33 修学旅行(11)
翌日、朝食に顔を見せなかったレイ君だけど集合場所には現れた。
顔色は昨日に比べるとだいぶ良くて、足どりもしっかりしている。どうやら熱は下がったようだ。色々な人から声を掛けられていた。
最終日は午前中に嵐山方面へ行き、お昼過ぎには新幹線に乗って帰宅、という日程だ。
嵐山に到着すると渡月橋とその付近を散策する。クラス別の行動とはいえ、なんとなく班の人同士で固まっていた。
その時ようやくレイ君と話しをする機会があった。どんな風に話しかけたら良いのか考えたけど、結局普段どおりに声を掛けた。
「調子はどう?」
「お蔭様で」
レイ君はすました顔で答える。
「よかった」
その調子がいつものレイ君だったので、私はホッとして笑顔になった。
「…………」
眩しそうに目を細めて私を見ていたレイ君は「もう平気だから」と言って、さっさと行ってしまった。
こんな態度もいつも通りといえばそうなのだけど、拍子抜けしてしまう。
帰りの新幹線の中、早く流れていく景色を見ながら私はボンヤリしていた。
実は今日、私が寝不足だった。色々考えてしまい眠れなくなってしまったのだ。
今朝は一番元気が無くてみんなに心配されてしまった。眠いだけなので午前中は普通に行動していたけど、ここにきて一気に疲れが出てしまったようだ。
お喋りをしたいみんなに悪いので、車両の一番端にある座席にかえてもらい一人静かにしていた。
うとうととしかけた頃、隣の空席に誰か来たようだった。
薄目を開けて見るとレイ君が座っていた。
「どうしたの? また具合悪いの?」
私が聞くとレイ君はムスッとして「こっちが聞きたい」と答えた。
「具合が悪いってほどじゃないよ。ちょっと疲れただけ」
「ふーん」
そう言ってチラッと周りを見渡し、小声になって続けた。
「地元の駅に父さんが車で迎えに来る。カズ君と一緒に乗って帰ろう」
駅周辺の混雑を避けるため、車の送迎は自粛のはずなのに。
「そんな、悪いよ」
「俺だって調子が完璧じゃないから京都を出る前に電話しておいた。ついでだ」
自分の言いたいことだけ言うと、レイ君はさっと立ち上がる。
「寝てたところに起こして悪かった」と続けて車両を出ていった。
勝手に話しを決められてしまったけど、確かに疲れているので今回はありがたくその話に乗ろうか。
私はため息をつくと窓にもたれ掛かり、お礼を言わなければ……と考えつつ、また眠りについた。
途中で出た軽食にも手を着けず、気がついたのは『もうすぐ到着するから』と起こされた時だ。
だいぶ頭も身体も軽くなっていたので、迎えに来てもらっていいものか考える。
しかしレイ君のお父さんが来るのは確実だから、断るのはかえって悪いだろう……と都合よく思い直した。
東京駅から地元の駅までは、またみんなとお喋りも出来て修学旅行の最後を満喫することが出来た。
この時に宮城君は写真の焼き増しを約束してくれた。祇園から先がとても楽しみだ。




