陰謀 その二
四十分後、比索は去った。部屋に一人残された秉核は、片手で自分に纏わりついていた機械制御者の礼服を引きちぎり、傍らのテーブルに放り投げた。
まるでゴミを捨てるように、もう二度とその礼服には目もくれなかった。
銃焰秉核はカーテンを引くと、部屋は少し暗くなった。
秉核はため息をつき、声に出さず唇を動かして呟いた。
「政治の犠牲者だ。誰かが駒として使われようとしている」
さきほど、何事も他人事といった様子の秉核の、あまりにも子供っぽい振る舞いは軽んじられていた。比索が選王の隊伍の機械武器の維持について説明するときも、まるで子供を騙すような口調だった。
だから話には穴だらけで、前後の筋に矛盾があった。
先ほどの会話で、比索が窓の外を見つめ、目の奥の後ろめたさを隠そうとしたとき、銃焰秉核は疑問を抱きつつ、大人の状態になった。オーカ帝国から運ばれてきた武器の部品が、何かの突発事態に備えるためだという説明で秉核を説得するのは難しい。むしろ、何かを企んでいるように思えた。機械整備のリストに並んだ品々は、どれも簡単には嫌疑を晴らせないものばかりだった。
秉核は推測した。
「この局面では、誰かが犠牲になるはずだ」
そして、犠牲にされる資格があるのはただ一人、蘇塔という天然ボケの青年だけだった。
銃焰秉核はまた、自分が利用される気配を感じ取っていた。
秉核は確信した。
「これほど重要な計画に、なぜオーカは自分を参加させたのか?それは、同行する全員の中で自分に最も利用価値があったからだ」
陰謀が始まってしまえば、オーカにとって銃焰秉核が波輪・カイスであるかどうかは、もはや重要ではない。
オーカ人にとっては、秉核が聖ソーク出身の若い機械制御者だと確認できれば十分である。彼らが気にするのは、秉核が機械制御者であることと、聖ソーク出身であるという二点だけである。
今、銃焰秉核がこのような事態に巻き込まれたということは、彼に完全な「投名状」を提出させ、聖ソークを曖昧な形で巻き込み、同時に重大な過ちを犯させて、二度とオーカの庇護から離れられなくすることを意味する。
秉核は窓の外を見て、ため息をついた。
「陰謀や計算尽くしは嫌いだ。約束を守らないのも嫌いだ」
二日後。
列車から一台ずつ蒸気機関が取り外されたあと、
秉核は、オーカ帝国が輸送してきた機械の種類が非常に豊富であることに気づいた。
旋盤、動力ボイラー、鍛造機、エアハンマー、そして一連の材料。機械制御者なら、これらを独力で運転することも可能だ。しかも、オーカ帝国は今回秉核の作業を補助するために十人の機械技師を派遣してきた。
その技師たちには軍隊の作風が見て取れた。彼らは軍属の機械技師だった。
仮設工場は川辺に建てられたが、秉核から見れば、少し大きめの機械加工工房にすぎなかった。工場の設置作業を機械技師たちに任せると、秉核はそっと抜け出した。
太陽がちょうど空の中央に差しかかった頃、仮設工場から六百メートル離れた大木の上で。
秉核は梢に座り、木の葉を噛みながら、川を往く白い帆を見つめていた。ぼんやりと物思いにふけっていた。風が梢を渡り、秉核も枝の揺れに合わせてゆらゆらと揺れた。まるで梢に張りついたようだった。
秉核はぼんやりとした意識からはっと我に返り、呟いた。
「さて、私は今何をすべきだろう?世界の下には狂おしいほどの激しい情熱もなく、世界の上には壮大で麗しい理想もない。実につまらない。数百年も覇権を争ってきたが、こうした華やかに見える権謀術数も、読み過ぎれば少し審美疲れしてくる。人間同士の争いなど、所詮はこんなものだ。今の人類には敵がいない。本当につまらないね」
秉核は再び超高出力の観測魔法を起動した。白金色の光の線が秉核の肌にきらめいた。
これは法脈の出力を最大まで開いたときに現れる現象だった。一見すると、退屈そうに大地を見下ろしているかのようだった。
秉核はノートを抱えたまま近隣の地形図を描き、道路や橋の精密な座標を一つひとつ書き込んでいった。そして曲がりくねった川を見つめながら、
秉核は興味深そうに川床の変遷を推し量った。集落の配置から、秉核は村の人口をあれこれと推測していた。
しかし秉核は気づいていなかった。法脈が過負荷で作動するにつれ、彼の髪の毛根には変化が現れていた。毛根には、金属光沢の目立つ銀色が浮かび上がっていた。この上位職業レベルの法脈が大量の魔力元素を消費した結果、秉核の体内に潜んでいた特徴が活性化し始めたのだ。
体内の新陳代謝に超還元現象が起こり、毛髪から金属の一部が析出していた。




