16歳は恋愛守備範囲ではないけれど……と、宰相子息3
宰相子息視点です。
新年五日目、中庭にて。
妹ちゃんに、理想が高過ぎると罵られた。
恋愛結婚も宰相で侯爵に相応しい妻も今まで多くの女性と関係を持った事も、全てお気に召さないようだ。
そんなに高過ぎる理想だろうか。
勿論、不味いとは思っているのだが、それでも必要な理想な気もする。
では浮き名を流し過ぎた事が不味かったのか……と、言われても悪友兄妹に『女狂い』と揶揄される程の性分だと開き直る。今更、過ぎた事を悔やんでも仕方がないし、かといって彼女達と付き合わなかったという選択肢はきっと無かった。
女遊びが過ぎる、と窘められた事もあったが、自分では遊んでいるつもりは無い。何時だって結婚相手として相応しいかどうか見極めようと付き合っているのだ。結果として、女狂いと揶揄われ浮き名を流していると噂され女遊びと咎められた、だけの事だ。
その時その時自分の心に正直に行動して来た。その結果、結婚相手が見つからないとしても後悔はしていない。否、してはいけないのだ。
しかし、後悔はしていないとしても……実際問題、結婚出来ないのは大変不味い。
妹ちゃんの言葉一つ一つが心にぐさりと突き刺さる。特に『恋人は良いけど結婚相手としては無い』が、如実に今現在の状況を表している。
恋愛守備範囲内の女性の多くは結婚しており、また(妹ちゃん曰く)高過ぎる理想が女性達から見て、妻の座を遠くしているという事が、渋々ながらも宰相子息にも分かりかけてきた。
とは言っても……理想を低くする事は(今は)考えられない相談であった。
真っ青になって、ぶつぶつ呟いて、少し頭をふらふらさせて、何事かを考えている宰相子息。対するイリアも言い過ぎたと青くなり、宰相子息の様子を見守っていたが沈黙(というよりは、尋常じゃない宰相子息の青褪め具合)に耐えられなくなったようで、努めて穏やかに語りかけた。
「別に今からでも遅くないと思いますわ。ちゃんと一人に絞ってその人だけを見つめるの……真面目に、真面目にね。理想も幾つか減らしたらどうかしら?」
イリアは実は大層困っていて、前世地味OLとしては恋愛経験に乏しく本の受け売りを言ってみたものの、それが役に立つかどうかは疑問であった。また、何故宰相子息とこんな話をしているのかと今更ながに思い始めており、その為苦笑いしか出来なかったのだが、少し混乱していた宰相子息にはそれは天使の微笑みのように感じられた。
「え、あ、理想を……?しかし宰相で侯爵に相応しい妻でなくては」
「うんうん、それは最重要事項って事ですわね」
「美しくて」
「それ!本当に必要ですの!?」
妹ちゃんが鬱陶しそうに美しく飾りつけた銀の髪を捲し上げた。さらりと波打って月の光に揺れる。
「宰相だか侯爵だかの妻って要は政略結婚ですわよね?でもココでは、あまり良く思われてませんから、まあ、それは、却下!って事にするとして、貴方は……恋愛をしたいんですの?」
宰相子息は眉根を寄せて妹ちゃんを見た。
何を当たり前の事を言っているのか、と。今まで恋愛をして恋愛をして恋愛をして……結婚相手を見つけられなかった、というのに。ココで恋愛をするのは必然な事なのに。
「美しくて上品で気が利いて優しくて貴方好みの人と恋愛をしますの?」
宰相子息絶不調です。大人の面目ありません。
つられてイリアも不調です。




