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明日のうたが聴こえる  作者: 人見くぐい
第一章 幼稚園編
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05 ピアノ

思ったより立派なピアノだったので、なんだか近づけなかった。


そんな私達を気にすることなく「昨日練習した曲」と言うと、レイ君はピアノに向って弾き始めた。初めて聴くけど、明るくて楽しくなるような曲。レイ君の指は早く動くけど、全然つっかえることがない。


曲が終わり、私もカズ君もいっぱい拍手をした。


「すごーい。上手だね」


「かっこいいなぁ」


二人で次々とほめると、レイ君は顔を赤くする。


「もっと聴いてみたい」


私がお願いしたら、レイ君はうなずいてまたピアノを弾き始めた。


今度はちょっと寂しい感じの曲だったけど、きれいな曲だ。


この後ももっと聴きたくなって、もう一曲、もう一曲……とレイ君へお願いが続いた。


レイ君がすごいのは習った曲だけでなく、私達でも知ってる曲……テレビアニメや『なんとかレンジャー』の曲まで弾けるのだ。しかもそれらは習った訳ではなく、聴いて覚えたのだと言う。


もう、ただ感心するしかなかった。





しばらく幼稚園に通っているとカズ君はだんだんこわくなくなってきたようで、私が手をつながなくてもお部屋に行けるようになった。


そして幼稚園から帰ると、よく二人でレイ君のピアノを聴きに行く。レイ君は「練習で弾くより楽しい」と言って、いつもたくさん弾いてくれた。


そのうちピアノだけじゃなくて、一緒に外でも遊ぶようになった。


タカ兄ちゃんは小学校の友達とばかり遊んでいたけど、私のお兄ちゃんは小学2年生でも『めんどうみがいい』ので、ジャングル探検に連れていってくれた。レイ君は「面白い」って喜んでくれたのに、あとでお母さんにすごく怒られたけど。



「うわぁ、気持ちいいなぁ」


レイ君が木登りをしたことがないというので、私が教えたのだ。お家の二階より低いけど、初めて登る木にレイ君は目をキラキラさせている。下からカズ君が手を振っているのを見て、嬉しそうに笑っていた。


だけど木登りも、あとでお母さんに怒られた。





夏に海で遊んだときは、カズ君は真っ黒になったのに、私は少し焼けただけ。レイ君は赤くなったあとすぐ白く戻ってしまった。


特にレイ君はカズ君の皮がむけてきたウデを見てうらやましがっていた。


そうやってずっと元気だったレイ君だけど冬にぜん息の病気がでてきてしまい、しばらく幼稚園もピアノもお休みする。やっとお医者さんが「お友達と会っていい」と言ったときは、お正月が過ぎていた。





春になって年長さんになると、三人はみんなちがう組になってしまった。でも行きと帰りは一緒だし、帰ってから遊んだりピアノを聴いたりするのはずっと同じだ。


他に遊ぶ友達はできたけど、レイ君のピアノを聴くのは私達だけだった。聴いていてとても楽しいのに。



カズ君が私と同じところまで木に登れるようになったのは、小学校にあがる少し前だ。レイ君ももうすぐ追いつくと思う。


色は違うけど同じ形のランドセルを前に、みんなで小学校をとても楽しみにしていた。

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