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5-4.vs大陸西部最強の冒険者

「ちっ。まったく、なんだこれ」


 ヴィゴーレは草木をかき分けながら、若干移動していた。

 これは、「テリトリー」による空気の流れで確認できた。

 さっき他との戦闘が終了して気づいたのだが、どうやら「招魔」の感覚の同調はこちらの意思でどうとでもできるようだ。

 あと、「テリトリー」の影響かどうかわからないけど、視覚・聴覚の強化もされているっぽい。

 よく見えるし聞こえるなぁ。

 が、森が続く範囲のみ強化されていることを考えると、やはり「テリトリー」の影響なのだろう。

 なんか、スキルがことごとくチート急な気がする。

 ま、EX+だしな。

 きっとこの世界ではスキルの許容範囲内なのだろう。

 そういうことにしておこう。






 さて、肝心のヴィゴーレなのだが……。

 どうも、こっちの位置がわかってるっぽい動きをしている。

 この視界の中で?

 ちょっと試してみるか。


 俺は「水魔法」を発動した。

 俺の考えた方法は簡単だ。

 ヴィゴーレがこっちの位置を本当に把握しているのかどうか。

 それを確かめるために今回は攻撃ではなく、別の方法を試してみる。


 霧だ。

 森により、視界が遮られている中で、更に霧による視覚の遮断を行う。

 ついでに、俺の位置をヴィゴーレから見て右手の位置になるよう変えておく。

「バロン。悪いけど場所を変えるぞ。背中に乗れ」

(お、おう。しかし、俺を連れて行ってどうするんだ?)

「困ったときの意思疎通手段」

(え、いやだから、俺、お前以外にはテレパシー使ってないと……)

「だから困ったときの手段だって」

(お、おう……)

 さぁ。どうなるだろうか。






 ……やっぱりこれ、わかってるな。

 進路変えてきやがった。

 どうやって、こちらを探知してるのかな。

 有用そうなら今度教えてもらいたいけど、教えてくれるか?

 まぁ、聞くだけ聞いてみるか。


 霧も森も効果ないな。

 こうなってしまったら戦いの邪魔になるかもしれない。

 少し考えて、俺の手前に広場を作ることにする。

 戦いの邪魔にならないように、前方に15m程度の円形の空間を作る。

 ま、こんなもんか。「森魔法」様様だ。

 円形空間にヴィゴーレが立ち入るまで、あと30歩ってところかな。



 ヴィゴーレが出てきた。

「全く、面倒なことを」

「悪いな。お前以外はもう戦闘不能だ」

「?」

 にゃー。にゃー。

 しまった。そうだ、猫だった。

 ちょっと格好つけたのに、台無しだ。

 ちょっと恥ずかしい。

 ここは、1日3分……いや、今は5分だった。ともかく数分しかなれない、人化を使うべきだな。


 俺は少し意識し、人化する。

 服はないので、近くの葉っぱから蔦と大きめの葉っぱを選んで腰に据え付ける。

 ……これ、この場面だけ見たらすごい間抜けじゃないかな?

