ー4ー 木漏れ日の約束
広場の喧騒が遠ざかり、耳に届くのは鳥のさえずりと、木々を渡るそよ風の音だけになった。
畑へ続く小道には木漏れ日がまだらに落ち、土に揺れる影を描いている。
歩きながら、会話はいつしか未来の話題へと移っていった。
「さっきはからかったけどさ」
ビットがちらりと横目でレヴィを見やり、少し拗ねたように口を尖らせた。
「お前、最近は勉強ばっかで全然遊んでくれねぇじゃん。つまんねーんだよ」
レヴィは一瞬きょとんとしたが、すぐに頬をかすかに赤らめて、小さく息を漏らした。
「ごめんごめん。でも、本格的に学ぶならやっぱり王都にある学舎に挑戦したいんだ。医術や薬学を教える学舎は各地にあるけど……王都のメルキーズ公爵家が理事を務める学舎は、この国でも最先端で、最高峰の場所なんだ。どうせ学ぶなら、一番いいところで学びたいだろ?」
「そっか……レヴィらしいな」
ロイは口元にかすかな笑みを浮かべ、真剣な眼差しで言った。
「大変そうだけど……君が決めたことなら応援するよ」
アンもゆっくり頷いた。けれどその瞳の奥には、わずかな陰が差していた。
「でも……もし合格したら王都に行っちゃうんでしょ? やっぱり寂しいな」
吹き抜ける風が髪を揺らす中、レヴィはそっと微笑んだ。
「だったら遊びに来ればいい。勉強ばかりじゃ息が詰まるし、友だちが来てくれたら、いい気分転換になる」
「おお、それいいな! 王都見物だ!」
ビットが両手をぶんと広げ、大げさに叫ぶ。声が木々に反響し、鳥たちがぱっと飛び立った。
「アンは前から王都に憧れてたもんな」
ロイがふと口にすると、アンは小さく肩を震わせ、思わず視線を逸らした。
「だって……きらびやかな街並みとか、お店とか……一度くらいは見てみたいでしょ?」
ロイはそんなアンの横顔を眺め、穏やかな表情を浮かべる。
「そしたら決まりだな。レヴィが合格したら、みんなで王都に行こう」
「お、おい……!」
レヴィは苦笑しながら頭をかく。
「そんなこと言われたら、合格できなかったとき恨まれそうで責任重大だな」
「ははっ、それはそうだな!」
ビットが腹を抱えて笑い、アンも思わず口元を押さえてくすくすと笑った。
四人の笑い声は木々を揺らす風に溶け、道の先の畑まで届いていった。




