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5-8.魔王

「フハハハハ!さぁ!どうした!人の子よ!あまりの恐怖に言葉も出ぬか!フハハハハ!」

 高笑いが響く。

 ほんとに声でかいな、こいつ。

 てか、人の子って。

 俺ら、猫と骨と精霊なんだが。


(……なぁ、アレクシス)

「わかってる」

 高笑いしているノブナガに近づく。

「おい、おっさん。ちょっとうるさいから。近所迷惑だから」

 ノブナガが高笑いをやめてこちらを見る。

「んん?なんじゃ?この魔物は?まさか、お主が余を止める気か?フハハハハ!片腹痛いわ!」

 イラッ。









 チーン。








 そんなSEが流れてきそうな、そんな状態。

 突然現れたノブナガは今、地面と熱いベーゼを交わして……、もとい、ボコボコの状態で地面に臥せっている。

(静かになったな)

 うん。静かになった。

 ちょっとイラッとしたせいで余計に殴りかかってしまったが、大丈夫。許容範囲だろう。

 許容出来ない範囲になれば魔法を叩き込んでいた。

(で、どうするんだこいつ)

「そうだな。とりあえず、話しかけてみるか?」

 もう殴った後だけど。


「おーい。そこのノブナガとやら。大丈夫か?」

「うーん……。ランマルぅ。こりは、こりはいかんぞ……。尻が、尻がぁ……」

 うん。大丈夫そうだな。

 あと、だれがランマルだ。

 俺は猫だ。




「ふむ……。まさか、これほど強力な魔物がおるとは。儂の『先見の魔眼(時代)』をもってしても見抜けなんだわ」

 復活したノブナガがキリリとした顔でそういう。

 が、その姿は、俺が森魔法で作った蔦でグルグル巻きにして寝ころばせた状態だ。

 その魔眼、節穴じゃないかな?

 セリフのせいかそんなどうでもいいことを思ってしまった。

 なお、この蔦、土魔法で強化している。

 岩並みの強度により、ちょっとやそっとじゃ壊れない。

 ……と思う。

 にしてもなぁ。

「のう、すまんが、これをほどいてくれんか。お主らと、争う気はない。危害を加えぬことはここで誓おう」

 うーん?

「バロン、どう思う?」

(ふむ。わからぬが、もし東方の侍であれば、義理に熱く信条に従う国民性が強いという。信頼してもよいのではないか?)

 バロンがそう言うなら良いかな?

 なんか、クネクネしてて気持ち悪いし。

 大の男が、簀巻きの状態でクネクネするなよ。


「ふぅ。すまぬな。魔獣に骸骨に精霊よ。どーも、こういうじっとしているのは苦手でな。無駄に肩が凝った気がするわい」

 そういいながら、肩を回すノブナガ。

「あの、貴方ははいったい?」

 俺を抱えながら、ミリアさんがノブナガに問う。

 うん。確かに俺も気になった。

「ふむ。よかろう。聞いて慄け!」

 ノブナガはバサッとマントを翻すと、威風堂々といった感じで手を伸ばした。

「姓はオダ、名はノブナガ。尾張に産まれ、京に消えた悪逆の魔王!余の名はオダ・ノブナガである!!」

 なんだこいつ、急に元気になりやがった。

「はぁ」

(はぁ)

 ほら、バロンとミリアさんも若干呆れてるじゃないか。

 にしても、こいつ、ほんとなんなんだろう。

 こっそりと『鑑定の魔眼』を発動する。



[パーソナル]

 名前『ノブナガ・オダ』

 種族『エルダーファントムロード(ハルマー族)』

 種族ランク『A』『宝石級』『天災級』ほか

 冒険者ランク『C』

 職業『魔王』『大名』『侍』

 称号『第六天魔王』『天下布武の覇者』

 レベル『43』

 好物『魚』


[ステータス]

