5-7.オダ
「それで、悪いご報告なのですが」
ん?あぁ、そうだった。
良い報告と悪い報告があるって言ってたっけ。
とりあえず、胡椒の件は後回しだな。
「実はこの畑の作成中に二つの奇妙なものが出土しました」
出土?畑の作成中ってことはそんなに深くは埋まってなかったんだろう。
ミリアさんが差し出してきたものは、風呂敷で包まれた……。
いや、包みきれてないわ。
明らかにはみ出している。
「見た目からおそらく、東方で使われている『刀』の類かと思うのですが……」
うん。俺の目にもそう見える。
どう見ても俺の考える、日本刀そのものだ。
ミリアさんが風呂敷を広げると、そこには日本刀と、なんだこれ?ブローチ?
いや、腕輪か?
なんというか。ちょっと幼児向けロボットアニメや特撮に出てきそうな外見。
輪の部分は黄みの強いオレンジ、真ん中にひし形の宝石のようなものが埋め込まれている。
ミリアさんは日本刀を鞘から少しだけ抜いて、俺に見せてくる。
「ここに読めない字が彫られていて……」
ふむ。どれどれ?
日本刀の刀身に彫られた字を見てみると、『マサヒデ』と読めた。
うーん。これだけじゃなんとも……。
「なぁ、バロン。これお前のところの土地にあったみたいだけど何か知らない?」
(全く覚えがないな。だが、そう言えば、八年位前に侍がエフィーリアを訪れたことがあったな)
「侍?」
(あぁ、何でも主人の名とかで……名は確かカツナリ・ヤマシナとか言ったか)
「へぇ。侍ねぇ」
侍と聞くとどうも、あいつを思い出すな。
エルフ侍のアスティベーラ。
そう言えば交信も最近来ないけどあれって条件とかあるのか?
(失礼なエルフでな。エフィーリアに色目を使って来たから、そこそこでお帰り願ったが)
ん?
(なんせエフィーリアはあの容姿で、普段は薄着だからな。彼を招いたときは少し危ない格好でな。胸をガン見しながら鼻血を垂らしていたからな)
んん?
なんかアスティベーラと被るな。
もしかしてあいつ、ここに来たのか?
(おお、そうだ。確か奴が落としていった訳のわからんペンダントもあったぞ)
そういって、バロンが近くにあった作業台からドッグタグのような物を取り出す。
そこには、おそらく刀に彫られた文字と同じ言語であろう文字で、『オダ家家臣、伊賀奉行目付兼侍大将アスティベーラ』と彫られていた。
スキルのお陰で俺は読めるが、この地方とは違う文字なのだろう。
ってちょっと待て!
オダ!?
オダってもしかして、あの織田!?
なに、あいつ。織田の家臣だったの!?
って待てよ?
織田で政秀って言ったら……。
もしかして、平手政秀?
若い信長の奇行を諫める為に自害したっていう、あの?
流石に、織田信長は俺たちの世界では大量にモチーフにしたキャラクターが作成された英雄だ。
ちょっと漫画の棚を見れば、いくらでも話が出てくるので、俺でも少しくらいは知っている。
いや、というか、織田ってこっちでもいるんだ。
いや待て、焦るな。
よく考えなくても、名前が同じだけで別人だ。
(どうした?アレクシス)
バロンに声をかけられて、ちょっと長く思考していたことに気づいた。
「いや、ちょっと予想外の名前が出てきたもんで」
(む?お前、これが読めるのか?)
「あぁ、『オダ家家臣、伊賀奉行目付兼侍大将アスティベーラ』って書いてるみたいだ」
(オダ?あぁ。確か皇家が貿易していた、東方のカムイ神国にそんな名前の領主がいたな。しかし、なぜ、そんなものがここに?)
「ん~。わからんけど、こりゃアスティベーラが持ってきたもので間違いなさそうだ。なんか、そっちの刀も織田家由来の物みたいだしな」
(ほぉ。あのエルフ、人の敷地に何を落としていったのやら)
ごもっともで。
「まぁ、その辺は今度聞いておくよ。いつになるかわからんけど、俺、あいつと話しできるし」
(ふむ。じゃぁ、俺の代わりに殴って……いや、魔法を叩きこんでおいてくれ)
いや、殴るのはどうだろう……。
交信ができるだけで、直接会えるわけじゃないし。
とまぁ、あのエルフ侍の置き土産に驚いていて、気づかなかったが、そういえば森がやたら静かだな?
