4-9.神獣と勇士の伝え
お久しぶりです。
いくつかストックができたので再開。
まだまだ忙しい日々が続いています。
具体的には夜に各時間がなく、昼休みの30分くらいでなんとか書き続けている感じ。
「そこの変質者!大人しく投降しなさい!」
そこの変質者!そこの変質者…そこの変質者……
頭に先ほどの言葉がリフレインする。カテーナさんに面と向かって変質者って言われた……ちょっと、いや、かなりショックだ……
いや、わかるよ。さっきまであの女神が時間を止めてたんだ。
って事は彼女たちからすると、全裸の男が現れたわけだ。
まぁ、そりゃ変質者扱いもされるか……
って納得できるか!?
出てきやがれ!!くそ女神!!
この状況を説明してやってくれ!!
「捕らえろ!」
ほら!来た来た!
くそ、何とかしないと……
とりあえず、弁明を……
「ちょ、ちょっとまっ……」
「待ちなさい!」
シャルロッテさんが声を上げて、兵士を静止してくれた。
「この者に危険はありません。それよりもカテーナ、何か羽織るものを」
「し、しかし姫様……」
「構いません。この者は……、アレクシスなのですから」
って、うおぉぉぉぉい!
めっちゃばれてますやん。
……てそうか、シャルロッテさんは俺のこの姿を見たことがあったけ。
そういえば、あの時もすぐばれたっけ。
なんでわかるんだろうな?
「と、とにかく、お部屋にご用意いたします」
カテーナさんが走って行ってしまった。
「では、私が部屋まで付き添いま……」
「ちょっと待て」
野太い声が背後から聞こえた。
そこにいたのは……
ヴィゴーレだ。
後ろにはパーティーメンバーだったか、フィリオという槍使いがいた。
「あ、あのヴィゴーレ殿、いったい何を……」
ついでといわんばかりに、グレイがいた。
あー、護衛か何かか。
「俺たちがそいつを部屋に送ろう」
「ちょっと、ヴィゴーレ!おいしい役をもっていかないでください!」
クワっといった感じでシャルロッテさんがヴィゴーレをにらむ。
おい。
姫さんや、欲望駄々洩れじゃないか。
「流石に、婚礼前の姫が裸の男と部屋に入るのは不味かろう。今回は大人しくしておけ」
「ぐぬぬ……」
シャルロッテさん、すごい顔なさっております。
「そこの客室を借りるぞ」
いや、俺も筋肉マッチョマンよりは、女の子にお世話されたいんだが。
ちらりとマリアゲルテさんの方を見てみる。
「ぐぬぬ……」
マリアゲルテさん、お前もか……。
シャルロッテさんたちと別れて、部屋に入る。
同行者はヴィゴーレ、フィリオ、グレイだ。
いい加減、全裸だから服が欲しいんだが。
さっきから、大切なところを手で隠して前屈み内股になっている情けない格好をいい加減、気にしてください。
バタンと扉が閉まり、部屋に4人となった。
「話がある」
ん?ヴィゴーレがなにか言い始めた。
「言葉はわかるか?」
あ、そうか。
今俺、人型だからしゃべれるのか。
最近、喋ってもニャーとしか聞こえないから忘れてたわ。
「大丈夫だ。言葉はわかるし、喋れるぞ」
おぉ。と後ろの2人から感嘆の声が上がる。
素晴らしきかな文明!意思疎通ができるって素晴らしい。
「ふむ、言葉がわかるなら問題ない。一つ、確認したいことがある」
「なんだ?」
「お前は、件の神獣か?」神獣……?あぁ、そういえばそんなこと言われてたな。
「神獣かどうかは分からないけど、あの猫は俺の体で間違いないぞ」
「そうか……」
そこまでいったところでフィリオが唐突にガバッと膝まずいた。
え、えぇ……なにしてんのこの人?
「ご帰還お待ちしておりました。神獣様!御前に参じるのが遅くなり、申し訳ございません!」
えぇ!?
一体なに?
「ちょっ、ちょっと待って!何なんだ一体?俺はこの世界に来たばかりだから帰還とか言われても」
「……俺達、ドミニオ公爵家所縁の者にはある伝説が伝わっていてな」
ほう、伝説とな?