 体力『B』

 潜在魔力『S』

 筋力『A』

 防御『B』

 敏捷『C』

 魔力『S』

 知力『B』

 器用『A』

 対魔力『S』

 統率『S』

 運『C』


[状態]

『アンデッド化』

『霊体化』


[習得スキル]

『先見の魔眼(時代)』(レベル:A(自称))

『カムイ神国式剣術:封神一刀流』(レベル:A)

『古式剣術:カムイ神国』(レベル:A)

『抜刀剣術』(レベル:C)

『火魔法』(レベル:A)

『闇魔法』(レベル:A)

『支配』(レベル:A+)

『軍隊指揮』(レベル:A+)

『不死の身体』(レベル:A)

『戦略』(レベル:B+)

『戦術』(レベル:B)

『恐怖攻撃』(レベル:A)

『算術』(レベル:C)

『鑑定』(レベル:C)


 etc、etc……



 なんじゃこりゃ。

 他の奴らとは桁違いの強さだ。

 バロンやじぃやさんと比べても相当強いステータス、スキルもAが並んでいる。

 と、いうかAランクの魔物なんて俺以外で始めて見た。

 たしか、Dで銀級、Cで金級だっけ?

 あれ?じゃぁ、Bは何だっけ?

 そうだ、白金級だ。

 確かバロンがBランクの魔物だった。


 半分寝てたから定かじゃないけど、天災級は数か国で連合して事に当たるんだっけ。

 確か、その上に魔王と呼ばれるなぜか一段強くなってしまう天災級がいて、それは魔王級っていわれてるんだっけか。

 察するにそれがSランクなのかな。

 そういや、俺のヴォルケーノやヴォルガモアもAランクだっけ。



「にしても、霊体化した儂をこうもたやすく縛るとは。お主いったい何者じゃ?」

 おいおい。一人称変わっちゃってるよ。

 一人称は『余』じゃなかったのかよ。

「えっと……、私は植物の精霊ドリアードのミリア。こちらは『護国の神獣』アレクシス様と、『要塞の守護者』バロン様です」

「ふむ。そちらの女子以外は喋れぬのか。なんとも不便よな」

 髭を触りながらノブナガが呟く。

「んー。喋れないわけじゃないんだけどな」

(喋れないわけじゃないんだけどな)

 うん。正直勿体ない気がするけど、まぁ、いいか。

 俺は『人化』を意識する。




 ところでこの人化、先の戦いでもわかる通り、体を人の身体に作り替えるものだ。

 服までは生成しない。

 これは今までも言っている通りだ。


 そこで最初に考えたのが森魔法。

 例えば麻や蔦でロープを作って体に巻き付ける。

 が、これは正直痛い。

 まぁ、拘束されていないだけでロープでグルグル巻きにされてるのと変わらんからな。

 そりゃ痛いはずだ。

 そこで次に考えたのが『○○の衣』というタイプのスキル。

 だが、このスキル、どうも抽象的な言い方らしく、残念ながら直接、衣が出るようなことはなかった。

 そこで、考えたのが『補助魔法上昇』と『人体理解』、そして『高速再生』だ。


 ざっくりと、俺のイメージでは獣人といえば、体のどこかに獣の特徴を持つ。

 耳が最も象徴的なところだろう。

 猫の獣人なら猫耳、犬の獣人なら犬の耳という具合に。

 その他に、尻尾があったり、体の一部が毛で覆われていたり、と。列挙すればいくらでも出てくる。


 そこで俺が考えたのが、『毛』だ。

 もうお分かりだろうか。

 俺は『人体理解』でどうやって毛が生えるか理解し、『高速再生』で毛を爆発的に増やす。

 さらに、『補助魔法上昇』だ。

 正確に言えばこのスキル『補助魔法・上昇』という。

 つまり、上昇系の補助魔法を使う魔法系スキルということだ。

 これで、増やした毛に補助魔法をかけた。

 なので実は、防御力的にもばっちりだ。

 ……欠点としては、多少の羞恥心は薄くなくなるが、所詮は毛が伸びただけだ。

 裸なのは変わりない。

 それに気づいたときには少しシュンとなったが、それでも完全に隠れてないよりは大分ましだ。


(ん?アレクシス。少し雰囲気が変わったか?)

