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アルスレア  作者: ゆきつき
第二章 運命の始まり

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ー2ー いつもの顔ぶれ

賑やかな話し声が扉の向こうから聞こえてきた。

ミネアがちらりと扉の方に目をやり、柔らかく微笑む。


「お友達がいらしたみたいですね。……この話の続きは後ほどにしましょう」


「え、あ、はい……」


ロイが返事をするより早く、ミネアは静かに立ち上がり、部屋を出ていった。

扉が閉まると同時に、別の誰かが勢いよく開け、明るい声が飛び込んできた。


「お兄ちゃん!」


ユームが駆け寄り、ベッドの脇に身をかがめた。

その目は涙でうるみ、声は震えている。


「よかったぁ……ずっと眠ったままだったから……もう、このまま目を開けないんじゃないかって……!」


「ユーム……ごめん、心配かけたな」


ロイが苦笑して言うと、ユームは首を横に振り、堪えきれずに抱きついた。

「謝らないでよ……!」


そんな兄妹のやり取りを見て、ビットは腕を組みながら茶化した。


「なんだよ〜、死人みたいに寝てたくせに、元気そうじゃねえか」


「あんたが『死人みたい』とか言うから余計怖がらせてたんじゃないの!」

アンが眉をひそめながら言うと、ビットは頭をかきながら笑った。


「いや、その……緊張ほぐそうと思ってさ」


レヴィが小さく息をつき、冷静に言う。

「ビット。冗談は言っていい時と悪い時があるぞ」


「……ごめん」


レヴィがわざと真面目な顔でうなずいた。

「よくできました」


「ガキ扱いすんな!」

思わず反論したビットの声に、部屋中が笑い声に包まれた。

その明るさに、ロイもつい吹き出す。


「ははっ、相変わらずだな」


ようやく部屋の空気がやわらいだ。

アンが椅子を運び、レヴィとビットもそれに倣って腰を下ろす。

ユームはベッドの端にちょこんと座り、皆で囲むようにして話が続いた。


――


ユームは少し落ち着きを取り戻し、ぽつりと話し始めた。


「……あの夜、本当に怖かったんだよ。血が止まらなくて……どうしたらいいか分からなかった」


その声に、レヴィが真剣な表情を見せる。

「肩の傷が思った以上に深くて、町まで運ぼうということになったんだが、外に魔物の影があって無理だった。

みんなで交代で見張って、夜が明けるのを待つしかなかった」


「村中がずっと緊張してたよ」

アンが小さくうなずく。

「泣き出す子どももいたし、焚き火の光だけが頼りで……夜明けがこんなに長いって思ったの、初めてだった」


ロイは言葉を失ったまま、肩にそっと手を当てた。

もう痛みはない。けれど、わずかに残る痕が、あの夜の記憶を呼び起こす。


――


「でもね」

ユームの表情が少し明るくなる。

「次の日の朝、軍の人たちが村に来てくれたの。

手当もしてくれたし、夜は警備もしてくれて、やっと安心できたんだ」


「軍の人……?」

ロイが顔を上げると、ユームは頷いた。


「うん。緑の髪の女の人がいてね。すごいんだよ、手をこうやってしたら――あたたかい風がふわってして、

みるみる血が止まっていったの。……まるで、奇跡みたいだった!」


ビットがすぐ食いついた。

「本当すごかったよな。あんなの初めて見たぜ。……レヴィ、お前も医学より治癒魔法でも学べば?」


レヴィが苦笑しながら言った。

「簡単に言うなよ。治癒魔法ってすごく難しいらしいんだ。医学の知識も魔力の制御も両方必要でさ。俺は医学だけで精一杯だよ。

しかも彼女、まだ俺たちと歳がそう変わらなさそうだったのに――もう中尉なんだろ? 天才って本当にいるんだな」


(……ミネア、か)


ロイはその名を口の中で繰り返した。

あの軍服の少女。――やはり、あの子のことだ。

自分を見つめ、何かを確信したような瞳を思い出す。


――


「そういえば……」

ロイがふと思い出したように口を開く。

「太古の武器に俺が選ばれただのなんだのって言われたけど、どういうことなんだ?」


四人は互いに目を合わせた。


ユームが口を開く。

「あのね、あの日お兄ちゃんたちがイレーネさんを助けに飛び出して行ったあと、何かが光ったの。

なんだか気になって、私も駆け出しちゃって……そこで見つけたのが、琥珀色の水晶だったの」


アンが続けた。

「本当、あの時は心臓が止まるかと思ったわ。

でも、あんたがユームを庇った瞬間、突然あたりが光に包まれたのよ」


レヴィが思い出すように言った。

「その後、剣みたいな……光で魔物を倒していたよな」


「……あれ、なんだったんだ?」

ロイが眉をひそめる。


ビットが腕を組んで言った。

「祭具の一部だったって、じいちゃんが軍の人に話してるのを聞いたぜ。

でもその祭具がいつからこの村にあったのか、記録が残ってないらしい」


「うーん……」

一同が思わず唸る。


レヴィが静かに口を開いた。

「まあ、素人の俺らがあれこれ考えても仕方ないさ。

ロイ、出血が多かったせいか顔色もまだ良くない。今は休んだ方がいい」


「そうだな」

ビットが立ち上がる。

「俺はお前が目を覚ましたこと、じいちゃんや村のみんなに伝えてくるよ」


「私は何か食べるものをもらってくるね」

アンが笑みを残して部屋を出る。


「ありがとう、みんな」

ロイがそう言うと、アンが振り返って笑った。


「ユーム、ロイのことお願いね」


「うん」

ユームは頷き、兄の手をそっと握った。

外では風が木々を揺らし、窓辺の光が柔らかく揺れた。

静かな温もりが、部屋に満ちていく。


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