5-5.だらけたい猫の一日
温かい日差しが、俺の体を温める。
そのせいか、眠い。
すべてこの陽気が悪いのだ。
あと、馬の背中は暖かい。
あの戦いから1週間が経過した。
戦いに参加したものは大半は次の日に支障がなかったのだが、ヴィゴーレとマリアゲルテさん、それに公爵の子供トリオのロウフィス、アマンダ、ヘンリーには支障があったようだ。
まず、ヴィゴーレは魔力の込めすぎによる、自爆の影響。
皮膚はリリアーノさんによる回復魔法でみるみる(気持ち悪いくらいに)回復したが、意識は3日位戻らなかった。
フィリオとロティさん曰く、普段ならこんな無茶はしないとのこと。
自爆しないよう、力を抑えて放つ技だそうだ。
つまり、全力全開の状態で放ってしまって、暴発したような状態らしい。
リヴィアーデさんのときと似ているが、あちらは魔力の使いすぎ。なので魔力が回復した時点で意識が回復した。
だが、ヴィゴーレは怪我の影響で未だに魔力が身体から流れ出ている状態だ。
身体が治っても、魔力の流れを制御する為の器官の様なものの修復には時間がかかるらしい。
それまで、冒険者稼業はお預けだそうだ。
ヴィゴーレならそれでも、動きそうな気もするが、ロティさんがヴィゴーレの腕を撫でながら、それはさせないと豪語した。
「折角、夜以外も人目を憚らずいれるのよ?」
「なるほど、ガラハドも一度沈めてみようかな」
とはロティさんとシノンさんの会話。
女って恐ろしいなぁ……。
公爵の子供3人衆ことロウフィス、アマンダさん、ヘンリーは自分達の力不足を実感したようだ。
まぁ、彼らは俺の召喚(?)した猫たちにいいように弄ばれてたしな。
仕方ないだろう。
3人はどうやら修行と称して、俺の召喚した猫達と模擬戦を繰り返しているようだ。
そう、あの30匹の猫達、実はまだ召喚されたままだ。
と、いうか還し方がわからん。
一応返したいと願ってはみたんだが、ぜんぜんダメだった。
俺も猫たちも揃って頭をかしげるような事態となってしまった。
「きゃー!!アレクシス達が!なんかすごくかわいいことしてる!!」
がっつりシャルロッテさんに見られていた。
しかし、この娘は完全にキャラ崩壊している気がする。
いや、最初からこんな娘だったっけ。
うん。
そんな気がする。
で、猫達がまだこちらにいるということは、盛り上がる人間がまだいるわけで。
「やだ!この子は、もううちの子なんだから!」
とはマリアゲルテさんの言だ。
まぁ、そうなるよな。予想はできていた。
若干、フォレストキャット達にマリアゲルテさん達を取られたような気分になるが、彼女も夜になれば毎日とはいかずとも、シャルロッテさんと一緒に俺の部屋に来る。
ちょっとした優越感。
って猫に対して優越感感じてどうする!俺!しっかりしろ!
「くぅ~ん」
お?なんだ?
ってスノウウルフの2匹か。
たしか、じぃやさんから名前をもらってたっけ。
なんだったか。
そうだ、ロレンツォとシャルマーノだ。
由来は過去の偉人からだそうだ。
立派な名前もらいやがって。
ちなみに、雄がロレンツォで雌がシャルマーノ。
あと、様子からシャルマーノのお腹には子供がいてもう少しで産まれると見込まれているみたいだ。
にしてもこいつらどうしたんだ?
「くぅ~ん」
よく見れば、ロレンツォの背中に1匹フォレストキャットが乗っていた。
と、いうか寝てた。
えぇ……。
あ、もしかしてロレンツォはこいつを引き取ってほしかったのか?
