4-8.チートアイテム
多分、俺は今、すごい顔をしていると思う。
何をしているんだ?この女神は?
いや、女神そっくりの人か?
「あ、多夢和君。やっほー」
こっちに向かって手を振っている。
なんか、前に比べてテンション高くないか?
本当に同一人物?
「あー、お付が何人かいると話しづらいですね。……よっと」
女神が手をひらひらと降ると、マリアゲルテさんは拘束を緩め、兵士も女神から手を放す。
マリアゲルテさんの腕から飛び降り、マリアゲルテさんの方を向く。
なんだこりゃ?
ちょっとぼーっとしてる感じか?
「いやー。ははは。ちょっと力を強くしすぎちゃいましたかね?あ、猫さん、今ならその三人、ベッドに連れ込み放題ですよ?」
イヤコラマテヤ。
何したか知らないけど、俺は別に連れ込みたいわけじゃねぇっての!
にゃーにゃーと女神に講義をするが。
「あはは。そうですか、そうですか。女神の力を讃える気になりましたか」
違う!
こいつ、わざとやってるだろう!
テレパシーの時や、俺の心のツッコミに反応してるところを見ると、こいつ、心を読めるだろ。
それができて、あえて無視しているのだろう。
「ふふふ。そんなこと、するわけないじゃないですか。やだなぁ」
「だよなー。あはは」
「そうですよー。うふふ」
「ってやっぱり心読めるんじゃねぇか!」
なんだろう。この女神と話しているとドッと疲れる。
しっかりと文句を言ってやった。体感では10分ほど。
なんか、周りが若干騒がしかった気がするけど、気にしない。
まだ文句言い足りない。
もう少し説教を……。
ん?なんだ?この気配は?
一体どこから……。
ひっ!?
気づけばすぐ後ろにシャルロッテさんが立っていた。
表面上は笑顔が張り付いているように見える。
……なんかどす黒いオーラも見える。
はい!めっちゃ怒ってらっしゃいます!
なんで!?なんか俺、悪いことした!?
戦々恐々としている俺にシャルロッテさんが口を開いた。
「あなたが盗人鼠ですね!」
はい?
盗人鼠というのは元の世界でいうところの、泥棒猫!みたいなものだろうか?
だとしたら、これは修羅場というやつなのでは?
などと考えていると、シャルロッテさんが俺の前に屈みこんで、指を俺の頬に充ててきた。
そのまま力を込めて突いてくる。
「アレクも!なんでそう、浮気性なんですか!」
俺の頬をつつきながら、シャルロッテさんが怒気を強める。
浮気じゃないです。
浮気という定義には当てはまらないと思う。
「あはは~。面白い娘ですねぇ」
おいそこ、面白いとか言うな。こっちは大変なんだから。
「……でも、ちょっと黙ってて下さいね。大切なお話があるので」
女神がそういうと、爆発的な魔力が女神から発せられた。
なんというか、視界が一瞬で黒く染められた感じ。
流石は女神というところか。
て、うん?
シャルロッテさんが急に大人しくなった。いや、シャルロッテさんだけではなく、周りに居るマリアゲルテさんや庭に居る鳥達、果ては風の音や水のせせらぎなんかも聞こえなくなっていた。
え?どうなってんだ!?これ!?
「あー、心配しないでください。ちょっと力で空間ごと時間を止めただけですので」
マジかよ。半端ないな!女神。
流石、神様ってところか。
その力はこういうときではなく俺に押し付けた使命とやらを果たすのに使っていただきたい。
「いやー。照れますよ。そんなに誉めないでください」
「誉めてねぇよ!!」
「で、結局、話ってなんだ?」
「あぁ、そうでした」
思い出したかのように、女神が紙袋を寄こしてくる。
って紙袋?
マークからすると、駅前の馬鹿みたいに広い本屋のものか?
って、本屋!?
「おい、お前まさか……」
「はい!あなたの居た世界にも寄ってきましたよ!スイーツのついでに!」
おいこら。
いいご身分じゃないか。
まぁ、いいや。
「で、その袋、中身は何なんだ?」
「あぁ、これはサクッと一つ目を解決してくれたお礼です。ゲームでいうところの目標達成ボーナスですね」
「ふーん?中身は……」
その中身の本を見て俺は驚愕した。
正直、開いた口が塞がらない。
いや、これいいのかよ。
「んー、問題ないと思いますよ。こっちの人はこれ読めませんし、こちらにとっては未知の言語になるので解読も一苦労でしょうしね。異世界では最大の武器になるでしょうし」
いや、そりゃそうだろうけどさ。
そこにあった5冊の本。
タイトルは「異世界転生チートマニュアル1~5」
帯には「そろそろ転生しそうな予感がしているあなたに贈る。異世界に持っていきたい知識。第一弾!」とある。
何の作者は知らないが、「何とか氏も絶賛!!」とか書いてあるし。
厚さ的には多分、1冊400ページくらいかな。
大きさはコミックや大判小説と同じくらい。
軽く人の姿になってみる。
時間がないからほどほどにな。
流石に猫の姿では本は開けない。
ざっくり開いて中身を見てみると、ジャンルごとに割と詳しく載っていた。
表や図はそこそこ入っているが、その内容は日本語。
確かにこっちの人には解読できないだろう。
いや、これ、いいのか?