 仕方ないだろ?裸で戦うわけにもいかないし、人化するなんて思ってなかったんだから。

 幸い、「森魔法」で木々をどけた場所は、俺の前方から15mなので、俺は円の端にいる。

 まだ、回りに植物があるのでセーフだろう。

 あ、ついでにちょうどいい木の枝を入手しておく。


 さて、改めて。

「悪いな。お前以外はもう戦闘不能だ」

「なんだか、格好つかないな」

 苦笑いしながらも、鋭い眼光でヴィゴーレが俺にそう言う。

「そう言うなって。仕方ないだろ。こっちの姿で戦う気は無かったんだから」

「まあ、いいか。で?得物はそれでいいのか?」

「後はスキルで何とかするさ」

「そうか」


 ヴィゴーレから今までに感じたことのないような闘気というか、殺気が放たれる。

 スーパーな戦闘民族かよ。

 全く。


「行くぞ!!」

 ヴィゴーレが大剣を構えて急加速する。

 早いけど避けられない速度ではない。

 横っ飛びで回避すると、俺のいた位置を袈裟懸けに切りつける。

 切りつけた先にはそれなりに太い木があったが、見事に両断してしまった。

「ぅらぁぁ!」

 振り抜いた大剣を強引に引き戻して、今度は横薙ぎに俺を狙ってくる。

 これも冷静に屈んで交わし、今度は大剣を狙って木の枝を振り上げる。

 大剣は上に弾かれ、体勢を崩し無防備な胴体があらわれた。

 そこに向かって、木の枝をふる。

 もらった!

 そう思ったが、ヴィゴーレは浮いた足を地面に強く叩きつける。

「ふん!」

 すると、砂埃が舞い上がり、俺の視界を遮る。

 構わない。そのまま、直線的に振り抜く。

 しかし、それにヴィゴーレが合わせてきた。

 こちらの木の枝に合わせて肘を上段から振り下ろし、木の枝を破壊してしまった。

 なんてやつだよ。


「凄いな。さすが冒険者だ」

「ふん。世辞はいい。それよりも、得物はどうする気だ」

 まだ、戦う気満々らしい。

 そうだよな武器はどうしよう。

 あ、魔法で作れないかな?

 俺は「土魔法」を意識する。

 すると、中程で折れた木の枝から岩が出来た。もとい、生えてきた。

 気持ち悪っ!?

 だけど頑強さはさっきの比じゃないだろう。

 なんだろう、この万能感。

 ゲームで言うところの木製ツールから石製ツールにランクアップした安心感。

「そんなことまでできるのかよ」

「いや、俺も正直こんなことできるとは思ってなかった」

 率直な意見だ。

 しかし、魔法ってなんだか簡単に万能なことができるもんなんだな。


 ふと、ヴィゴーレが大剣の刃先を後ろにし、半身の姿勢で屈み込む構えをとる。

 これは、見たことがあった。

 剣道で言うところの、脇構え。または陽の構え、金の構えと言われる構え方によく似ていた。

 高校時代、友人が剣道をしていて、その時に練習していた五行の構えの一つだ。

 で、肝心の効果は?

 知らない。

 まぁ、精々間合いが読みにくいだろうな、程度のこと。

 そもそも、剣道のような刀から出来た型ではなく、大剣を使っているから、効果も違うかもしれないし。

 教師がアニメ好きで、よく剣道部はアニメを見ながら座学をしてたっけ。

 ここキャラの構えは~とか、よくいってた気がする。

 え、なんでお前が知ってるのかって?

 友人に誘われて繰り返し見せられたからな。

 今考えるとすごいシュールな図な気がするぞ。

 アニメ見ながらアニメのキャラの技(正確には構えだが)の真似をする高校生って。

 それだけ、馬鹿なことも出来た年齢ってことだろうが。


「ぅらぁぁぁぁぁ!」

 ヴィゴーレが、大剣を下げたままこちらに突っ込んできた。

 今のこの武器なら押さえられるかもしれないので受けることにする。

 ヴィゴーレが大剣を振り下ろし、大剣がちょうど天頂辺りに来た頃、それが変化した。

大蛇三爪(だいじゃさんそう)断頭斬(だんとうざん)!!」

 剣先が三つに見えた。

 いや、本当に見えるだけか?

 本当に残像なのか?

 俺のステータスで?

