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6-8.ドワーフと製法

 にゃーん。

 ドラゴンの二人を応接室にいるゲオル老の元へ連れてきた。

 頼むから問題起こさないでくれよ。

「げっ……ドワーフ……」

 入ってすぐ、トラキスが反応した。

 その声に反応したのかゲオル老がズンズンとドラゴンたちに近寄り、ガシッとトラキスの肩をつかみ声を荒げた。

「そなた!種族は!?属性はなんじゃ!?」

「げ、ゲオル老。落ち着いて……」

 対してトラキスはちょっと引いている感じ。

「えぇい!これが落ち着いていられるか!ミスリルの、本物のミスリルが作れるかもしれんのだぞ!」

「本物の……ミスリル?」

 ふーん。

 ゴルディがこそっと俺に耳打ちしてくる。

「予想が当たったな」

「そうだな。それにしてもあの反応を見るに、人間にはさっき言てた製法ってのは伝わってないのかな?シャルロッテさん、びっくりしてたし」

「どうだろうな。そもそもアレは邪神に対抗するために種族や神の力を結集した集大成だったからな。共通の敵がいなければすたれていてもおかしくはないな」

「そういうもんか」


「ゲオル老、少し落ち着いてください。本物のミスリルとはどういうことですか?」

 シャルロッテさんがゲオル老に詰めるように聞いた。

「そ、それはじゃな」

「以前、お断りされたミスリル武具の件と何か関係があるのですか?」

 そこからの話をざっくり整理すると、俺が初めてシャルロッテさんに出会った場所の近くには、ゲオル老の工房がある。

 あの日、彼女はゲオル老を訪ねていた。

 彼女は『ある目的』のためにミスリルの武具を大量に求めていた。

 ちなみに、ある目的の内容はわからなかった。

 けれど人の評価を見る限り、軍事に明るくない彼女がそういったものを求めるのはよほどの理由があったのだろう。

 大量に使うといえば軍とかこの世界なら、冒険者に配るとかだろう。

 そんな武具を求めて、彼女はゲオル老を訪ねたが、断られてしまった。

 理由を明かされぬままに。しかし、そのゲオル老が自分からシャルロッテさんを訪ねてきたのだ。

 ドラコンがここに飛来した途端に。

 理由は簡単だ。

 本物のミスリル。

 これが理由だ。

 今、ドワーフたちが扱えるミスリルは偽物。

 正確には鉱石自体は同じミスリル鉱石だが精錬方法を再現できないため、本来のミスリルではないそうだ。

 ミスリルは正しい精錬方法で精錬すれば、魔力伝導率にして驚異の9割を超える強力な武具を生み出すことができるらしい。

 今扱えるのは精々が6割程度。

 本物のミスリルで作ると雲泥の差ができるらしい。

 が、よく違いがわからん。

 というか、どうやって測ってるんだ?それ。

「そういうわけで、姫様の依頼を断っておったのは、作りたくてもつくれないからじゃ」

「そうだったのですね」

「儂はそもそも、気に入った仕事しかせんから、誰に使われるとも知らん武具を作るのは御免こうむるがな」

 おい。おっさん。それは黙っときなさいよ。

 ほら、ちょっと微妙な空気になってるじゃないか。

「最後に作ったのは確かもう20年以上前じゃったか。旅のエルフにせがまれての。しつこいんで追い返したら何日も何日も通い詰めてとうとう儂が根負けしたときだったわ」

 へぇ。そんなことが。

「しかし、ヴィゴーレたちにも、作成されていたのでは?」

「ん?ありゃあ、他の鉱物で作ったんじゃ。あの小僧、ミスリルみたいな強力な武具はいらんと言ってな。そんな大口を叩いたので、メテオライトでも持ってきたら考えてやるわ、と言ったら本当に採取してきおった。気に入ったので一本打ってやったわ。他の冒険者と違って希少な素材の価値を分かっておったからな」

 ヴィゴーレ。そんなことしてたのか。

 て、最後に打ったのはって、結局そのあと打ったんじゃ。

 あぁ、本物のミスリルを使って打ったのはって事か。

 にしても、エルフ。エルフねぇ。

 いや、まぁ。絶対そうだ、とは言えないんだが。

「なぁ、ゴルディ。この人にそのエルフの名前を……」

「ゲオル老、その剣を打ったというエルフの名前はご存じですか?」

 シャルロッテさんが代わりに聞いてくれた。

「ん?確か、アレは……。アスティベーラ、じゃったかな?たしか、ニヤァーベの里の者じゃったはずじゃ」

 やっぱりか。

 あのエルフ、そこらかしこに出てくるな。

「まぁ、この辺りでアレを打てるのは儂だけじゃからな」

「アレ?いったい何を打たれたのですか?」

「東方の『刀』という、斬ることに特化した片刃の剣じゃ。儂はこの辺り、西方の手法だけではなく東方、南方の製法を修めておるのは噂で聞いたことがあろう?」

「えぇ。皇都では一、二を争う鍛冶師だと、お伺いしております」

「あやつには刀を二本、打ってやっての。南方の精錬方法、東方の鍛冶技術、西方の魔道具技術の粋を集めて作ったのがその刀じゃ。しかし、それ以降は本物のミスリルの在庫が切れてしもうての。そこで、じゃ」

 ゲオル老がまっすぐトラキスの方を見て真剣な表情で言った。

 そこから先は、大体想像がつく。


「お主の力を借りて、本物のミスリルの生成に挑みたい」





 まぁ、要求だけっていうのはなかなか通らないわけで。

 結果としてゲオル老のミスリル生成交渉は前向きに保留。

 代わりに城の装備品の整備、新調を行ってもらい、交流を継続。

 ドラゴン二人があまり乗り気ではないので、交流は強制はしない。

 仲が良くなれば、手伝ってもらう感じで。

 ただ、どうもゴルディ曰くミスリルにドラゴンの火がいるというのは勘違いらしい。

 正確には知らないらしいが、必要なのは火力とドラゴンの鱗。

 なので、火属性の魔力の強いドラゴンであれば一体で事足りるらしい。

 トラキスとハグレオンは火属性のドラゴンなのでこの辺りの条件はクリアしている。

 鱗はドラゴンが生活する以上必ず出てくるものらしいので、仲良くなれば頼めば何とかなるんじゃないかな?

 ちなみに、ゲームやなんかでは高く売れる素材として有名な鱗だが、現在ではその加工法が途絶えているため、この世界ではそうでもないらしい。

 そしてこの加工法、城の図書館に加工法を記した書物……、というか書簡?メモ書きのような木の板があった。

 普通に販売されている類のものではないらしいので、今、加工法を利用できるのはドリス皇国のみ。ということになるらしい。

 ……ゴルディと話し合ってこれは封印しておくことにした。




 火種は少ない方がいい。

遅くなり申し訳ございません。

短いですがいったんここまで。

最後のゴルディとの会話は普通に書いていたのですが、普通に長くなってきたのでカットしました。

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