04 レイ君のお家
レイ君は幼稚園をイヤだとは思ってないけど他にお話しする友達がいなかったし、カズ君は幼稚園を怖がっている。だからお部屋でも三人で一緒にいた。
今日は先生のオルガンで歌を歌ったりお絵描きをしていたりしたら、すぐお帰りの時間になった。
「もう終わり?」って先生に聞いたら、「来週からはお弁当だから、長くいられるよ」と笑っていた。
「今日遊ぼうよ」
帰り道、私はレイ君にお外で遊ばないか聞いてみた。レイ君は驚いた顔をした後、すぐ頭を横に振る。
「今日はピアノだから、ダメ」
「ピアノ?!」
男の子でピアノを習っているのは聞いたことがなくて、驚いてしまった。
「二人の都合もあるでしょうけど、明日なら家に来ていただいたらどうかしら」
おばあちゃんがそう言ってくれた。それを聞いたお母さん達は少し慌てていたようだけど、おばあちゃんは全然気にしてなかった。
「じゃあ明日、遊ぼうね」
「うん」
そう言うと、レイ君は初めて嬉しそうに笑った。
レイ君のお家は古くからあるお米屋さんで、町では一番大きい店だ……と、後でお母さんが言っていた。
約束した日にカズ君と二人でレイ君のお家へ行くと、お父さんとおばあちゃん以外に何人も働いている人がいた。
「こんにちは」
「やあ、いらっしゃい。こっちからどうぞ」
お店にいたレイ君のお父さんを見つけたら、お店とは別に家の玄関があって、そこへ案内してくれた。
「レイ、ミキちゃんとカズ君だよ」
お父さんが奥の方へ呼びかけると、レイ君が出て来た。
「こっちだよ」
「おじゃまします」
お台所にはおばあちゃんがいて、「おやつを用意してあるから、後で持っていくね」と言ってくれた。
レイ君はその後もどんどん奥へと進んで、長い廊下を渡るとやっと立ち止まった。
「ここ……『はなれ』で遊ぼう」
振り向いたレイ君が言う。ドアを開けるとやっぱり広いお部屋で、ソファーとテーブルにテレビや本棚もあって、戸棚にはおもちゃがいっぱい入っていた。
「いつもここで遊ぶの?」
私はワクワクしながら周りを見て聞いた。
「うん」
「すごいねぇ、いいなぁ」
カズ君も羨ましそうに言ったけど、レイ君は「べつに」と答えた。
「おもちゃも本もいっぱいあるのに?」
つまらなそうに言うレイ君が不思議で、私はまた聞く。
「ひとりで遊んでもつまらないから」
そう言って下を向くレイ君を見て、「悪いことを聞いちゃったな」と思った。
「でもさ、今日はみんなで遊ぶからいいでしょ?」
カズ君が明るく言うと、レイ君は顔をあげて少し笑った。
(カズ君が良いこと言ってくれて、よかった)
私がホッとしていると、さっそく色々見ていたカズ君は入口とは別のドアを指差した。
「あっちには何があるの?」
「ピアノ」
おもちゃも楽しいけど、ピアノのほうが面白そうだった。
「ピアノ、見たいな」
「僕も」
二人が言うと、レイ君は黙ってドアを開けた。そこには幼稚園のおゆうぎ室にあったのと同じ、とても大きなピアノがあった。




