34 修学旅行(12)
地元の駅に到着後、解散式をした。
短いようで長かった2泊3日の修学旅行はこれで終わりだ。
待合室のベンチに座っていると、やがてロータリーに『ますや商店』のライトバンが入って来るのが見えた。
「来たみたいだ」
カズ君が一番に気付く。
「ちょっと待って」
レイ君が私達を呼び止めた。
「どうしたの?」
「旅行中に具合が悪くなった事、家族には黙っていてくれないか」
カズ君と私はすぐに返事が出来なかった。でも家族に言ったら、それこそレイ君は音楽を取り上げられてしまうかも知れない。
「分かったよ。でもね、これからは気をつけてよ?」
先にカズ君が答えた。
「うん」
レイ君は素直に返事をしたけど守れるのだろうか。レイ君のお父さんが車から降りて、辺りを見渡している。
「行こう」
レイ君はカバンを持ち、さっさと車に行ってしまった。
「大丈夫かなぁ」
私はため息をつく。
「どうかな」
カズ君は笑いながら私のカバンも持って立ち上がった。
「体調はどう?美紀ちゃん」
私達がお礼を言う前に、まずレイ君のお父さんがそう言った。
「大丈夫です、けど……?」
「レイから『美紀ちゃんの具合が悪い、許可は取ったから迎えに来て欲しい』って電話があった時は心配したよ」
助手席のレイ君は知らん顔で窓の外を眺めている。
自分の具合が悪かった事を言えないからって、私をダシにしたな。軽く睨んでみたものの、こっちを見ようともしないので全く通じてないだろう。
「ありがとうございます。ちょっと疲れが出ちゃったかな」
「それならいいんだけど。でも疲れたってのは、レイが何か迷惑かけたからじゃないだろうね?」
その時正直者のカズ君にはぎこちない笑顔が張り付いていた。
家に着くとレイ君のお父さんは車からカバンを降ろした後、更に家まで運んでくれた。
私のお母さんがご挨拶をしている間、助手席に残ったままのレイ君に声を掛ける。
「私の具合が悪いって言うのは大げさだけど、送ってくれてありがとう」
「そう見えたんだから仕方ないだろ。うつってたら悪いと思って」
一応心配してくれたらしい。
「大丈夫。念ために早く休むけど、レイ君も早く寝てよ」
「分かってる」
レイ君の返事は素っ気無くて少し語気は強い。心配なんだけど、しつこかったかな。
「レイ君」
カズ君が呼びかけると、レイ君はハッとした後に少しバツが悪そうな顔をした。
「……美紀ちゃんも、ゆっくり休んでね。また来週」
「ああ、また来週」
車は軽くクラクションを鳴らし出て行った。
「私、お節介過ぎたかな」
「お母さんみたいで、いいんじゃない?」
カズ君はいたずらっぽく笑いながら言った。
夜、自分の部屋でレイ君から貰った鈴を取り出す。
最後までレイ君に振り回された気がするけど、このカワイイ鈴とその時の笑顔に免じて許しましょうか。
鈴を小さな小銭入れ用の財布に取り付け学生カバンに戻す。
そのまま布団に入ると昨日とは違い、あっという間に眠ってしまった。




