19 新しい音楽(1)
テープが終わるまで約45分。
カズ君は初め驚いていたけど段々目が輝きだし、最後は身を乗り出すように聴いていた。
レイ君はイスに腰掛けたまま全く反応がない。やっぱりクラシックを勉強するレイ君にとって、この音楽はつまらなかったのだろうか。
「すごい! この音楽なんていうの?」
カズ君は音楽を聴いていた時の興奮が冷めないようだ。
「ハードロックとかへヴィメタルだとか聞いたよ」
「そうなんだ。このテープを家でも聞きたいんだけど貸してくれるかな」
「うん、お兄ちゃんがダビングしてくれるよ」
私はカズ君がこんなに興味を持つ事が意外だった。
「……僕も」
今までずっと黙っていたレイ君が突然呟いた。
「このテープ欲しい」
レイ君は反応がないのではなく呆然としていたようだ。
「気に入ってくれたの?」
私はまだちょっと信じられなくて、おそるおそる聞く。
「最高。カッコイイ」
レイ君はそう言って笑う。
久しぶりに見た心からの笑顔だった。
この日から、はなれとレイ君の様子が急激に変わる。
クラッシックだけでなく、ロックやメタルのテープやレコードが増えていった。
夏には本物のエレキギターがあった。教則本を見たり楽器屋の店員さんに聞いたりしながら練習し、聴きに行く度に曲らしくなっていったのには驚く。
そしてついに、あるロックバンドの来日公演へ行った。そこですっかりドラムに目覚め、クリスマスにドラムセットを買ってもらったのだ。
防音設備もしっかり整え、ずっと練習している。
「ピアノは大丈夫なの?」
「もちろん」
コンクールはまた出場が決まっていたのだが、少し心配になった。
「ドラムは気分転換になる」
「たしかに叩けると気分良さそうね」
しかし私も少し教わったけど、レイ君曰く『楽器を扱う才能は無い』らしい。
「ドラムは力が要るから体力が付くような気がする」
「ドラム健康法? 面白いね」
私はそう言って笑いながら、レイ君に少し元気が出てきたことを喜んでいた。
「ここまで弾けるようになったよ」
「合わせてみよう」
それぞれ黙々と練習していたが、二人で演奏を始めた。
レイ君は色々楽器があるけどカズ君はさすがに買ってもらえず、普段は親戚から貰ったフォークギターで練習している。そしてはなれに来ると、レイ君のギターを借りて弾く。
初めのうちはテンポも遅いし間違えるけど、次第と曲になっていった。
「ベース欲しいね」
カズ君が演奏を終えると言った。学校には他にロックを聴く人も、演奏をする人もいなかったのだ。
「私、無理だよ」
「期待してないから」
私はレイ君の言葉に「ゴメンね、楽器オンチで」とむくれる。
「まあまあ。中学校にはロック好きな人がいるよ」
中学校は私達が通う小学校以外に、あと2つの小学校が集まる。
「中学でバンド組めるかな」
この頃カズ君はよくそう言っていた。少年野球チームは12月で卒団し、時間があるとギターを弾いてばかりだ。
中学ではバンドと野球を両立させる、と張り切っていた。




