表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
6/6

第6話:クソ、賑やかになってんじゃね~よ。

((それなら、まずは肥料を作ってみるか。う~ん、有機物…あっ、その前に、ここって何を栽培してるんだ?))


ジャスミンが、ハッとした顔でヒミコに視線を送る。


「ヒミコちゃん、ここでは、トマートン、キャベーツン、ブッコロリーンとか、そのままで食べれたり、調理が簡単だったりするものを中心に栽培しているよ」


((あっ、う~ん、トマートン?キャベーツン?ブッコロリーン?って…))


「あっ、そっか、うん、そうだね。ヒミコちゃん知らないかもしれないものね。トマートンは赤い実でそのままでも食べられるよ。キャベーツンは葉が重なって丸くなる野菜ね。ブッコロリーンは、一見すると樹木みたい見える野菜なんだよ。これで、なんとなくでも、イメージできるかな?」


((ふむふむ…トマートンは赤い実か、トゥルメクみたいなもんかな。キャベーツンは、葉が重なる野菜だから、キャラッセオと同じかもな。ブッコロリーンは、樹木のような見た目だと、カリーンフラーンと似てるのかな。固有名称が違うってのは驚きだな。クソ、言語翻訳とか言語理解って、その辺は変換されね~のかよっ。ったく、あの野郎、役立たね~な。ちっ))


少し心配顔のジャスミンが、ヒミコに近づき肩を優しく抱き寄せた。


「色々と勝手が違うことも多いと思うけど、わたし全力でサポートするから、何でも言ってね。お姉ちゃんなんだから、たくさん頼ってよ、ヒミコちゃん」


《ジャスミン、ホントにいい人》荒れ果てた大地に降り注ぐ、恵みの雨のような、《クソ、嬉しいじゃね~か》ジャスミンの優しさを感じた。


((あ、うん、頼りにしてるぜ、お、お姉ちゃんジャスミン))


まだまだ、素直に感情を出すことは難しいけど…

《ちっ、心開きかけてんじゃね~よ…でも、ジャスミンなら…》もしかしたら、開ける日がくるのかも。


((栽培してるものを考えると、有機物は…う~ん、あれか。窒素含有量多めで、バランスも悪くないな。あとは、落ち葉か。))


ジャスミンは、顎に手を当てながら考え込むような仕草をしている。


「ヒミコちゃん、あれって…なんだろ?」


((あれってのは、鶏の排泄物。わかりやすく言えば…))


ジャスミンは、ヒミコの口に人差し指をそっと当てる。

《お姉ちゃん的には、NGワードなんだな》それ以上は言わなくてもいい、

いや、それ以上は言わせたくないようだった。


グリコールが、ジャスミンに手を上げて合図を送り、その場を離れる。


((グリコール38歳は、どこ行ったんだ?))


「うん、グリコールが様。違うな、グリコールさんは、ヒミコちゃんが必要なあれを取りに行ったんだよ」


((ちっ、やるじゃね~か、グリコール38歳。))


「うんうん、グリコールさんも、とっても仲間想いのいい人なんだよ」


((クソ、薄々感づいていたけど…いい奴だったか、グリコール38歳め))


「悪そうな人なら、わたしも補佐官として、ここには留まってないかな」


((だろうな、悪そうな奴…お、お姉ちゃんに、危害を加える奴は、わたしが干物にしてやる))


「ありがとう、ヒミコちゃん。その気持ちだけで、お姉ちゃん嬉しいよ」


ジャスミンは、ヒミコを優しく抱きしめる。


《なんだろ…こんなの久しぶりだな~》もし、お姉ちゃんが居たとしたら、

こんな感じだったの?

《わたしらしくないかな?わたしらしいって…なに?》

でも、素直に甘えたい気持ちも同時にあった。


ゴロゴロゴロ——

乾いた土を噛み、荒地を蹴るような音が響く。


ジャスミンと顔を見合わせ、音のする方へ視線を投げた。

グリコールとモヒカントゲトゲ野郎が、車輪のついた荷台を引っ張りながら近づいてくる。


((まだいるんだ、モヒカントゲトゲ野郎…))


