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Witch Squadron  作者: Se-34gu-0
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FILE 21

FILE 21 「再会」



とある日、イズモ以外の第一部隊は、基地の随分と奥まった隅にある、普段は誰も出入りすることのない閉ざされたハンガーへと呼び出された。


「また何かやらかして怒られるのだろうか……」


ミナは胸の前で指を組み、緊張を隠せない面持ちで重い扉の前までたどり着いた。


扉が開かれた先には、技術士官に整備長、それに数人の整備主任たちが、既に整然と待機している姿が目に入った。


ハンガーの中央には、大きな布をすっぽりとかぶせられた何かが置かれていた。


「まさか…… 誰かの誕生日のサプライズだったりするのかな?」


緊張していたせいもあり、ミナは一瞬だけそんな楽観的なことを考えた。


だが整備長が口を開くと、そんな想像は一瞬で打ち砕かれる。


「今日お前たちを呼んだのは、悪い話で済まないが――昔に開発され、たった一人の魔女しか使いこなせなかった試作品の解析、そして最終的には試運転を行ってもらうためだ」


「その “問題のユニット” というのが、これだ」


整備長が手を伸ばし、一気に布を引きはがす。


現れた姿を見た瞬間、ミナの呼吸が止まった。そこにあったのは、彼女が過去に何度もその目で見て心に焼き付けてきた、憧れ続けてきた――あの人の専用装備そのものだった。


「これは…… レイラさんの……」


「ああ。このユニットには、俺たち整備班が解析を進めても、どうしても理屈が通らない、いわゆる “ブラックボックス” と呼べる部分が多く残っている」


整備長は重い口調で続ける。


「本来なら封印したままにしておきたい代物だが、今の事態を考えるとそうも言っていられない。すまないが、お前たちにも解析作業を手伝ってもらいたい」


その言葉を聞いた途端、ミナの中に抑えきれない怒りと悲しみが込み上げた。


「解析だなんて……! まるで壊すつもりなんですか!? レイラさんの遺品を、あなたたちはそんな風に扱うんですか!!」


周りの空気が一気に張り詰める。ミナは拳を強く握り、震える声で続けた。


「もうこれ以上…… 何も言わないでください。このままだと、自分の感情が抑えられなくなりそうです……」


バレリアが一歩前に進み出る。


「レイラ…… か。私はその人の顔すら見たことがない。だけど、その人の死が踏みにじられるような扱いを受けて、ミナがこんなに傷つくのなら、私も黙ってはいられない」


セレーナ、ルナもお互い目を閉じ腕を組んだまま拒否の姿勢だ。


整備長は苦しげに眉を寄せ、静かに首を振った。


「そうじゃない……。これはレイラへの冒涜などでは断じてない。彼女が遺したこの翼に込められた意味を、今一度検証し、正しく理解するために必要な作業なんだ」


言葉を選ぶように、低く重い声で続ける。


「レイラの死に胸を痛めたのは、ミナ、お前だけじゃない。この本来試作段階にあったユニットを背負い、自分の命を顧みず、レイラはあの最後の任務へと挑んだんだ。」


そして、押し殺したような、震えを帯びた声で問いかける。


「…… 俺たちが、あの時止めようとしなかったとでも、お前は思っているのか、ミナ?」


ミナはそれまでこらえていた涙が、ついにぽろぽろと頬を伝い落ちるのを感じた。

もう我慢できないと悟り、ぐっと顔を伏せる。


「あぅ…… こんなの、元に戻せなくなっちゃうじゃないかぁ……」


震える声で、整備班の面々に問いかけるように呟いた。


すると、一人の整備士が力強く笑い飛ばすように答える。


「何を言ってるんだ。大切な人の思い出の品なんだろ? 俺たちが責任持って、最高の状態に仕上げてやるさ!」


ミナは鼻をすすり、ようやく顔を上げた。涙と鼻水でぐしゃぐしゃになったその顔で、申し訳なさそうに口を開く。


「ご、ごめんなさい……。一つだけ、わがままを言ってもいいですか?」


整備長が静かに頷くのを見て、ミナは真剣な瞳でユニットを見つめた。


「分解したり手を加えたりする前に…… 一度だけ、これを背負わせてください」


「ああ、いいぞ。背負ってみろ。これがレイラがお前たちに残してくれた翼だ」


神妙な面持ちで、ミナはゆっくりとユニットに近づいていく。


「レイラさん…… また会えましたね。初めてお会いしたとき、あなたが私を迎えに来てくださったこと、覚えていますか?」


ユニットに手を伸ばし、まるで目の前に本人がいるかのように、優しく話しかける。


「私は村では力の制御がうまくできなくて、いつも厄介者扱いでした。小さな頃から村はずれの水車小屋で、一人隠れるように暮らしていたんです。そんな私を、あなたは随分と苦労して探し出し、ここまで連れてきてくださいました」


言葉に震えが混じり、胸の奥にあった思いが次々と溢れ出す。


「あなたがいなくなった後、正直、私も後を追おうかと思うくらい、寂しくてたまりませんでした。でも、レイラさんが残してくださった教えと魔法のおかげで、私はこうしてここにいます。新しい仲間もできて、毎日がとても充実しています。大変なこともありますけど…… それでも、仲間と一緒なら頑張れますから」


ミナは目を閉じ、ユニットに額を軽くつけるようにして囁いた。


「レイラさん…… もう一度、私と一緒に飛んでくださいますよね?」


その瞬間――まだ身体に装着も配線も接続されていないはずの背部ユニットが、突然、けたたましくも力強い起動音を立て始めた。


ミナがゆっくりと背部ユニットを装着する。周囲は終始無言のままだった。


まるで「何か見てはならないものを目にしている」


「声を出してはいけない」という、重く神聖な雰囲気に包まれながら、誰もがただその光景を見つめていた。


「…… おかえり、レイラ」


ミナがそっと囁くように言葉を発した瞬間、先ほどまでけたたましく鳴り響いていた起動音は、急に静まり返った。


だが次の瞬間、計器類の針が一気に跳ね上がり、ユニットの出力は上限を超える勢いで上昇し続ける。


あっという間に規定の測定値を振り切り、モニター画面には次々と赤いエラー表示が点滅し始めた。


その様子を遠くから冷静に見守っていた技術主任が、小さく息をつきながら呟く。


「まあ、ミナ自身が思ったより暴走せずに持ちこたえているのは幸いだが…… レイラ、お前の方が今度は暴走しようってのか」


技術主任は嬉しそうに笑いながら静かにため息をついた。




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