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4-4.蜂の価値

バロンから簡単に魔法について確認してちょっとグダッとした。

この森は小川の音と陽の光が心地いい。



ん?あれ?陽の光?

そういえば、なんでここには陽の光がさしてるんだ。

ここ、森の中だよな?

結構、鬱蒼としてた気がするんだけど。

というか、なんで城の隣が森なんだ?

ここ、一応城下町の一部のはずだよな?





「なぁ、バロン。ここって……」

隣で切り株に座っていたバロンに声をかけた。

(ん?あぁ、ここはエフィーリアが4代前の皇王から管理者として頂いた土地でな。なんせ墓地の奥にあるもんで、城下からは通いづらくてな。こうして借り受けた土地に家を建てさせてもらったんだ)

俺の聞きたいことと違ったが、そうか。魔女さんここの管理者なのか。

じゃぁ、魔女さんが管理してるから陽の光がここまでさしてるのかな?

洗濯とかは陽の光がないとつらいだろうし。

まさか乾燥機があるわけでもあるまいし。

(元々、聖地などと言われていた土地でな。長年放置されていたせいで、日も差さないほど荒れていてな。放置し続けても魔獣や死霊の巣になってしまう。とはいえ、聖地とされていれば手も出せぬ。皇家も持て余していたらしい。たまたま通りかかった俺とエフィーリアが色々解決して、その報奨に頂いたのだ)

「へぇ。いろいろ冒険してんだなぁ」

(まぁ、元々騎士であり冒険者だしな)

バロンはカラカラと笑った。

骨だから本当にカラカラなってるんだが。

そういえば「要塞の守護者」だっけ。

前、聞いた気がする。

要塞都市ラーベルガーを守り抜いたとかなんとか。

そこもいつか行ってみたいな。

ガルアーノ公爵の直轄領なんだっけ?

(まぁ、その後いろいろあって、今は帝国領なんだが、当時の俺の出身地の軍閥貴族に暗殺されちゃったんだがな)

バロンがさらにカラカラ笑った。

いや、笑えねぇだろ。

暗殺って。

(ん?安心しろ。その軍閥貴族にはしっかり報復してやったから)

怖いわ!!

「ちなみに報復って……」

(そりゃもう、毎夜毎晩枕元に立ってだな、生前使っていたナイフを扉からだんだん近づけていってな……)

うわぁ。そりゃ怖い。

(気が狂い始めて、最終的には俺の暗殺を3代前の皇王の前で自白して処刑されたぞ)

バロンがこっちを見て朗らかに続けた。

一瞬、ウインクする幻影が見えた。

骨だからわからないけど。





「そういえば、バロンってなんでリッチーになったんだ?」

(ん?あぁ、それはな。暗殺されたときにラーベルガーを守ったときに得たリッチーの魔石をたまたま持っていてな。それが割れて、どうも呪われたらしい)

えぇ。呪いかよ。

あれ?ちょっとまてよ?

4代前の皇王って言ったか?

「なぁ、エフィーリアさんって、今何歳なんだ?」

見た目的には30代くらいだと思うんだが。

(おいおい。女性の年齢は……)

「そういうのいいから。4代前ってことは結構前だろ?」

(むぅ……、まぁ俺が死んでから二百年ほど経っているな。当時、エフィーリアは百五十を超えていたと思うから……)

350歳かよ!!

びっくりだわ。

(まぁ、彼女も彼女で不老不死の呪いにかかっていてな。ま、人に歴史ありってやつだ)

不老不死も呪いの類なのか。

(そりゃお前、エルフでさえ寿命は三百年、人間だと百年いかないくらいだぞ。それを超えて、年を取ることも、死ぬこともできないなんて呪い以外の何物でもないだろ)

そりゃそうか。





そのとき、ザッザッと森の奥から熊と蟻が出てきた。

ローゼとでかい蟻……、言い辛いからアントニオ君と名付けよう。アントニオが木製のバケツを抱えてやってきた。

バケツというか、ふたがついてるから樽っぽい。

もしかしてアレの中身は……、蜂蜜?

(ローゼシュバイン?そちらの彼はどうしたんだ?)

「あぁ、ローゼは森の奥ででっかい蜂の巣作りを手伝ったらしいんだよ。そのお礼に蜂蜜をもらったらしい。俺もこの前少しもらったぞ。そっちの蟻は……蜂と一緒にいたな」

(ほぉ。蜂蜜とはなかなかの品だな。よくやったぞ、ローゼシュバイン)

バロンが骨の手でローゼの頭をなでる。

(ローゼって。あ、ローゼシュバインのことか。ずいぶん仲良くなったんだな)

アントニオがバロンの横を通って、俺の前にバケツを3つほど置いた。

ローゼが持っている2つを合わせると全部で5つ。

ひとつひとつはそんなに大きくないのだが、5つもあるとそれなりの量がありそうだ。

「これどうしたんだ?」

(ちょっとまて。ん?あぁ、なるほど)

「どうした?バロン?」

(お前へのお土産だそうだ。あと、この国の権力者、たぶんあのお姫様やバスティアン殿だと思うが、につながりがあることをローゼシュバインが話したらしい。どうも税金代わりに保護を求めているみたいだぞ)

保護って。

やっぱりあの蜂は知能が高いのだろうな。

「わかった。伝えておくよ。さすがに5つはもらい過ぎだから、2つだけもらっていくよ。あとはそっちでもらってくれ」

(ははは。承知した。伝えておこう)



