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それぞれの学校で

「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 大穴ぁぁぁぁぁ!!」

優が教室に入ると馬鹿が一人大騒ぎしている。

「ちくしょうぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

「何で今日に限って御出勤なんだよぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「昼飯が! 昼飯がぁぁぁぁぁぁぁ!!」

否、何名か馬鹿がいる。

叫んでいる内容からおそらく優が出席するかどうかで賭けをしていたのだろう。

途端に優は半眼になって馬鹿どもを罵る。

「何回も言うが俺をネタに賭場を開くのは止めろ! こっちのやる気が失せる!」

だが、大勝ちしたらしき馬鹿には聞こえていない。

「ぐへへへへ、そうかっぱぎ・・・!」

優は拳骨を握り馬鹿の頭に振り下ろした。



「天川・・・。すまんがちょっといいか?」

朝のホームルーム終了後に担任教師に呼ばれて優は廊下に出る。

「お前の家庭事情は分かってるんだが出席日数の関係で・・・。」

「補習ですね。」

「簡単に言うけどお前、また、完徹で御出勤しとるだろう・・・? 何なら他の先生たちに言って午前中は保健室使って休んでてもいいぞ?」

「大丈夫ッスヨ。完徹で学校来るのは初めてじゃないし。ホントに辛くなったら無理せずちゃんと言いますんで。」

「そうは言うがなぁ・・・。」

「授業中、俺が船を漕いだ事ありましたか?」

「・・・分かったよ。だが、本当に無理だけはするなよ?」

「分かりました。」

「・・・じゃあ、戻っていいぞ。」

こうして優の学校生活は始まる。



一方その頃一之瀬麗華は人だかりの中心にいた。

「一之瀬さん! もう大丈夫なの!?」

「麗華様、今日はお休みになられた方が・・・。」

「麗華さん! 何かあったら言ってくれ!」

昨日の今日で話が広まっている。

(優様のおかげで五体満足で心配される事など無いのですが・・・。)

内心ウンザリしながらそれでも顔には出さずに皆を落ち着かせる。

「御心配して頂きありがとうございます。私は大丈夫です。その証拠にこうして登校しております。兎に角、間もなくホームルームが始まります。皆さんお戻りください。」

優雅に一礼し凛とした声音で皆に呼びかける。

表情一つ変えることなく言い放つ麗華に集まった者達は三々五々帰っていく。

詳しい事を説明する事も出来る。

だが、麗華はしない。

あの優しい魔神をそっとしておきたいという気持ちと自分だけが知っておきたいという気持ちが働いたからだ。



「一之瀬さん。いいかしら?」

麗華を担任教諭が呼び寄せる。

二人っきりで廊下に出ると担任教諭は麗華を思い帰宅を進める。

「昨日の今日です。休んだ方がいいと思いますが?」

「昨夜は食事も睡眠もキチンと取りましたので大丈夫です。」

「・・・そうは言うけど・・・。」

「本当に無理なら先生に御報告します。」

「・・・ふぅ、無理だけはしないで下さいね?」

「はい。」

一之瀬麗華の一日が始まる。



昼休みになり優は学食に足を運んだ。

そこでクラスメイトの女子と会う。

「おりょ? 優ッチ、今日は購買じゃなくて学食?」

「あぁ、カレー食べてぇ・・・。」

「優ッチ、一人暮らしだもんねぇ。作ってくれる彼女とかいないの?」

一瞬、麗華の姿が浮かぶがすぐに振り払う。

「いねぇし、作るつもりもねぇ。」

「寂しい青春だねぇ。」

「ほっとけ!」



昼休みとなると麗華の元には先輩後輩かかわらず人が押し寄せる。

「麗華様! お食事を一緒にしてもよろしいですか?」

「一之瀬様、是非お食事を一緒にさせてください!」

「麗華さん、お昼どうかしら?」

「私は構いませんが・・・。」

いつもと同じ光景なのにいつもとは違う。

(静かな食事をしたい・・・。優様としたような・・・。)

氷結の女王は静けさを求めていた。



「天川・・・。お前、授業は真面目なんだから仕事とアルバイト減らせ!」

「先生。飯屋のアルバイトは賄い目当てだから嫌です。仕事の方は選り好みしてるんで少ないッス。ここ数日はしょうがなく請け負っただけでやる気は無かったんすよ? ただ、気分が乗っちまったから勢いで・・・。」

「はぁ、狩人なんて仕事本来なら辞めさせたいんだが・・・。」

「無理ッスヨ。Sクラスの狩人なんて世界でも数えるほどしかいないんだから。」

「・・・とりあえず、補習始めるぞ。成績優秀なお前に必要なのは出席日数だけだからな。」

「お願いします。」



「麗華様! サロンへ行きませんか?」

「今日は新作のお菓子が入荷したとの事ですし行きましょう!」

「お菓子だけではなくお茶もいい品が入ったと聞いておりますわ!」

「・・・・・・。」

麗華の心は非常に冷め切っていた。

日々の糧を得ようとする浮浪児たちの姿が脳裏に浮かぶ。

(あの子たちは学校すら行く事が出来ないのに私達は・・・。)

比べてしまう。

裕福な自分達と浮浪児たちを。

麗華は無性に優しい魔神に会いたくなった。

「申し訳ございません。やはり気分が優れないので今日は帰宅します。」



(やっと終わった・・・。)

朝のバカ騒ぎから始まり、昼休みにからかわれて、放課後は補習と言ういつも通りの一日を終えた。

(風呂入って飯食ってさっさと寝よう。)

そうして帰宅すると自宅の玄関に人影を見つける。



(早くお会いしたい・・・。)

朝一番の周囲の心配から始まり、いつもとは違ういつも通りの昼休みを過ごし、いつも行くサロンを避けて帰路に着いた。

(優様とお話ししたい・・・。)

迎えの車を帰して一人お化け町を歩く。

いつの間にか天川家の前にいた。



「・・・何してんだ? お前・・・。」

優は罵ることなく呆然と一之瀬麗華を眺める。

口はポカンと開けたままである。

今朝、見送った人物がどういう訳か自宅の前にいる。

優の姿を見つけた麗華は突然泣き始める。

(俺にどうしろってんだ!)

天川優の一日はどうやらまだ終わらない。

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