 嫌な予感がして横に飛び退いた。

 俺の居た位置を2本の線が通った。

 剣の斬撃で地面が抉れた。

 1m程地面をえぐっている。

 が、それだけ大きく抉れれば武器は地面に刺さってるだろ。

 俺は反撃するべく体勢を整え……

土竜二爪(どりゅうにそう)昇覇斬(しょうはざん)!!」

 ヴィゴーレが抉れて刺さった地面ごと剣を持ち上げる。

 2本の剣筋は地面から衝撃として立ち昇る。

 衝撃で地面が吹っ飛んでる。

 そんなの当たったら死んでしまう。

 思わず手に持った木の枝でガードした。

 ドカンと、手に衝撃が走り、手がしびれた。


「いってぇな!ほんと!」

「そうは言っても、受けきっているじゃないか」

「まぁ、これくらいはな。しかしなんだそれ?スキル?」

「ん?まぁ、技だな。俺は魔力を放出するタイプの魔法はどうも苦手でな。こうやって魔力の制御をして剣戟に叩き込むことしかできん」

「へー、それであんな複数の斬撃になるのか」

「いや、あれは単に技術だ」

 いや、そっちの方がすごいわ!

 まだ、魔法でやってるって言われた方が説得力あるわ!

「なかなか便利なんだかどうも斬撃を増やすと威力が削がれてな。使いどころは考えなくてはならん」

 あーなるほど。って、それであの威力かよ!?

 こいつ、俺よりよっぽど化け物なんじゃ……。


「次の技は威力のみを追求した一撃だ。防御しなければ……死ぬぞ」

 え、ちょ、おま。

極龍一爪(きょくりゅういっそう)走破刃(そうはじん)!」

 なんの事はない、横凪の一閃。

 但し、込められた魔力は膨大だ。

 俺の使う魔法ほどではないにせよ、斬撃と魔力を組み合わせた一撃は、俺へと迫る。

 驚くべきはその広さと鋭さ。

 日本で言うと、バスほどの高さを持った斬撃は折角作った開けた場所をはみ出し、剣筋と同じ軌道を描き、俺へと迫ってくる。

 どうする?

 正面から叩き潰すか?

 えぇい!ままよ!!

 俺は覚悟を決めた。

 石で出来た剣を上段から叩き込む!!



 先ほどの技とは比べ物にならない力に腕が痺れる。

 だぁぁぁぁぁぁぁ!

 こんな慢心のした結果の戦いで死んでたまるかぁぁぁぁぁ!

 思いっきり叩きつけた俺の石の剣と、ヴィゴーレが放った斬撃が交錯する。

 魔力を帯びた斬撃と純粋な力の力比べ。

「くぉぉおなくそぉぉぉぉぉ!」

 ドンッと大きな音と共に、土煙が舞い上がる。


「ぅおっしゃあぁぁぁぁぁ!どうだぁぁぁぁ!」

「……驚いたな。まさか、これを凌ぎきれるとは」

「凌ぎきってねぇわ!めっちゃ腕痛いわ!本気でやり過ぎなんだよ!」

「……ははは。それだけの元気があればたいしたもんだな」


 ドシンとヴィゴーレが手に持った大剣を手放し、大きな音がした。

「……降参だ。やっぱり化け物だな。お前」

 よくよく見ると、ヴィゴーレの腕からは湯気のようなものが上がっていた。

「お、おい。大丈夫か?」

「気にするな。後先考えずに撃っちまったからな」

 よくよく見ると鎧の隙間から火傷のようになった皮膚が見えた。

「って絶対大丈夫じゃないだろ、それ!」

「問題ない。……が、ちょっと寝かせろ。あと、メイドを呼んでもらえると助かる」

「わかったよ。伝えて置く。」

「頼んだ」


 そこまで言うと、ヴィゴーレは仰向きに倒れ、そのまま眠ってしまった。

「バロン、すまないけど、じぃやさんとメイドたちを呼んできてもらえるか?俺、もうちょっとで猫になっちゃうから。ヴィゴーレを看護してもらってくれ」

(わかった)



 こうして、俺と冒険者たちの手合わせは終了したのだった。

 暫くはゆっくりしたいなぁ。

自爆技ではないのに力を籠めすぎて自爆してしまう大陸西部最強の男。

技名は閃いたときに戦っていた相手から命名。という設定。

もぐらではない。

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