↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
24/46

24. 湿地に響き渡るは弦の音

 ゴーレムを粉砕したチューブワームは、再び水中へとその姿を隠した。

 

「セレナ! オレがヤツを引き付ける。タイミングを見計らって渡しておいたアレをうちこんでやれ!」

 

「まかせろ!」

 

 前回はダメだったが、今回はセレナという頼りになる相棒がいる。そのための作戦も彼女と立てていた。

 

 まずは、雷撃魔術を沼に打ち込む。


「雷撃は聞かないって、さっき自分でいったじゃない!」


 水をつたわり広範囲に痺れをともなった衝撃が伝わっていく。

 そして、目標のチューブワームにも届くと、ヤツの目標がオルニスからオレへと切り替わる。方向転換し、一直線にその身をくねらせるようにして水中から近づいてきた。


 ここからが勝負時であった。

 足場を凍らせるための魔力を高める。付近の水場がビシビシと音をたてながら凍り付き、氷の厚さがさらに増していく。


 ヤツがこちらに近づく前にもっと厚くしたいところだが、間に合うか厳しいところだった。


 しかし、その凍るスピードが一気に増した。

 横を見ると、オルニスが協力するように魔力を送っていた。


「なんだか知らないけど。凍らせればいいんでしょ」


「ああ、助かる」


 準備を整えたところで、後方で待機するようにセレナに目配せする。

 その間にも、黒く長大な影はとうとう足元までやってきた。


 重い衝撃音が水底から響く。


 足元に厚く張った氷に力任せに体をぶつける姿が見えた。透明な氷ごしに、ヤスリのような細かい牙がびっしりと生え揃った、グロテスクな口の中が見えている。


 ふたたび体当たりの音と共に分厚い氷にヒビが入った瞬間、オルニスの小さい体を抱えながら横っ飛びに転がった。


「くるぞ!」


 氷を砕きながらヤツがその姿をあらわした。水面に飛び出した勢いのまま、さっきまでオレが立っていた場所に大口を開けて駆け抜けていこうとする。


 これがやつの基本的な動きで、このあとすぐに沼の中にもぐるというヒットアンドアウェイを繰り返す。 

 しかし、水中へと戻る前のやつの姿をセレナが捕らえていた。


 リィンと弦の涼やかな鳴き音が、霧で覆われた世界に響き渡る。


 大口を開けたやつの口腔内に高速で飛来した矢が突き刺さり、初めて味わう苦痛にのたうちまわる。

 

「さすが、いい仕事だ」

 

 ここで水中に逃さないように、破損した氷面を一気に凍らせ退路を塞ぐ。

 

「ライル! うけとれ!」

 

 セレナから放り投げられたのは、金属繊維を束ねた綱だった。

 受け取った綱はチューブワームにのび、セレナが打ち込んだ矢へとつながっていた。


「くたばれ! ミミズやろう!」

 

 腕から伝わった雷撃がヤツの肉体で暴れ周り、すぐさま内臓まで到達していく。

 ビクンビクンと何度か痙攣したのち、口から黒い煙を吐き出しながらその動きを止めた。


 念のためにもう一度雷撃を加えるが、反応はなく完全に沈黙していた。

 

「ふう、なんとかなった……。二人ともおつかれさん」


「ライルの作戦通りになったな」


「セレナもよくあのうごきまわる的に当てられたな。それに、オルニス、おまえも」


「わたし?」


「ああ、おまえが足場を凍らせるのを手伝ってくれたのも大きかったよ。ありがとな」


「……ふんっ」


 オルニスは不満そうに眉をよせると、そっぽを向いた。

 ちょっと褒め言葉があからさま過ぎたか。なんとも扱いが難しい娘である。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。