チート級アイテムっていうか、完全にチートじゃん。
冷汗が止まらない。
「なぁ、これって……」
「あ、さすがにチートアイテム過ぎましたかね?まぁ、いずれはこの世界でも広まる予定の知識なんで問題ないですよ」
いや、そういう問題か?
「ま、まぁ使っていいっていうならもらうけど……」
うん、気にしないことにしよう。本人が良いって言ってるんだし、どうなったって知らね。
「あ、一応いきなりパソコン作るとかはやめてくださいよ。まだ、科学的にも文化的にも未熟な世界なんですから」
いや、出来ねぇよ。
さて、思いもよらずとんでもないチートアイテムを手に入れてしまった訳だが、この女神は一体何をしに来たのだろうか?まさか、本当にこの本をを渡しに来ただけとかないよな?
「あー、それはですね、実は私、自分の作った世界のスイーツを食べるのが趣味でして。ちょっと下界のスイーツをと」
完全に私利私欲だった!!
ダメだ、この女神!!
あ、そうだ。ついでに少し疑問だったことを聞いておこう。
「なぁ、ひとつ疑問だったんだが、俺って魔物なのか?」
「?はい。そうですよ」
「じゃあさ。この世界で言う魔物とか魔獣ってなんなの?なんか、皆あれだ、これだって言うからわからなくてさ」
「あー。んー。まぁ、分かりやすく言うなら魔力を使える動物が魔物。魔力をためすぎちゃって暴走したのが魔獣。それ以外が動物って感じでしょうか。あ、知的生命体はその限りではないので高度な知識を持った魔物や人間族は別カテゴリーとして扱った方が良いですね。あと、あのだいたらぼっち?でしたっけ?あなたが名付けた巨人も全然別のカテゴリーと思っていてください」
「そういえば、あの巨人もなんだったんだ?種がどうとか言ってたけど……」
「あぁ、あれは……」
「おっと、そこまでだ」
いきなり女神の後ろから男が現れ口を塞ぐ。
「も、もがが~」
「いやいや、これ以上は過干渉でしょ。じいさんに怒られる前に帰るよ」
女神が男の腕の中でもがくが、びくともしない。
いや、それ以前にこの男何者だ?女神が止めた時間の中で動くなんて……。
男をよく観察してみる。
うーん。特徴的なところ……。中肉中背、短く揃えた黒髪にごく普通の顔立ちでラフなTシャツにジーパン姿。あえて特徴を言うなら、ラノベや漫画の主人公にいそうな顔ってかんじだ。
「あぁ、そこの君もごめんね。こいつにはしっかり言い聞かせておくからさ」
「あ、いや。はい。大丈夫です」
「こっちの世界の事情を押し付けて申し訳ないんだけどさ。まぁ、ゆるっと頑張ってよ。俺も時々様子を見に来るからさ。あ、一応君以外の記憶からは俺達のこと消しておくから。じゃ、色々大変だろうけど頑張ってね」
そういうと、男は女神と一緒に消えてしまった。
いい人じゃないか。
こっちの心配もしてくれる。
女神を見ていたせいで神様って女神の態度がスタンダードなものだと思ってしまっていた。反省。
おぉ。気づいたら小鳥の声も聞こえ始めてきた。
魔法を使った女神が居なくなったからかな?
「きゃぁぁぁぁ!」
ガシャン!
けたたましい悲鳴と何かが割れる音が聞こえた。
この声はマリアゲルテさんかな?
何かあったのだろうか。
ん?あれ?ちょっと待て。
俺、確かさっき本を読むために……
「そこの変質者!大人しく投降しなさい!」
しまった。
俺、今、人化して……。
……裸だった。
遅くなって申し訳ありません。
私生活がかなり忙しくてこっちまで手が回りませんでした。
今後も遅くなる可能性があります。ご了承ください。
正直、チートアイテムは出すか、どうかかなり迷いましたが、出すことにしました。
賛否はあるかと思いますが、主人公は一般人。知識は何かで補完させる必要がありまして……




