相手が絶不調で困るのだが……
宰相子息視点になれず、イリア視点です。
宰相子息は恋人が出来たのだと勘違いしてイリアを『大人になった』と評じたのだが、当のイリアは理由が分からない。
身長はここ一、二年ろくに伸びておらず、最後に宰相子息と会った時から変わっていない。
では、胸か。胸は確かに大きくはなった。しかし、今は不可抗力とはいえマントでぐるぐる巻きになっており、胸の成長具合など普通は分からない筈だ。浮き名を流し過ぎた宰相子息なら重ね着の上からでも分かるのかも知れないが……。
後は、顔か。毎日鏡を見てる身としては変化が分からない。久し振りに見る宰相子息の事でさえ老けたかどうかも分からないのだから、イリアは鈍いのだろう。ただ、相も変わらず顔だけは美形だなぁと思っていた。
だから、イリアは取り敢えず言った。
「まあ、年齢だけは結婚適齢期ですもの。大人と言えますわね」
反応が大人しい宰相子息に戸惑いながら言葉を続ける。
「最も貴方はいい加減ヤバイんじゃなくて?」
この際お兄さまは棚上げしておく。
はは……と乾いた笑いが聞こえる。
「貴方……結婚する気、ありますの?」
「勿論……結婚する気、ありますよ?」
若干台詞を真似られた事にイラッとしつつも覇気の無い様子にいよいよ戸惑ってしまう。
「誰か良い人おりませんの?」
奇しくも、それは先程宰相子息がイリアの兄に聞いたモノだった。
「何故か、いないんですよねぇ……」
「何故って……理想が高過ぎなんじゃなくて?」
何処か相談教室の呈を成してきたがイリアも宰相子息も気付かない。イリアは腕を組み、ウ~ンと唸った。
「高くは無いと思いますが」
「例えば?」
「恋愛結婚なのは当たり前で」
(ええっ!?意外とロマンチストなのね!どう反応して良いか分からないわ、無心よ、無心)
「宰相の妻に相応しく、侯爵の妻に相応しく、勿論美しく上品な女性で……」
「貴方……馬鹿ですの?」
ここへ来て、宰相子息の眉尻がぴくりと動いた。馬鹿は無い、馬鹿は……。
イリアはこれ見よがしに溜め息を吐き、一瞬の沈黙の後、盛大に捲し立てた。
「そんな(理想が高過ぎる)奥さんが欲しいなら遊んでる暇なんかないでしょっ!?そもそもわたくし、貴方は結婚する気なんて無いと思ってましたわ。次から次へと女性の元を渡り歩いて……一人に決めようとしない。友人も貴方の事、恋人としては良いけど結婚相手としては無いと言ってましたわよっ!増してや、宰相で侯爵の妻に相応しいって!なんて狭すぎる関門っっ!!おまけに恋愛結婚んんぅ!!?ちょっと理想高過ぎっ!!!」
宰相子息は若干引いていた。
次は宰相子息視点に戻る筈です。
結婚出来なかった前世地味OLが暴走してしまい面目ないです。