「男子って、好きだよね。強そうな見た目の感じかな。うふふ」


「ヒミコちゃん、お待たせ。例のあれを持ってきたよ」


汗だくのグリコールとモヒカントゲトゲ野郎。


「ういっす」


モヒカントゲトゲ野郎は、小さく手を挙げた。


((ちっ、やるじゃね~か、グリコール38歳。あと、トゲモヒ))


「ヒミコちゃん、わたしの名前をちゃんと覚えてくれたのは嬉しいけど、名前と年齢はセットにしないで欲しいな。もし、よければだけどね。あはは」


((あっ、うん、わかった。グリコール3…グリコール))


「あはは、今言いかけたね。38歳を」


ジャスミンもグリコールも、お腹を抱えて笑っている。

その横で、モヒカントゲトゲ野郎は、状況が見えずキョトンとしていた。


「ヒミコちゃん、よかったら、イーマンにも契約してくれるかな?」


((イーマン?誰?))


グリコールは、モヒカントゲトゲ野郎の肩をポンポンと軽く叩いた。


((そいつがイーマンか、トゲモヒ5号。契約))


モヒカントゲトゲ野郎改めイーマンの頭上に『ヤマダヒミコ』と表示。


((トゲモヒ5号の契約完了だぜ、グリコール3…))


イーマンは、目を見開き驚きを隠せなかった。


「すっげ、すっげ~す。頭の中に声が聞こえるっす」


((あぁ~、こいつあれな感じだな。トゲモヒ5号))


「トゲモヒ?5号?って、おいらのことっすか?」


((ちっ、お前以外に誰がいるんだよ))


「うひゃ、うひゃ、そ~っすね。おいらしかいね~っすね。うひゃ、うひゃ」


((クソ、笑い方独特過ぎんだろ))


「グリコールさまにきいていたとおり、口わるいっすね~。ヒミコ姐さん」


「イーマンには、あれを運んでいる途中に、ヒミコちゃんの事前情報を共有しておいたんだ。コミュニケーションは円滑にしないとだからね」


((ふ~ん、やり手だなグリコール))


「うひゃ、うひゃ、姐さん。おいらもちからになるっす」


((ふ、不安しかない…))


「うふふ、ヒミコちゃん、イーマンは素直で働き者なんだよ。物覚えとかはね…うん、少しね…あれなところはあるけど。でも、大丈夫」


「おいらもやくにたちたいっす」


「イーマンもこう言ってるからさ、不安がらずに色々教えてあげてくれるとありがたいな、ヒミコちゃん」


((ちっ、ジャスミンとグリコールが、そこまで言うなら…わかった))


「うひゃ、うひゃ、姐さん。あざっす」


なぜか、飛び跳ねながら喜ぶイーマン。


((すごいな5号。クソ、感心しちまったぜ))


「姐さん、姐さん。あれ、とりのうん…」


グリコールが慌てて、イーマンの口を手で塞いだ。


「グリコール様、なんすっか?とりのう…」


また、グリコールに口を塞がれるイーマン。


「イーマン、鶏の排泄物だね」


「あちゃ~、おいらのいいかたがわるかったっすね。すんません」


((イーマン…クソっ、キャラが立ってやがる))


「キャラがたつって、なんすっか姐さん?」


((ちっ、不覚。クソ、反応するんじゃなかったぜ。つい、面白すぎて…くっ、なんたる失態。かくなる上は、腹を切るしかない))


ジャスミンが、慌ててヒミコを抱きしめる。


「ヒミコちゃん、お腹切ったらダメよ。お姉ちゃんが許さないから」


「ジャスミンさん、姐さんの姉ちゃんなんすか?おいら、よくわからね~すっけど、ふくざつなじじょうってやつがあるんすね~」


((お前の頭の中が複雑だわ。ふぉっふぉっふぉっ))


「おいらのあたまふくざつなんすね~。ほめられてんのかな。なんだかうれしいっす」


((お姉ちゃん、勢いで言っただけ…ごめん…ね…なさい。5号は褒めてね~よ、ちっ))


「うんうん、わかってるよ、ヒミコちゃん」


ジャスミンの抱きしめる腕に少しだけ力が入る。


「おいら、ほめられてね~っすか。あちゃ~、ざんねんっす」


「ははは、なんだかヒミコちゃんのお陰で、賑やかになってきたな」


グリコールは目を細める。


《ちっ、賑やかって…悪くないじゃね~か》

荒れ果てた終末世界に、笑い声が響いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