オルカを転々と その二
秉核の予想通り、こちらへ向かっていたのは確かに巡洋艦だった。
排水量は約四千トン。
すでにこの人身密航船を発見しており、三十分後に二十一ノットの高速で密航船へ向かってくる。
人身密輸の帆船では、こんな高速から到底逃げ切れない。
秉核は旗信号を読めなかった。
だが、この装甲艦が敵意を持って接近していることだけは理解できた。
巡洋艦が近づくと、秉核の注意はすぐに軍艦の構造へ向いた。
中軸線上に配置された砲塔。全金属製の艦橋。
シマウマのような縞模様の塗装が、艦体全体に施されていた。
二本の黒い煙突が艦体中央にそびえ、黒煙を噴き上げていた。
艦首の剣と盾の紋章は、この戦艦がオーカ帝国皇家海軍に属することを示していた。
秉核は地中海の地図を思い出し、オーカ帝国の戦艦がここに現れた理由をすぐに理解した。
プロイスの陸上進攻はオーカ帝国の支援を受けていた。しかしプロイスの進攻はローラン公国の干渉を受け、オーカ帝国は地中海に戦艦を派遣して、一方に肩入れするつもりらしかった。
この肩入れには「人身売買の取り締まり」という正義の理由もあった。
……
「ブーブー」という震撼させるような汽笛が装甲艦から響いた。秉核は耳を塞ぎながら、自船からわずか数十メートルしか離れていない戦艦を見た。
白い軍服を着た海軍将校たちが、装甲艦からこの帆船へ跳び移ってきた。
海軍兵が船に乗り込むと、甲板の水夫たちは次々とその場に蹲った。誰も反抗しようとしなかった。
海軍兵たちが短銃を握っていたからだ。
同じく秉核の船室でも、秉核は捜索兵に向かって両手を挙げながら、工具箱を水夫に手渡した。
この水夫は、密輸船にこんなにきちんとして清潔で、しかも見た目の良い子供がいることにひどく驚いた。
工具箱を開けた兵士は突然眉をひそめた。銃剣で挟層をこじ開けると、中から短機関銃が現れた。顔色を変え、秉核を見て尋ねる。
「これはお前の物か?」
秉核はうなずいた。「はい、これは機械工の必需品です。武器以外の私物は保持したいですし、それ相応の待遇も希望します」
……
数分後、秉核は装甲艦の船長室に連れていかれた。
艦長は秉核が到着するのを見ると、思わず口に含んでいたお茶を床に噴き出した。ナプキンで口を拭いながら言った。
「君たちが言ってた若い機械技師って、この子か?まだ成人してないだろう」
秉核は一歩前に出て軽くお辞儀をし、卑屈にもならず毅然と言った。
「尊敬する長官、私は確かに機械技師です」
艦長は秉核を見て、興味深そうに言った。
「では、この小さな機械技師閣下。あなたが人身密輸船に乗っていた理由は何ですか?」
秉核は言った。
「ある人々にとっては密航船でしょうが、私にとっては偉大な航海の小さな舟です」
艦長は笑いをこらえ、誘い込むような口調で言った。
「坊や、君はどこの家から逃げてきたんだ?教えてくれたら、家まで送ってあげよう」
秉核は口を開き、その申し出を断った。
「いや」
秉核は指を折りながら言った。
「あの、そちらでは労働者が足りないんですか?私は機械術が得意ですよ。食事と住まい付きで結構です。あ、そうそう、仕事の合間に街の風景を見て回る休暇も必要なんですけど」
その時、横にいた二等航海士が近づき、いくつか言葉を添えた。大まかに言えば、秉核が密輸船に無理やり乗り込んだという情報を艦長に伝える内容だった。
いずれも密輸船の船長が取り調べ室で吐いたものだった。
艦長は聞きながら、興味深そうな目で秉核を見つめた。そして尋ねた。
「君の名前は?」
秉核は答えた。
「秉核です。私は放浪者で、元々はウェストを目指していました。ええ、今はあなた方の船にいますから、オーカでも構いません」
艦長は秉核を数秒間見つめたが、やがてその厳しい表情を保てなくなり、笑気ガスでも吸ったかのように大笑いした。
「大陸を旅する?旅?信じられるか、こんな子供じみた言い訳があるか」
秉核は言った。
「なぜ笑われるのか理解できませんが、私の行動に間違いはないと思います」
艦長は秉核を指さして言った。
「お前が俺の息子だったら、半殺しにするところだ」
秉核は肩をすくめた。秉核は表情豊かに嘆息した。
「残念ですが、あなたは私の親族ではありません。そしてあなたの息子さんの境遇には深く同情します。そんな父親の下で暮らすとは……」
艦長は傍らの水兵に命じた。
「彼を三号禁閉室へ護送し、監視を二人付けろ。そうだな、B級待遇で(Bは将校クラスの捕虜待遇だ)」
……
二時間後。
秉核は再び艦長の指揮室へ招かれた。艦長は秉核を数十秒間じっと見つめた後、ようやく口を開いた。
「お前は淡水を分離できるんだな」
秉核は言った。
「もし船上で一定の行動の自由をいただけて、オルカのどの街が機械技師の交流に適しているか教えていただけるなら、喜んでこの艦でお役に立ちます」
「お前の家名を言え」
艦長は促した。
秉核は答えた。
「家名は栄誉を得たときにこそ語るものです。申し訳ありませんが、今は他人の庇護下にあり、栄誉ある状態ではありません」
「四日後、我々はトゥルン港に戻る。もしお前が言うように機械の才能があるなら、そこで発揮できるだろう」
艦長は告げた。
秉核は手を下ろしながら言った。
「あなたの寛大さに感謝します」
……
こうして密輸船から装甲巡洋艦へと移った。
目的地は、元々のウェストからオーカ帝国へと変わった。
紆余曲折を経て、未来はどうなるのか?秉核はそんな未知なるものへ期待を寄せていた。