「なぁ、そういえばエフィーリアさん達は?」
(あぁ、エフィーリアは城に魔法指導に行ってるぞ。ローゼシュバインとアントニオはハニービーのところだな)
「また巣作りの手伝い?」
(また、巣作りだ)
ちなみに、アントニオというのはあの蟻だ。
種族はインフェルノアントというらしい。
真っ赤な体に似合う種族名だな。
流石に個体名がないと可哀そうだと思って俺がつけてやった。
ちなみに、女王蜂の方にはエリザベスとつけてやった。
ハニービーというのは種族名だ。
本当はその上位種のミルクカウビー、更にその上位種のクレセントビーという種族らしい。
しかし、女王にはふさわしい名前だろう。
働き蜂の方にもつけようとしたが、なんせ、15センチ、中くらいのサイズだけでも45匹、小さいサイズになると500匹はくだらない数がいるらしく、さすがに無理だった。
(気にせずとも良い。妾達はそも名前を持たぬからな。さりとて、この名前は気に入ったのじゃ。妾は今後、エリザベスと名乗らせてもらうのじゃ)
蜂に気を使われた。
ちなみに、この15センチくらいのサイズの蜂は兵隊蜂。特別な雄だけが成れる蜂らしい。
小さい方は働き蜂で雌雄は関係ないが、基本的には蜜を集める蜂らしい。
なお、女王以外に特別な雌が成る蜂もいるらしいが、これは巣の規模が1000匹を超え始めてから出現するらしい。
どちらもクレセントビー特有の蜂なのだそうだ。
へぇ。
「あの、すみません。お二人とも、いきなり見つめ合って鳴き合ってどうされたんですか?」
ってミリアさんのこと忘れてたわ。
バロン、ほんとにミリアさんにもテレパシー使ってないんだな。
別に見つめ合って鳴き合っていたわけじゃないけど、俺はニャーニャー、バロンはカラカラとしか聞こえないわけだから、そりゃそうなるか。
まぁ、人になって否定するほどのことでもないか。
バロンが、身振り手振りで伝えているが……。流石に固有名詞は無理だろ。努力は認めるけど。
「ところで……その、先ほどから言おうかどうか、迷っていたのですが……」
ん?どうしたんだろう。
「その刀、なにか光ってませんか?」
え?
そういわれたので見てみると、光ってる。確かに光っている。
ビカビカ!とか、キラキラ!とか、極彩色!みたいな、派手な光り方ではなく、じみぃぃぃぃに、薄っっっっすら光ってる程度だが、確かに光っていた。
『分析』スキルを使ってみたが、なんか魔力が足りないみたいだな。
興味本位で魔力を流してみた。
はてさて、何が起こるのかな。
光った。
めっちゃ光った。
それはもう目が開けられないくらい。
アニメで有名なセリフを思わず言ってみたくなる。
(目が!目がぁぁぁぁぁぁ!)
ってバロン、お前が言うのかよ!
お前、目ないじゃん!
光が落ち着くと、そこに1人のおっさんが立っていた。
黒を基調とし、赤と紫、それに金色を配色されたド派手な鎧と襟の立ったマント。
ちょんまげ……、とは違うな。講武所風っていうんだっけ、そんな感じの髪型。
それに、腰に下げた刀が2振り。
整えられた顎鬚に、口ひげ。
うん。まぁ、総合してド派手なおっさんがそこに腕組みをして立っていた。
そして、そのおっさんは、カッと目を見開くと馬鹿みたいにでかい声でこう言った。
「秘術の行使ご苦労!余が、第六天魔王!ノブナガ・オダである!!」
そして、手を広げて続けた。
「さぁ!人の子よ!挑み、絶望せよ!余こそが世界の災厄、悪霊である!」
書き溜め分はここまで
オダ氏は前にちらっと女神視点で出てきた『テンプレート』の一人です。




