03 レイ君
「こんにちは」
ちょっと太めでクマさんみたいなその子のお父さんが、笑いながら声をかけてきた。
「こんにちは!」
私は元気よく挨拶をする。カズ君もあわてて同じく挨拶をした。
「元気いいねぇ。レイもそうなればいいけど」
その子のお父さんは目を細めて言う。
「実はね、二人の家とウチはすぐ近くなんだよ。でもこの子は身体が弱くて今まで外で遊べなかったから友達もいなくて……よかったら一緒に帰ってくれないかな」
「うん、いいよ」
その子はお父さんのズボンのかげに隠れてしまっていて私達とお話しをしそうになかったけど、一緒に帰ることになった。
レイ君は『ぜんそく』という病気になっていて、よく入院するらしい。だから外で遊ぶのもほとんどなくて、会ったことがなかったのだ。
レイ君は始めのうち、私達が話しかけてもなかなか声が聞けなかった。
でもレイ君のお父さんや私達のお母さんの話しかけもあって、少しずつだけど返事が帰ってくるようになった。
「ますやしょうてん」
お家はお店をしているというので名前を聞くと、レイ君はそう答えた。
「なに屋さんなの?」
「お米屋」
「お米屋さん?」
家の近くにお米屋さんなんてあったかなぁ……と思っていたら、お父さんが答えてくれた。
「ウチは小売りもしてるけど卸売が主で、って難しいね。そうだな、お店屋さんのお店なんだ」
その説明も難しかったけど、レイ君のお家の前まで来たら思い出した。
三階建ての四角い建物はこの辺ではかなり大きくて、たしかに見た目はお米屋さんという感じじゃない。さらに奥にもお米用の倉庫があるという。
「明日から幼稚園へ一緒に行ってくれないかなぁ」
レイ君のお父さんは、もう一つ私達にそうお願いした。
「はーい」
「…………」
私もカズ君も全然イヤじゃなかったけど、レイ君は何も言わなかった。
本当に一緒でいいのか心配になる。
でも「また明日」「バイバイ」と二人で手を振るったら、小さく手を降ってくれたので少しホッとした。
次の日、お店の前にはレイ君とおばあちゃんがいた。
おばあちゃんは昨日のお父さんにくらべたら、ウサギさんのように小さかった。
「おはようございます!」
私とカズ君は一緒に挨拶をする。
「おはようございます」
おばあちゃんは丁寧にお辞儀をしながら挨拶をしてくれた。
「まぁまぁ、レイがお話ししてくれたとおり元気なお友達ね。レイも元気にご挨拶なさい」
そう言ってレイ君をそっと前に押し出した。
「おはよう……ございます」
昨日よりか大きい声かな。
「この子の母親は今留守にしていて……送り迎えは私がしますのよ。これからよろしくね」
おばあちゃんはそう言って笑っていたけど、レイ君はちょっと寂しそうな顔をしていた。
それでも歩き始めると、レイ君は昨日よりかお話しをするようになっていた。カズ君とは同じテレビ番組を見ていたようで、その話を楽しそうにしている。
幼稚園に着くとカズ君の足が止まったけど、私が手をつないであげるとついてきた。