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24話 シスターの秘密①

 


 「こんな夜中に目が覚めるなんてな・・・寝るの早すぎたか」


 まだ暗いうちに目を覚ました俺は、起きて早々激しい尿意に襲われた。


 「やっべ、漏れる漏れる!」


 部屋を飛び出し全力疾走でトイレへ駆け込み、ギリギリセーフ。

 正直めちゃくちゃ危なかった。


 漏らしたりしたらエルになんて馬鹿にされるか分からないからな。


 間に合って良かったぜーなんて思いながら廊下を歩いていると、角から唐突にエルが現れた。


 あいつ昼間のこともあって相当眠いはずなのに、こんな時間まで起きてたのか。

 すげぇ元気じゃん。


 あぁ、若いってこういうことなんだろうな・・・多分。


 「起きてたのか、グッサン」

 「さっき目が覚めたところだ。お前こそまだ寝てなかったんだな」

 「まぁ色々あってな・・・」


 こんな遅くまでなんて一体何があるというんだろうか?

 そんな疑問が頭をよぎったが、いつも通りのエルの無表情を見ている内にどうでもよく思えてきた。

 

 深くは聞かないことにしよう。


 「・・・色々、ね。お疲れさんです」

 「うん、でもそろそろ寝るよ」

 「そうか。おやすみな」

 「おやすみだ」

 

 そう言って、廊下の奥に消えていくエルを見送る。


 こうして見てみるとエルも随分丸くなったな。

 初対面がアレだっただけによりそう感じるのかもしれないけど、エルに可愛げを感じてきてまるで姪ができた気分のこの頃である。


 ま、そんな年じゃないけどさ。


 「さて、まだまだ夜は長いし、ゆっくり二度寝を楽しむとするか」


 その場で軽く伸びをし・・・ん?


 「なんだ?」


 エルが現れた方向より、部屋から漏れたと思わしき光を感じた。

 廊下の端っこに目を凝らすと扉の隙間からかすかに光が漏れている。

 

 「あそこは・・・シスターの部屋・・・」


 シスターもまだ起きてるのか。

 全く、エルといいシスターといい、夜更かし好きだな。


 「・・・」


 俺は二人に呆れるのと同時に、とてつもない好奇心に駆られた。

 これまではエルに禁止されている行動に含まれていたので、考えもしなかったことだ。


 しかしエルともそれなりに仲良くなって、ちょっとくらいいいだろうという慢心が生まれていたのも原因の一つだろうなぁと思う。


 「まぁ・・・のぞくくらいなら・・・」


 馬鹿だよな。


 俺は廊下を移動し、シスターの部屋の前へやって来た。

 隙間から漏れるまばゆい光を受けながら扉を開ける。


 「シスター、起きてますか?」


 と小声で呼び掛けながら部屋を見回す。

 シスターは普通に椅子に座り、何かの作業をしていた。

 夢中になっているのか俺には気づいていないようだ。


 それにしても綺麗な部屋である。

 きちんと片付けてあって、シスターの綺麗好きな性格がうかがえるな。


 「そこにいるのはグッサン?」

 「・・・気付いてたんですか」

 「はい」

 「すいません、のぞくような真似をしてしまって」


 背中を向けて座っていたので分からなかったが、どうやらとうに俺の存在には気付いていたらしい。


 「構いませんよ。何も隠すことはありませんし」


 失礼しますと言って部屋に入る。

 なにやらいい匂いもするし、変なにおいもする部屋だ。

 医者の部屋だしこんなもんなのかな。


 「目が覚めたんですね。おはようございます」

 「どうも。シスターこそこんな遅くまで何をやって・・・」


 シスターの手元が見えると、俺は驚嘆した。

 

 「シスター、あなた血を・・・」


 あろうことか、彼女は自らの血を注射器で抜いていた。

 俺の魔力査定の時のように、血を何本もの試験管に移して栓をしている。


 「これも私の仕事なんです。患者を救うためのね」

 「血を抜くことがですか!?どういうことです!」

 「驚くのも無理は無いでしょうが、落ち着いて下さい」

 「だって意味が・・・いえ、すいません」


 注射が人一倍嫌いだということも相まって、大分興奮してしまった。

 しかしそれを抜きにしても、この行動は意味不明だ。


 これが仕事だって?

 患者を救う?

 

 どういうことだよ!



 

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