「それは、初代皇王アレクシスにまつわるものだ。初代皇王アレクシスには5人の仲間が居た。しかし、冒険の最中に協力関係になったものが居たんだ」
フィリオが続ける。
「剣術に優れ、神獣を操ったとされる魔族、シクス・ドミニオ。槍術に優れ、巨神の力を引き出したとされるエルフ、グラン・グレイスノース。弓術と体術に優れ、精霊に愛されたフィルボル、ミミ・ララ・ガルアーノ。始祖アレクシス様をはじめ、五人の仲間たちを『六大始祖』と呼びますが、彼ら三人のことは『三勇士』と呼ばれております」
「へぇ……ってドミニオに、グレイスノースにガルアーノ?」
「お察しの通り、三公爵家は三勇士の末裔でございます」
ふーん?ってあれ?それだとおかしくないか?
目の前にいるヴィゴーレやヘンリー、ロウフィスは人間だったぞ?
「俺たちが人間族なのが不思議そうな顔をしているな?考えてもみろ、建国から二千五百年も経っているんだ。血も混ざったり、養子をとったりしているさ。今の公爵家は人間族ばかりだな」
あ、そりゃそうか。
「で、こいつの家は今でこそ、紋章官なんてやっているが、ずいぶん前に分かれたうちの分家筋でな。……といっても、知ったのはつい最近だが」
「へぇ。で?それが俺に何か関係が……」
「分家として分かれた時に『ある予言書』をうちの公爵家から譲り受けていたらしいくてな」
「予言書?」
「いや、まぁ。予言書というほど大それたものではないのですが……。我が家の父が非常に信心深い人物でして……。私も相応の教育を受けておりまして」
ふむふむ。なるほど。
「わが父は二言目には神獣様、勇士様と……それはもう、うるさくて。まぁ、それが嫌で家を飛び出しまして。まさか本当に神獣様が現れるとは……」
こぶしを握りながら力説するフィリオ。
愚痴だったのね。
「ま、まぁともかく。俺は多分その神獣様とは別の存在だから。会いに来なかったことを怒ったりはしないよ。それよりも……」
「それよりも?」
「いい加減、シーツでもいいから服が欲しい……」
近くにあったベッドのシーツを使ってようやく体を隠せた俺は、ふと不思議なことに気が付いた。
「……あれ?」
「ん?どうした?」
「あ、いや。たいしたことじゃないんだが」
二人が不思議そうな顔をしている。
無理もない。俺だって不思議だ。
「……人間の体になれる時間がずいぶん長いな、と思って」
「人間の身体?」
「あー、なんというか。今はまだこの姿になるには時間制限があってさ。その時間が全然こねぇなと思って」
3分ちょっとだったはずなんだけどな。
今までと何が違うんだろうか。
女神が時間を止めた空間で人化したからか?
わかんないな。
「すまないけど、2人とも。ちょっと試したいことがあるから、もし魔獣の姿からこの姿に成れなかったら、この紙袋を俺の部屋に置いてくれないかな?」
「は?まぁ、そのくらいでしたら……」
「姫に伝えよう」
「ありがとう」
試しに脇に本の入った紙袋を置いて一度、猫に戻ってみる。
その後、もう一度人化する。
うん。何の問題もなく人化出来た。
しかし今度はすぐに時間制限が来た。
確かに体感では今までよりは少し長いが……。
やっぱり時間を止めた空間で人化したからっぽいな。
そうこうしていると、バタンと扉が開く。
「アレク!せっかくなので私がお世話を……」
「ずるいわ!姉様私も!」
シャルロッテさんとマリアゲルテさんが入ってきた。
そして俺の姿を見て2人してがっくりと膝をつく。
え、なに?いったい。
「「せっかく人の姿のアレクをお世話できると思ったのに……」」
なんなんだこの娘たち。本当に。
人化した主人公を主人公と認識できるのは、今のところシャルロッテ、マリアゲルテ、じぃや、ドラディオです。
ヴィゴーレは直感と魔力感知でなんとなく程度に認識しています。
11/25
年代が間違えてました。