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11、悪役令嬢、勝利の味と死の条件を考える。




 ドロシーは勝利の味をかみしめていた。



 勝った、という確かな手ごたえがあった。



 もちろん、これで戦いは終わらないだろう。



 だから、ドロシーはその日屋敷に帰ってきてからすぐに寝た。



 次の準備に移るためだ。



 なにせ、ドロシーは乙女の策略のヘビーユーザーである。



 次に何をすべきかを誰よりも知っていた。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「ねぇドロシーお嬢様ぁ! まだ歩くのですかぁ?」



 ケイトの声にドロシーは振り返る。



 赤髪にそばかすが特徴的なケイトはまたぶつぶつ文句をいいながらドロシーのあとについて来ていた。



 ドロシーとケイトはローエングラム市場を通り抜け、怪しげな建物が立ち並ぶ商業区と貧民街の境目辺りを歩いていた。



「嫌なら帰ってもいいのよ。というか、帰ってよケイト! 邪魔なの!」



「何度も言ってるじゃないですか! お嬢様一人で外に行かせたとあれば伯爵様にお暇をだされてしまいます! ドロシーお嬢様はどうしてそのことを分かってくださらないのです!」



 ケイトのドレスにはシミが広がっていた。



 ひどい脇汗だ。



 おっさんのように膝に手をつき、はぁはぁぜいぜい呼吸をしている。



 一応ケイトも貴族階級に属してはいるのだが……可憐、という表現とは程遠い姿がそこにはあった。



 溜息をついたドロシーはケイトを見捨てるように前を向き歩く。



「待ってくださいお嬢様ぁ」



 ドロシーは先を急ぐように歩き続ける。



 たねの効果によって男以上に体力のあるドロシーにとって、こんな道など屁でもなかった。



 そして、今や白昼堂々敵に襲われたとしても、絶対に勝つ自信があった。



 暗殺という直接的な手段では、わたくしを殺すことなど不可能。



 それは十分に見せつけた(・・・・・)、と昨夜の戦いを思い出す。




 となると、戦いは次のフェーズに移行したと見るべきね。



 ドロシーが角を曲がろうと後ろを振り向くと、ゾンビ映画のようにのそのそと追いかけてくるケイトが小さく見えた。



 ドロシーは小さく鼻を鳴らした。



 そして、更にスピードをあげケイトを引き離す。



 これから行く場所を誰にも見られたくなかった。



 だから、これでいいの。




 ドロシーの頭は思考をはじめる。



 次にデレラシンが何を仕掛けてくるか、それは正確には分からない。



 でも絶対に阻止しなければならないことが一つだけある。



 それは、あの二人を会わせてしまう事。



 デレラシンと王太子レイ。



 この二人を会わせてしまうと、すべてが終わる。



 それだけは阻止しなければならなかった。



【乙女の策略】をプレイしていたころの記憶が鮮明によみがえってくる。



 あの晩餐会のシーンが。



【 王太子レイの誕生日に開かれる晩餐会 】



 そこで王太子レイはデレラシンに一目惚れをするのだ。



 一度一目惚れをしてしまった王太子レイは、まるで暴走特急のようにデレラシンに急接近し、二人は結ばれゴールイン。



 そして、ドロシーは処刑される。



 今までデレラシンを苛め抜いていたから、という、そんな理由で……。



 本当に冗談じゃないわ。



 だから、とにかくあの二人が会った時点で、わたくしの命は終わる。



 そして、それをさせないために、今ここにいる。



 ドロシーは貧民街のあるボロ屋の前で止まると、ノックもせずに勢いよく扉を蹴り上げた。



 藁の上に寝そべっていた汚い老婆が、驚いて飛び起きる。



「何勝手にワシの家に入って来とんじゃぁあああ! 殺すぞ! ほかぎゃあああ!」



 ドロシーは不敵に笑う。



「ふふふ。あなたにとってもいい話をもってきたわ。当然聞くわよねバヌーサ。名前合ってるわよね? 初めましてだと思うけど。

 名前がちゃんと合ってるか聞いてるのよバヌーサ。

 何も言い返さないけど耳が遠いのかしら?

 あー、それともこう言った方がいいかしら?

 この世界から迫害され、どこにも行き場のない魔女の末裔。

 魔女バヌーサ」


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