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アルスレア  作者: ゆきつき
第二章 運命の始まり

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運命との邂逅

――世界は揺らめき、色が溶け合っていた。

赤や青、白や金が混ざり、どこからともなく光が滴る。ここがどこなのか、わからない。


ただ、何かが――戦っていた。

大地が裂け、空が泣く。炎のような光、砕けた刃、黒い波。

誰かの叫びが耳の奥で響く。それは祈りか、それとも絶望か――


ひとつの影が見えた。白く輝く何かを握りしめ、巨大な影に立ち向かっている。

その姿は滲み、見ようとするほど遠ざかる。


そして――巨大な影の奥に“目”があった。

形も、色も、距離さえも分からない。けれど確かに、それはロイを見ていた。


視線が交わった瞬間、心臓を掴まれるような痛みが走った。

冷たいのか、熱いのかも分からない。ただ、何かが――こちらを覗いていた。


これは夢なのか。記憶なのか。それとも――誰かの中に残された断片か。


 ◇


ロイは息を呑み、目を開けた。


……見慣れた天井ではない。

木の梁と石造りの壁。小さな窓から差し込む光が、白い布に淡く揺れている。

ここは――村の診療所か。


夢の内容は、指の間から零れ落ちるように薄れていった。

けれど胸の奥には、あの“目”の感覚だけが重く残っている。

見られていた――そんな確信だけが、現実のように息づいていた。


ロイは小さく息を吐き、ゆっくりと体を起こした。


「目が覚めましたか?」


不意に、柔らかな声が耳を打つ。


「!?」


ロイは反射的に声のした方に顔を向けた。

ベッドのそばには、淡い緑の髪の少女が座っていた。

軍服のような服を着ているが、年は自分とそう変わらないように見える。

陽の光を受けたその髪が、かすかに輝きを散らしていた。


「肩の痛みは、まだありますか?」


「……肩?」


ロイはぼんやりと呟く。

最初は何のことか分からなかったが、次第に記憶の断片が浮かび上がる。

祭りの夜。叫び声。魔物――そして。


「妹……と、村のみんなは!?」


ベッドがぎしっと軋む。

少女は穏やかに言葉を続けた。


「その様子なら問題なさそうですね。村の方々は軽傷の方が多く、今は元気にされています。あなたの傷が一番ひどかったですよ」


「……そうですか。よかった」


胸の奥で、何かがふっと緩んだ。

安堵とも、まだ抜けない恐怖ともつかない感情。

そのまま数秒、ロイは静かに息を整えた。


改めて少女に目を向ける。

整った顔立ち、凛とした瞳、どこか大人びた雰囲気。

けれどその表情の奥には、淡い翳りが差していた。


「えっと……あの、どちら様ですか?」


少女は一瞬まばたきをし、わずかに姿勢を正した。

その動きに、訓練された兵の気配がある。


「申し遅れました。私はミネア・ティレニス。王都直属の第二観測隊に所属しています」


「……観測隊?」


聞き慣れない言葉に、ロイは思わず首をかしげる。


「我々は王命により、“太古の武器”と呼ばれる存在を探すため、世界各地の調査を続けています。

二日前、北方海域を航行していた際、フレイヴ山脈の方角から“莫大な魔力反応”を感知しました。反応を追跡した結果、発生源はこの村であると判明しました」


ミネアの声は穏やかで、よく通る。

だがその瞳の奥には、揺るがぬ覚悟が宿っていた。


「ロイ・ウェールグ――」


彼女は静かに言葉を区切り、真っすぐ彼を見た。


「あなたは、“太古の武器――アルスレア――”に選ばれた者です。

どうか、我々と共に来ていただけませんか?」


「え……えっと……?」


ロイは思考を止めた。


まだ夢と現実の境目がぼんやりと霞む頭では、

“選ばれた”という言葉の意味を、まだ理解できなかった。



最後までお読みいただきありがとうございます!

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