朝の出来事(呪いについて)
「キャャァァァ~ッ!」
突然の悲鳴に目を覚まし、声のした方に走ると、
「どうした!」
イーノキ神官も走ってきた。
この先は神殿の聖水を置いてある場所だ。
着いてみるとシリルが腰を抜かして座り込んでいる。
「どうしたんですか?」
彼女は、震える指で指差した。
そこには、聖水で顔を洗うスケルトンがいた。
鏡に向かい、右を見せ、左をみせ、これでよし!よしじゃね~~!
◆◆◆◆◆
スケルトンはイーノキ神官にオクトパス・ホールドをかけられ、タップをするが許してもらえません。
「聖水でヒゲを剃り、洗顔するなど神をなめてるとしか言いようがない!」
実際、スケルトンですし、モンスターなんで関係ないでしょう。
「しかも、アンデット系のモンスターは聖水などに触れただけで溶けてしまうものなのにコイツは!コイツは!」
……先ほどカード見て確認したら、『聖属性耐性(大)』持ってたわ。どこまで規格外なん?
『ギブ!ギブ!』
イーノキ神官をタップするスケルトンの顔に落書きをする。
泥棒ヒゲでいいよね。
「イーノキ神官っ!大変だ!仲間が呪いを受けた!」
神殿の扉を押し開け入ってきた警備兵が、俺達を見て唖然とする。
「詳しい話を聞かせてくれ(キリッ!)」
技かけながらその顔は止め~い!
神殿に運び込まれた警備兵は、『堅狼』の迷宮の詰め所から戻ると倒れ込んだらしい。
「ダルクくん、よく見たまえ」
イーノキ神官が彼のケツを指差して、
「彼はイボ痔だ」
「関係ないだろ!」
何で俺が神官にツッコまなきゃならないんだ?
しかし、イーノキ神官は彼のズボンをペロンと脱がすと、
「見たまえ」
覗き込む。
「汚いケツだ」
「あんたはケツから離れろよ」
くそっ、スケルトン以上の強敵だ。
ズボンをはかせ、仰向けにすると、彼の右手をとった。
袖をまくり上げると、腕の中程に赤黒いミミズ張れのような物があった。
「私と同じMか」
「……………」
期待するような目で見るな!ツッコまんぞ!
「呪いを受けたものは体の一部にこのような痣ができる」
「あんたはそれを自分の性癖にかけたんかい!」
嬉しそうなな目をしている。
もう、ツッコまんぞ!絶対だ!
「彼も探索者なのかね?」
神殿に呼びにきた警備兵が、
「資格は持ってました。それに、小遣い稼ぎに内部にも入ってたので……」
迷宮にやはり、何かあるのか?
「お願いします。早く呪いを解いて下さい。そうしないと……」
そうしないと?
「明日休みなのに代わりに出なきゃならないじゃないですか!」
呆れてものが言えん。
「その気持ち、よく分かる」
分かっちゃだめだろ。神官。
「しかし、呪いを解くとなると明日までかかる」
「ああ~っ、なんてこった。久しぶりのデートが……Orz」
ふん、リア充爆発しろ!
そんな彼の肩を叩くスケルトン。
何をする気だ?
《チャラララ~(マジックショウなどでかかる曲)》
スケルトンがどこからともなくハンカチを取り出して、裏表を見せる。
《チャラララ~(同上)》
呪いのかかった腕にかけ、ワン、ツー、スリー!
腕からは呪いの赤黒いミミズ張れは無くなっていた。
「「「おお~っ」」」
スケルトンは得意げにハンカチをフルと俺の方へ。
頭にハンカチを乗せるとそのまま顔の前を滑らせる。
「「プッ」」
え?何があったの?
スケルトンが鏡を持ってきた。
「ナンジャコリャ~!」
トレビア~ンなヒゲ……もとい呪いのヒゲが書かれていた。
ハクション大魔王か俺は!
ヒゲ(呪い)は剃り落としました。