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14. 妙なプライドなんて捨てて素直になれ

 それからバザールの開かれている広場を中心に探し回った。

 

「はぁ、見つからないな。お前の母ちゃんどこにいったんだよ」

 

「わかんなーい。ねえ、おなかへった~」

 

「仕方ねえな。あれでいいか?」

 

 オレが指差す先には菓子を売っている屋台があり、甘いにおいをあたりに漂わせていた。

 セレナに男の子をまかせて、屋台へと近づく。

 

「ライルじゃねーか、どうした?」

 

「どうした?、じゃねーよ。客だよ。3つくれ」

 

 日に焼けた肌をして屋台の前にたつ中年男は元冒険者だったが、傷が元で引退し、今では客商売をしていた。

 

「待ってな、すぐに焼きあがるからよ」

 

 くぼみのあいた鉄板に小麦粉を練ってつくったタネを流しこんでいく。

 その手つきはなれたもので、もう男が冒険者から離れてしまったことがわかってしまう。

 

「ところでよ、あそこにいる2人はお前の連れだよな」

 

「ああ、そうだが」

 

 後ろを振り返ると、セレナが男の子の相手をしていた。

 

「すげえ美人じゃねえか、いつのまに結婚したんだよ。子供も大きくなって、うちのより3つ下ぐらいか?」

 

「ちがう、あれは最近うちのパーティーに入ったやつだ。子供は迷子だったところ拾っただけだ」

 

「んだよ、とうとうあのライルも身を固めたのかと思ったのによぉ」

 

 こいつも冒険者時代は結婚なんてくだらねえってうそぶいていたはずなのに、ケガの治療中に知り合ったという神殿のシスターと結婚しやがった。

 

「おめえも変なプライドなんか捨てて素直になったほうがいいぜ。帰ったらカミさんとガキがいる生活ってのも悪くない」

 

「まったく、すっかり宗旨変えしやがって」

 

 焼きあがった菓子を包み紙にくるんで渡され、代金を払いさっさと屋台を離れた。

 

「おまちどうさん、ほら、まだ熱いから気をつけろよ」

 

 男の子は渡された菓子を懸命にほおばっている。セレナに渡すと彼女は戸惑っていた。

 

「代金を払おう」

 

「いいよ、大した額じゃないから」

 

「ううむ、しかしだな」

 

「早く食わないと冷めちまうぞ」

 

 子供のとき以来ひさしぶりに食べた味だったが、甘ったるさが口に残った。帰ったら酒をのんで口直しをするとしよう。

 

「さて、母親さがしを再開しないとな」

 

「あ、ママだ!」

 

 男の子が指差す方向には若い女性が一直線に走ってきていた。

 それから、何度もお礼をいわれ、無事に男の子は母親と一緒に帰っていった。

 

「はあ、終わった終わった。あ、そうだ。セレナに用事があったんだ」

 

 うちの家にきても調理道具はなにもないことを告げると、セレナが旅用につかっているという携帯調理器具を持ってきてくれることになった。


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