まぁ、奥さんもうすぐ出産だしな。
あまり、こいつにかまっていられないか。
俺はヴォルケーノに姿を変えると、寝ているフォレストキャットの首元を噛み、そっと地面に降ろす。
不機嫌そうにフォレストキャットが俺を見上げてそっぽを向く。その後、ロレンツォを見上げる。
乗れないから屈め、と言っているようだ。
ロレンツォが助けを求めるようにこちらを見た。
……どうしたらいいんだろう。これ。
「おい、そこの猫。そいつは今奥さんが大事な時期なんだから、あまり無茶ばかり言うなよ?」
フォレストキャットがこちらをジト目で見てくる。
抗議しているようだが。
「しかたないだろ?子供が産まれたら、ちょっと遊んでもらえるように交渉するからさ」
フォレストキャットは渋々といった感じで、とぼとぼと去って行った。
どうやらわかってくれたようだ。
「ワンワン!」
ロレンツォも解放されて喜んでるようだな。
って、えぇ。2匹とも走って行っちまった。
まぁ、奥さんが心配だろうしな。うん。
妻帯持ちの悩みは俺にはわからんさ。
ともかく、30匹の猫たちはいくつかの家に引き取られていった。
皇城には4匹。
エフィーリアさんとバロンの家に1匹。
バルクスに1匹。
ガラハドのパーティーに1匹。
グレイの彼女の家に1匹。
リヴィアーデさんが自分の里に3匹連れて帰った。
残りの19匹は皇都に散った。
念のため、皇都の外には出ないようには命令しているが、餌を求めるときはその限りではない、とは言っている。
先ほどのフォレストキャットは皇城に引き取られた猫の内の1匹だ。
後の3匹は公爵の子供トリオと訓練していた3匹だ。
なお、グレイの彼女というのはあのギルドで教官?教師?をしていた女性だ。
あの戦いの後、グレイが彼女を食事に誘ったらしい。
グレイは実はあのなりで貴族の縁戚らしく(準貴族の息子らしい)彼女も貴族らしい。
驚くべきことに彼は貴族の……伯爵家に養子入りする予定らしい。
本人も聞いてないって驚いていたが。
で、彼女は婚約者……、というかこの間、婚約者になったという関係らしい。
一瞬、「あぁ?リア充かよ」と思ってしまったが、よく考えたらこいつ、転生して16年たってるんだよな。
なんか納得。
あれからというもの、グレイはちょっと情緒不安定だ。
「ははは。彼女ですか?気立てがよくて美人で……。ふふふ。ほんと、僕にはもったいない……、そうですよね。なんで貴族に養子入りなんて……、いやほんとお世話になってはいましたけど。いや、ほんとなんでこんなことに……。え?これですか?実は彼女からのプレゼントで。生還祈願のお守りらしくて。ほんとこういうところに気が利いていい子で」
っと、いった具合に、聞いてもいないことをべらべらと話してくれる。
惚気と自己嫌悪を繰り返し、見ていて楽しいが、少し気の毒にならなくはない。
まぁ、中身は現代の高校生って話だしな。
って思ったけど、ここで16年過ごしたなら精神年齢は30越か。
まぁ、子供からやり直しだろうし、精神年齢で言っても、俺より年下だったな。
よし、しばらく静観しておこう。
人の恋路を邪魔して馬……、じゃなかったウーマにでも蹴られたら洒落にもならない。
そうそう、俺が今乗っている馬。
これ、実はアイランドホースという魔物で、なんと魔法が使える。
属性は土属性っぽい。
といっても、主に前足で地面を掘るときに使っているようだ。
その中にボロを出す。習性か何かなのか、アイランドホースは必ずそうやって排泄を行う。
賢い種族のようだ。
そんな感じで賢いので、皇都では主に馬車の引馬として使われている。
まぁ、つまり、シャルロッテさんが乗っている馬車の馬のようだ。
ちなみに俺が初めて乗った馬車を引いていた馬が、今俺の下にいる馬。
俺が近づくと、屈んでくれて非常に乗りやすいので、最近の昼寝のお気に入りの場所だ。
乗って寝てるだけで程よく景色が変わって飽きないし、動物的な感覚なのか、寒くなく、暑くなく。適度な気温の場所を選んでくれる。
結論、非常に心地いい。
あと、ウーマ。
こいつに関しては実はよくわからないけど、どうやらこの世界の家畜なようだ。
俺からしたら、首の長い牛なんだが。
こいつも魔物らしく、魔法が使える。
属性は水。
利用方法に関しては乳、肉、革、角と多種多様だ。
習性としては食べたエサの周りに少量の水を魔法で出す、という変な習性をもつ。
まぁ、あれだ。
多分、これは草や葉を食べる代わりに、水を出しているのだろう。
野生種は高地や砂漠のふちに住んでいるらしい。
そう聞くと、なるほどなと思わなくはない。
つまり、自分のえさを自分の力で育てているということだろうか。
やはり、賢い生き物なのだろう。
まぁ、そんな感じで色々聞きながら過ごした1週間だった。
勉強になったし、それはそれで面白かったんだが、ふとこの国は3公爵と戦争中だっということを思い出した。
討伐軍を出すにしても、攻め込んでくるにしても、なんかのんびりしすぎじゃないか?
素人目線だけど、こういうのはスピード重視だと思うんだが。
いや、もうなんなんだろうな、こののんびりした感じ。
俺が現代人だからかもしれないが。
「アレクシス様。何をなされているのですか?」
ん?ミリアさんか。どうしたんだろう。
「少し例の件で進展がありましたので、ご報告に参りました」
例の件?
あ、収穫量の件か。
「悪い報告と、良い報告。どちらからお聞きになられますか?」
えー。それ、やっぱり長くなる感じですか?




