兄と妹と招かれざる客4
いつもありがとうございます!!
「お兄さま!!」
わたくしは喜色満面で兄を出迎えた。
今は仕事中では?などという疑問は頭の片隅に追いやる。
「お帰りなさい、お兄さま!お待ちしておりましたわ」
救世主に抱き付けば、そっと抱き締め返してくれる。
幼い頃から変わらない温かい腕。
お兄さまの優しい香り。
何より筋肉ムキムキじゃないっ!
あ~安心する。
って、夢心地に浸っていたのに……邪魔された。
「お帰り」
その声の主に兄が冷たい視線を投げる。
「ここは貴様の家では無い筈だが?」
「良いじゃないてすか。いずれも私の家になるかもしれませんし」
どういう意味だ?と首を傾げるわたくしを、兄が強く抱き締めた。
「一生無い」
わたくしは気付いてしまった。
宰相子息は母を狙っているんだ。
しかも家込みで。
いずれも父だけじゃなく兄も××しちゃうつもりなんだ。
平和な国だと思ってたけど……身近にこんな危険な男かいたなんて!
あ~ヤバイ、ヤバイです!お兄さま!!
こんな危険な男に関わるのは止めて下さいっ!
震えてしまったわたくしを宥めるように、兄はわたくしの頭を優しく撫でてくれた。
「そうですよねぇ。ここが私の家になることは……無いですよね。でもその内、彼女に『お帰りなさい』と言ってもらいたいですねぇ」
「それも無い。守備範囲外だろう」
兄の声が怖い。
聞く人を凍らせられそうなくらい冷え冷えしている。
対する宰相子息は笑っている。
笑い声はクスクスと楽しそうだけど、此方もなんか怖い。
「――ええ、そうですよぉ」
宰相子息はソファから立ち上がって、兄と正面から向き直った。
「でも、先の事は分かりませんよねぇ」
痛い。
痛いんですけど、お兄さま。
そんなに強く抱き締めないで。
怖くて顔を宰相子息と母から外せない。
お兄さまの顔を見れない位置で良かった……。
「そうか、なら」
低い。
地を這うような低い声だよ、お兄さま。
「二度と我が家の敷居を跨ぐな」
宰相子息は愉快そうに笑って「はいはい、分かりました」と入り口に歩いて来る。
兄がわたくしをその背に隠したので、二人が何事か言葉を交わしたのだが、わたくしには分からなかった。
兄一人が険悪な雰囲気の中、暢気な声が上がる。
「もう、お帰りになるのね。そうだわ!今お土産を用意いたしますわ!イリアちゃん、お客様を玄関まで送って行って頂戴!――そう、それで、貴方はこっちよ」
母は有無を言わさず兄を呼んだ。呼んだ、というか直ぐもう一つの扉から隣の部屋へ消えた。
兄は溜め息一つついて、わたくしの顔を覗き込む。
その瞳は柔らかく、そこ声は優し気で、その表情は穏やかだった。
「イリア、あいつには――」
「近付きませんわ」
「うん。それで良い」
兄はわたくしの頭を撫で、仕方ないといった様子で母の後を追った。
宰相子息「彼女に『お帰りなさい』と言ってもらいたい!」
イリア(彼女って……お母さまのこと!?そんな具体的に妄想してんの!?ヤバイ!ヤバイ男だっ!!)
兄(彼女……イリア?守備範囲外と言っていたが……やはり、目を付けられたか。イリアは可愛いからな)(しかし、先程から口調が丁寧で苛つくな……母上とイリアが居るせいか?)
どうも、本編の中に入れづらかったので……。