 バロンがそういう。

「ん?あぁ、ちょっと毛を伸ばしてみたからな。って、うお!?髪の毛まで伸びてる!?」

「まぁ。その髪型も素敵ですね」

 ミリアさんがほめてくれる。

 うん。悪い気はしない。


「いやいや、お主等何を勝手に盛り上がっておるのじゃ。おい、儂を無視するでない」

「ん?あぁ、すまん。で、結局お前はなんなんだよ。なんの目的でここに来たんだ?」

 そう訪ねると、ノブナガは腕組みをしつつ、答える。

「儂の目的か?よかろう。教えてやる。儂の目的は人類にとっての災厄と成ることよ。そのために、冥府から黄泉帰ったのじゃ。じゃが、ここには人類はおらなんだからな。なので、魔王は一時休業じゃ!」

 いや、ワケわからん。

 人類にとっての災厄って。

「つまり、あれか?敵ってことか?世界を滅ぼすぞー的な?」

 思わず、拳を握る。

「まてまて!早まるでない!儂は確かに災厄となることを目的としておるが、儂には儂の信条がある。今ここで、どうこうしようとは思わぬよ!」

 ふーん。

 しかし、なんせ織田信長の……、まぁ、似たような人のいうことだからな。

 何を言っても信じれない……、というのは勝手なイメージだろうな。

「……ところでじゃ。お主、儂を雇う気はないか?」

 雇う?え、信長を?

「なんせ、今儂、霊体じゃから。腹は減らんが、黄泉帰りがどうも不完全だったようでの。魔力の供給がないと消えてしまいそうなんじゃ」

 むしろ、そのまま消えろよ。

 この世界の人たちのために。

「のぅ。ええじゃろ?ええじゃろ?儂、自分でいうのもなんじゃが、これでも結構、優秀じゃよ」

 ノブナガが俺に頬ずりして媚びてくる。

 えぇい!寄るな気持ち悪い。

 まぁ、良いか。

「じゃぁ、俺の指示に従うこと。それと人間もいっぱいいるけど、勝手に人間とかに喧嘩売らないこと。それに従えるなら良いぞ」

「うむ。その条件でよい。儂からこの約定を違えることはないと誓おう」

「よし、じゃぁ。いいぞ。ところで魔力の供給ってどうすればいいんだ?」

「それは任せておけ」

 俺に向けてノブナガが手を伸ばす。

 ぼーっと掌が光ると、何か魔力的な繋がりができたように感じる。

「いや、なんじゃこれ。こんな魔力。引くわぁ……」










 これが、史上初めて魔王が、魔王を従えた瞬間。

 後に『史上最強の魔王の戦華』と呼ばれる、歴史的事件の起点となる瞬間であった。

アレクシス、ノブナガは「まだ」魔王ではありません。

この世界ではAランクの魔物の中で一部が魔王級として制定されます。

Sランクはまだ設定さえされていません。

以前、アレクシスはAランクが魔王級か?と発言していますが、これはあくまでアレクシスの推測です。


魔物ランク・魔獣ランク参考(実際)

Hランク(猟種)…一般人でも狩が行える。

Gランク(特殊)…欠番

Fランク(青銅級・一般級)…狩人・冒険者が狩を行う。

Eランク(銅級・兵士級)…戦闘になれた冒険者が戦闘する。

Dランク(銀級・隊長級)…群れのリーダー格。

Cランク(金級・戦争級)…ダンジョンのボスクラス。冒険者数グループで討伐する。

Bランク(白金級・災害級)…通常の冒険者では百人単位での召集が必要。

Aランク(宝石級・天災級)…国家での対応が必要。確認された段階で世界中のギルドに通達が行き、国家間で対応が行われる。

Sランク(晶石級・魔王級)…未制定。

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