躊躇う太雲、旅立つ秉核 その二
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若き俊才として、朝廷で君主の面前で意見を述べる。
古の伝記には、青年期の本番での弁舌の巧みさや気概が多く記録されている。
だが実のところ、俊才の名声はその場の弁舌だけで得られるものではない。本番前にしっかりと準備を整えてこそ得られるものだ。
若くして上層部で頭角を現す俊才たちは、大舞台で胸の内を語る前に、誰が自分を助け、誰が反対するかを把握している。
彼らは事前に、自分を支持してくれる人々を礼儀正しく訪ね、その助力を得ておく。
いわゆる名士とは、仲間同士の支えあいによって成り立つものだ。
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視点を西大陸に戻す。
秉核は御苑家で二ヶ月を過ごした。
秉核が御苑家でただ飯を食っていたこの期間、御苑家もまた秉核の身元を調べていた。しかし綺絢が重要な情報(秉核の腕輪の情報)を隠していたため、調査は近隣の騎士の家系へ向かう。後継者が家出した例がないかを洗うだけにとどまった。
そのため、御苑家は正しい方向へ調査を進められなかった。
貴族のあいだには厳格な階級制度があり、各家はできるだけ自制を保とうとする。だから他の家の家庭事情に、余計な口を挟むことはない。
御苑家が得られた情報は、ごくわずかだった。
御苑子爵は、秉核が北の伯爵家の出であるとは夢にも思わなかった。
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十月三日、秉核は笑顔であの使用人たちと会った(釣り針爺さんを脅した連中である)。
秉核は笑顔で、一週間後に渡すと彼らに伝えた。しかし、実際は?秉核が使用人たちに返済を約束していたとき、
すでに銃焰家の基礎的な機械師法脈を、機械制御者レベルに昇格させていた。個人としての準備が整うと、秉核は御苑家から逃げ出す時が来たと感じる。秉核には、返金するつもりなど最初からなかった。立ち去る前にこの件で彼らとまた話したのは、数日後に大喜びから大悲しみへ突き落とすためだ。
今や秉核は、旅行用トランクをまとめ終えていた。
箱の最下層には、『マシンピストル』に分類できる速射銃。そのほかに機械偵察虫がいくつか。
もちろん、ごく簡素な機械師用の工具もいくつかあった。
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この大陸の歴史で、最も早く中位職業者に昇格した記録は、九歳の騎士である。一方、秉核は十二歳の機械制御者。これも大陸では極めて稀なケースだ。もし秉核が今捕まって連れ戻されれば、『秉核を厳罰に処す』と息巻いていた思芬伯爵でさえ、おそらく手を下すのが惜しくなるだろう。ただ、秉核自身も今は帰りたくないようだ。
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運のすべてが秉核の脱走を後押ししているかのようだった。秉核が準備を整え、機会を待っていた、まさにそのとき。好機が訪れた。
御苑家の荘園に、鐘の音が響き渡った。貴賓が到着した合図である。
三台の豪華な馬車が、花で飾られた大通りに入ってきた。
黄銅の車体。白磁の装飾が施された車体。――それは波輪家の馬車だった。
しかし主賓はボーロン家の者ではなく、地中海の反対側にあるローラン王国の貴族だった。
ローラン王国は聖ソーク帝国の地中海における同盟国で、両国は大陸で共通の敵と利益を有していた。五十年前、ローラン帝国と西北ヒーマン貴族連邦が戦ったとき、聖ソークはローラン帝国へ大量の武器を輸出している。そこには銃焰家が生産した制式小銃も含まれていた。
そして今、このローラン王国の客人が御苑家の領地を訪れた。
ローラン王国は一群の輓馬を買い付けたいと考えていた。聖ソーク皇室の承認のもと、ローラン王国の貴族はボーロン家の先導で御苑家を訪れた。
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豪華な馬車が階段の前に止まった。青いローブをまとったローランの貴族が、馬車から降りる。
銀の装飾が施された長靴が石段を踏み鳴らし、澄んだ音を響かせた。
愈泉、ダント。それが今回、ローラン王国から来た訪問者の名だった。
彼はこの屋敷に来る前に馬場を視察し、御園家が育てた軍馬にいたく満足していた。
二千頭の輓馬を選び出す予定だった。
御園家の主広間は、厳粛な雰囲気に包まれていた。
使用人やメイドたちは皆、広間で几帳面に給仕していた。その注意は、重要な客人の接待に注がれている。
御苑子爵とこのローラン王国の貴族は、馬の納品時期や具体的な種類・数量、支払い方法について協議し、契約を締結した。
契約がまとまった後のことである。
御苑子爵は愈泉ダントのために盛大な貴族の晩餐会を開き、自分の子供たちを一人一人紹介した。
晩餐会は長く続くため、波輪家の馬車はその夜のうちに御園家の使用人に伴われ、早めに帰途に着くことになっていた。
御園家は上から下まで晩餐会に気を取られ、綺絢でさえ秉核を見張る暇などなかった。
……
その夜、波輪家の御者は白パンと焼肉のサンドイッチを簡単に食べ、御苑家の護衛隊が到着するのを見て、鞭を振り上げて出発しようとした。
まさにその時。
御園家の荘園の金属製の門から、秉核が手提げ鞄を抱えて走り出てきた。
御苑家の護衛隊は秉核を訝しげに見たが、何も言わなかった。
護送するのは空の馬車で、これといった大事もない。御苑家の使用人たちは、正体不明の少年である秉核に、むやみに口を利こうとはしなかった。
隊列の後ろにやって来た秉核は御苑家の使用人たちを見て、嘘をついた。「綺絢さんが私を波輪港まで行かせようとしてるんです。皆さんと同じ方向ですから、波輪港に着いたら降ろしてください。帰りは自分で何とかしますから」
そう言い終えると、秉核は照れくさそうに笑い、付け加えるように訊ねた。
「えっと、今、その、同じ方向ですよね?」
護衛の下僕たちは、何か納得したふりをして秉核を馬車に乗せた。
この下僕は、分かったふりをするしかなかった。今は子爵と若様、お嬢様方が、ローランから来た貴族をもてなしている最中である。下人たるもの、大事な場で『些細な問題』を持ち出して、子爵様の興を削ぐような真似はできない。(最も穏やかな顔をしている綺絢でさえ、下人を懲らしめるときは冷酷なのだ。)
……
不可解なことに、秉核は御苑家にやって来たが、御園家の貴族たちが気づかぬまま、荒唐無稽にも去って行った。




