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教会のシスターですが何か?  作者: おきゆむ
第五章 推しのためならたとえ火の中水の中精神のシスターですが何か?
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先客

「ここが温泉の入り口となります。ごゆっくりお寛ぎ下さい。あと、脱衣所で衣服を籠にお入れ頂ければ、入浴中の間に綺麗にして戻しておきますので、お着替えの方は不用です」


ラストアが説明したあとで丁寧に頭を下げた。


本当によく躾が行き届いている。


…が、あまりきちんとしたおもてなしは慣れたものではない。


「ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えてゆっくりさせて貰います」


私がやや困り顔でそう答えるとラストアが頭をパッと上げ、踵を返して廊下を速やかに歩いて私たちの元から去っていく。


その後ろ姿を見ながら、そういや部屋から着替えを持ってくるのを忘れていたなとベール越しから頭を掻いた。


とはいえ、突発的に魔界へ来たアンネは元から着替えなど持ち合わせてはいない。


なので、修道服や下着を入浴している間に綺麗にしてくれるのは非常に有難いことだ。


きっと、衣服の汚れや匂いを浄化する魔法をかけてくれるに違いない。


私もそんな魔法を習得しようとした時期もあったが、相性が合わなかったみたいで早々に諦めた…


どうやら性格上、私には基本的に攻撃系魔法が合うようだ。


などと、温泉の脱衣所の入り口で暫し考えていると、私の袖をぐいっとアンネが引っ張る。


「何しているんですか?早く中に入りましょう?」


アンネがそう言って、脱衣所の入り口には似つかわしくないくらい豪華に装飾された重い扉を押し開く。


すると、赤い絨毯が敷かれた細く真っ直ぐの道が私たちを誘うように続いていた。


その絨毯の上を歩いていくと、すぐに広間に出る。


そこは脱衣所と呼ばれる場所である筈だが、とてもそれが認識出来ないほど広くて、ここで舞踏会が出来るんじゃない?というほどの豪華な内装だ。


とても温泉の脱衣所とは思えない。


とぽかーんと口を開けていると、隣でアンネも同じように口を開けていた。


思わず笑ってしまう。


「…アンネ。口がポカンと空いてるよ?」


「…エメさんこそ空いてましたよ。私を笑う権利なんてありません」


とやや恥ずかしげに顔を赤らめた。


…やっぱり推しは愛らしいな。


広間の中央に脱いだ服を入れるであろう棚がいくつか並んでいた。


ただ、棚が黄金に輝いているので、かなりの違和感がある。


棚には籠が置いてあり、その中に入れとけば入浴中に綺麗にしておいてくれるのだろう。


「…何で棚を金ピカにしたのかね。オーリュウ様の趣味か?」


と首を傾げる。


「…まあ、立場上見た目も派手にしないと駄目なんじゃないですか?」


アンネの見立てになるほどと頷く。


「さあ、早く服を脱いで湯に浸かりましょう?」


アンネがそう言って、私の隣で修道服を脱ぎ始めた。


その脱衣姿につい見惚れてしまう。


アンネが修道服を脱ぎ、続いて下着を脱ぐと、か弱い白い肌が顕になる。


私が男なら思わず抱きついてしまっていただろう。


「…あんまりじっーと見ないでください。見ていないでエメさんも早く脱いでくださいよ…」


大事な箇所を手で隠しながらアンネが言った。


ああ…控えめに言ってサイコーだ。


「ごめんごめん…すぐに脱ぐね」


と言って、パパッと修道服を脱いですっぽんぽんへとなる。


すると今度はアンネが私の身体を凝視した。


「えっ…何?」


思わず、大事な箇所を手で覆う。


「傷が…もしかして、この前の出張の時に出来たものですか?」


アンネが私の身体を見ながら訊いた。


アンネの視線を追うと、私の身体のあちこちに傷があるのに気づく。


…いつものことだから気にしてなかったな。


おそらくプライベートホールで苦戦した時に出来た傷だろう。


「多分、そうかな?でも、時が経てば自ずと薄くなって消えるから大丈夫」


私たちセブンシスターズに与えられしロザリオには、そういう力も備わっている。


なので、すっぽんぽんの今でもロザリオは首に掛けたままだ。


「…あまり無理はしないでくださいね。エメさんが強いのは知っています。でも、無敵というわけではないのでしょう?なら、無茶だけはして欲しくないんです。だって…エメさんに何かあったら私…私…」


アンネが大事な箇所を押さえていた手を頬へと移し、両頬に手を当てながら私を心配した。


アンネ…


思わず鼻でため息をついて、アンネの頭にポンと右手を置いた。


「分かったよアンネ。心配させてごめんよ…さあ、早く温泉に浸かろう。温泉の湯はこの傷にもよく効くだろうから」


アンネの目を見て笑みを浮かべた。


「はい」


アンネが嬉しそうに返事をする。


そして、二人で温泉へと向かう。


だだっ広い脱衣所と温泉の仕切りにはクリスタルガラスが使われており、そのガラスの一部が扉となっていた。


…どんだけ豪華なんだよ。


と心中でツッコんで扉を開けた。


すると視界が湯煙で覆われる。


やがて湯煙が薄れて、だだっ広い露天風呂が顕になった。


そして、その露天風呂真ん中に浸かる影が目に留まる。


どうやら、先客のようだ。


その影をじっと見ていると、その影がこちらに気がついて振り返る。


目と目が合った。


綺麗なエメラルドグリーンの長い髪をした耳が尖った魔族の女性。


魔族の種類ではオーリュウに近い見た目か…?


その主が湯に浸かりながら、ゆっくりと身体をこちらに向ける。


そして、私に笑みを浮かべた。

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