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アルスレア  作者: ゆきつき
第四章 ラグノアの森

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正体


ロイは、崩れかけた家屋の戸口から外へ出ると、小さく肩を落とした。


「……ミーオも、置き時計も見つからなかったですね……」


「そうだな」


レイドは短く頷き、視線を巡らせる。


「サグロスと合流しよう。何か見つけているかもしれない」


「はい……」


二人が歩き出した、その時だった。


――ガシャン!


乾いた破裂音が、静まり返った村に響いた。


「!」


レイドが即座に顔を上げる。


「行くぞ!」


「はっ、はい!」


二人は音のした方へ駆け出した。

朽ちた家屋の角を曲がった、その先で――


「レイド! ドラゴンだ! 生け捕りにしろ!」


通りを走りながら叫ぶサグロスの声が飛んできた。


「!」


レイドが反射的に銃を抜く。

その瞬間――


「ミーオ! ここにいたのか!」


「ぴゅっ!」


ロイの声に応えるように、小さな影が跳ねた。


「……は?」


「……何?」

サグロスとレイドの声が重なる。


ミーオはレイドの脇をすり抜け、そのままロイの胸元へ飛び込んだ。


「どこ行ってたんだよ! 心配したんだぞ!」


「ぴゅああああ!」


甲高い鳴き声を上げながら、ミーオはロイの腕の中で身をよじる。


「ん? 何持ってるんだ?」


ロイは、ミーオの前脚に握られているものに気づいた。


小さな――薬の瓶。


「薬……? なんで?……あっ、もしかして俺のために?」


「ぴゅお!」


「俺が寝ちゃったの、病気だと思ったのか?」


「ぴゅっ、ぴゅっ!」


「あー、ごめんごめん。心配かけちゃって。ありがとな」


ロイは苦笑し、ミーオの頭を軽く撫でた。


その様子を、二人は呆然と見ていた。


「……ミーオとは……人の子ではなかったのか?」


レイドが、ようやくそう口にする。


「あれ? ドラゴンって言ってなかったですっけ?」


「……」


レイドは言葉を失う。


次の瞬間――

サグロスがズカズカと歩み寄り、ロイの目の前で足を止めた。


「こんのアホ!!」


怒鳴った勢いのまま、ロイの頬をぐいっと引っ張る。


「ドラゴンなんて重要情報、ちゃんと言え!!」


「わーーー! ごめんなさい!」


「……まあ」


レイドは銃を下ろし、短く息を吐いた。


「見つかって良かったな」


「ひゃい……ありがとうございましゅ」


「ったく、無駄な心配だったぜ」


サグロスは手を離し、吐き捨てるように言った。

人間の赤子だと思い込んでいた――

自分たちの早とちりへの苛立ちが、声ににじんでいた。


「ごめんなさい……」


ロイは肩をすくめ、赤くなった頬をそっと摩った。


その時――

ふと、サグロスの胸に引っかかる感覚が走った。


(……ん? ドラゴン?)


サグロスの視線が、ミーオへと移る。


(……こいつ、誰から預かったと言っていた? それに、フレイヴ山脈……船……魔物……王都……)


点と点が、頭の中で静かに並び始める。


「おい」


サグロスは、ロイをまっすぐに見据えた。


「お前、軍属の者か?」


「え? 違いますけど……」


「じゃあ、質問を変える」


一拍。


「そのドラゴンの飼い主は――ミネア。ミネア・ティレニス中尉か?」


「え? ミネアを知ってるんですか?」


「たった十五歳で中尉なんて階級、持ってりゃ噂にもなる」


サグロスは鼻で笑う。


「それに、希少種のドラゴンを孵したって話もな」


「へっ、へー……」


口をついて出た生返事とは裏腹に、胸の奥がひやりと冷えた。


「確か中尉は、北から何かを王都に運んでいるって話があったが……」


サグロスの目が、細くなる。


「お前と関係があるのか?」


「えっ……そ、そんなことは……」


言葉が詰まり、視線が泳ぐ。


「……」


サグロスは一歩、踏み込んだ。


「お前は何だ?」


低く、問い詰める声。


「何を隠している?」


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