こうして、蜂蜜を手に入れた俺は森を後にした。

バケツを運ぶのにどうしようかと思ったが、結局ヴォルガモアになって運ぶことにした。

シャルロッテさんたちにいいお土産ができたな。










城から戻りキッチンに向かうと、キッチンにはじぃやさんがいた。

珍しいな?あまり、じぃやさんをキッチンで見た記憶がないのだが。

俺は咥えていたバケツの取っ手を離し、バケツを床に置いた

「おや?アレクシス様?それは……?」

じぃやさんが俺の持ってきたバケツを見つけた。

ポーションイーターの姿に戻って、にゃーんとひと鳴きしておく。

じぃやさんはバケツに近づくと中を確認し驚いていた。

「これは……蜂蜜ですか?それもずいぶん上質な……。失礼。光よ、我に叡知を『鑑定』」

短い呪文と共に、魔法を唱えた。呪文的に光魔法なのかな?

「これは!?『ミルクカウビーの蜂蜜』!?それも高品質のものですと!?こんなもの、いったいどこで……」

へぇ。これ、高品質なのか。女王蜂はもっと味が良くできるとか言ってた気がするが。

にしても、伝えられないって言うのは不便だな。いっそ人化してみようか。

どうせいつかは知ることになるだろうし。

と心の中で覚悟を決めようとしていると後ろのあるドアが開いた。メイドのリリアーノさんと……オウガ族の族長だっけ?リリアーノさんの執事のように付き従っている。

「アレク様、バスティアン様、どうされたのですか?……これは?」

蜂蜜の入ったバケツを凝視しながら、リリアーノさんが手を伸ばす。

「これは……、もう見つかってしまったのですね」

は?見つかった?どゆこと?

「どういうことだ?リリアーノ?」

「申し訳ありません。実は、先ほど大輪の魔女殿からお話は伺っていたのですが、墓地の奥にある聖地にミルクカウビーが住み着いたそうです。魔物ですが自分達が世話をするから心配しないように、と」

じぃやさんが、髭に手を当てふむ。とうなずく。

なんというか、こうしてみると絵になるなこの爺さん。

「なるほど、しかしこれは……、ミルクカウビー種と言っていましたね?ひょっとしてより上位の種なのでは?」

「そこまではわかりかねますが……」

あの蜂、上位種だったのか。

まぁ、女王蜂だしな。テレパシーも使えたし、税金や権力の概念も理解してたっぽいから、結構知性も高いんだろうしな。

しまったな。鑑定しておけばよかった。

まてよ?たしか『レベルアップポーション』を鑑定したときは製作者みたいな項目があったな。調べてみるか。


アイテム名『ミルクカウビーの蜂蜜』

レアリティ『☆☆』

効果『栄養価が高い』

説明『ミルクカウビーが採取した蜂蜜。採取した三つの種類により、味・香りが変化する。栄養価が高く、主にクレアナ聖国やゴルギス砂塵国で産出される』

販売元『  』

生産元『クレセントビーの群れ857606号の女王蜂』


おおぅ?

なんだ?ミルクカウビーとクレセントビー?よくわからん。

なんで生産元とアイテム名が違うんだ?

もう一発鑑定してみるか。



種族名『ミルクカウビー』

系統『ビー種生産特化』

ランク『Fランク・青銅級・一般級』

種族スキル『蜜生成』『錬金術』『統率』『連携』『複製』

説明『蜂の姿をした魔物の一種。集めた蜜の量に対し、複製スキルにより採取できる量が多い。主にクレアナ聖国・小国家群の森林地帯に生息しており、ゴルギス砂塵国の一部でも確認できる。環境の変化に比較的強く、荒野地帯でも水と花をつける植物があれば生息できる。葉が茂る樹木に好んで巣を作る』


種族名『クレセントビー』

系統『ビー種生産特化』

ランク『Cランク・金級・戦争級』

種族スキル『光魔法』『闇魔法』『風魔法』『テレパシー』

説明『蜂の姿をした魔物の一種。倒木や古い木の内部に好んで巣を作る。巣は女王が生活する上層・幼虫を育てる中層・蜜を貯蓄する下層に別れ、巣となる木の大きさにより、群れの大きさが大きく変化する。女王はテレパシーが使用でき、他部族に巣作りの手伝いや、倒木の場所を教わりる代わりに蜜を提供することもある。ミルクカウビーが人間の世界で養蜂され始めて数を減らす。この30年での報告例は3件のみである。魔物の系統的にはミルクカウビーの上位種に当たる』


へぇ。30年で3件しか報告例がないってことは、あの蜂は10年に1匹しか出ない蜂なのか。

ん?あれ?待てよ?ってことはこの蜜は超希少なものなんじゃないか?

ミルクカウビーの上位種ってことは俺みたいに進化したってことだよな?

もしかして、巣を作ったときはミルクカウビーで巣作りの途中で進化したのかもしれない。

つまり……。

もしかして、しばらくしたらあの蜂はとんでもない価値を生み出すのかもしれない。

200年で4代と聞くと就任が50年程度と思われることもあるかもしれませんが、子を飛ばして孫、曾孫が継ぐこともこのドリス皇国ではよくあることです。その辺りはまたいずれ。


ドリス皇国内では養蜂は一部農家で行われている程度で、基本的には森での採取が主となっています。森にはハニービー種というミルクカウビーの階の種族が多数生息しているためです。甘味はサトウダイコンのような作物からの砂糖のほうが主流です。


一部台詞を修正しました。

バロン死す→約200年前

バロン土地をもらう→4代前の皇王

バロン復讐を達成する→3代前の皇王

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