魅力に気付き、苦しみを交えて笑いました。


その魅力的な人に好かれるなんて、そんな羨ましい人は一体誰なんだろう。

私はやはりこの疑問が頭に残りました。


結局、想太朗さんは明かしてくれませんでしたが、やはりあの時、想太朗さんの横を歩いていた女の人がそうなんじゃないかと思います。

私は一度遊園地でデートしただけですし、彼の心を惹くほどの思い出もありません。


それに万が一、万が一想太朗さんが私の事を気になっていたとしても、それは私にとって良くない事です。


例え想太朗さんが想ってくれたとしても、私は猫又に生まれた身です。

自分の正体を想太朗さんに明かす事は、他の猫又の危険にさらす事と同義なのです。


正体を隠したまま想太朗さんと添い遂げようと考えても保証はありませんし、交際を断るしか道はないのです。


ですから、想太朗さんが私を好きになる事はもう望めません。

むしろそうなってしまったら、私にとって辛いだけの最悪の展開なのです。


そう考えると私はまた涙を流してしまいそうでしたが、なんとか堪えました。

想太朗さんが横になっているシートに乗って、体を丸めます。


そして、この旅行の第二の目的が慰安である事を思い出し、私は眠る事にしました。


今日は海で日光浴して過ごすようですが、明日にも楽しい事が沢山待っているのでしょう。

そう期待しながら、私は眠りに落ちていきました。



ぶっちゃけて言うと、書き始める前にこのストーリーは頭にありませんでした。

書いている内に流れでできました(汗


しかし方向とストーリーの筋は逸れていませんし、問題はないかなと思います。

後の展開の事を考えても触りはありませんし。


それはさておき、ハワイの海の綺麗さをもう少し上手く描写したかった!

あまり描写を組み込むと読みにくい文になると思って避けたんですが、上手い人はそれを上手く解消して書いているんだろうなぁ…。

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