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アークライト廃墟ダンジョン再興記――追放管理士と精霊少女のゼロから始める逆転経営譚――  作者: 盆ちゃん


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第42話:生態系逆流と迎撃の要塞ネットワーク

第42話:生態系逆流と迎撃の要塞ネットワーク

アークライト廃墟ダンジョンの第五階層に鎮座する古代魔力演算室が大陸全土の魔力循環を統括する中枢として完全に稼働を始めてから、第一階層から第五階層に至るすべての空間は驚異的な調和と豊かさを維持していた。第三階層の商業区画ではエリカ商会と南部使節団のドミニクらが公正な流通網を活気づかせ、冒険者たちはガランやレイナに率いられて日々の訓練に励み、ダンジョンの守護精霊であるミラは要塞全体の安定を優しく見守っていた。

しかし、その平穏を揺るがすべく、大陸北方の原生林の深部に巣食う生態系支配型の巨大競合迷宮〈深緑蛇園〉から放たれた悪意の波長は、着実にこのアークライト廃墟ダンジョンの外縁へと忍び寄っていた。統合管理プラットフォーム区画の巨大モニタリングディスプレイの前に立つレオン・アークライトの双眸は、北方の境界付近から送られてくる微弱で不自然な魔力波形の異常検知に鋭く向けられていた。

「マスター……やっぱり、北方の〈深緑蛇園〉からの魔力干渉が、だんだん強くなっているわ。私たちのダンジョンが持つ『古代魔力演算室』のシステムを乗っ取ろうとして、外縁の魔力バリアに何か変な胞子のようなものを植え付けようとしているの……!」

精霊の少女ミラが手元の魔法盤を操作しながら、少し焦りを帯びた声で報告する。彼女の銀糸の髪が、侵食の魔力を検知してピリピリと緊張したように逆立っていた。

レオンは腕を組み、冷徹なまでの落ち着きを保ったままディスプレイの数値を見つめた。

「慌てるな、ミラ。奴らの手口は予測の範囲内だ。〈深緑蛇園〉の本質は、ダンジョン自体を生きたジャングルと同化させ、有毒な植物や知性を持った魔獣の群れを送り込んで内部から生態系を乗っ取る『生物的侵略』にある。正面からの武力討伐や経済的な圧力が通用しなかったからといって、今度はこうした卑劣な汚染工作に走ったというわけだな」

そのレオンの言葉通り、北方の境界付近に設置されていた自動観測魔石の映像には、通常の魔物とは明らかに異なる、不気味な紫色の蔦や、人間の皮膚に触れるだけで魔力を麻痺させる特殊な有毒胞子を放つ奇怪な植物の群れが、ダンジョンの外壁の隙間を縫うようにしてひそかに這い上がってくる姿が生々しく映し出されていた。これらは単なる野生の植物ではなく、〈深緑蛇園〉の主導者である生態系支配型の魔導士たちが、ダンジョンの魔力回路をハッキングするために遺伝子レベルで品種改良した「侵略用の生体兵器」であった。

「くそっ……! 綺麗な花を咲かせるどころか、このダンジョンの清らかな魔力回路を根元から腐らせようって魂胆かよ! せっかくレオン様がみんなのために整えてくれたこの素晴らしい環境を、あんな気味の悪い植物どもに汚させてたまるか!」

モニタリングの映像を見ていたガランが、愛用の大剣をガシャリと音を立てて引き抜き、怒りのあまり荒々しい息を吐き出した。

商人エリカも、手元の魔力帳簿を握りしめながら険しい表情で頷く。

「私たちの商会ネットワークを通じて大陸中の商人たちが信頼を寄せてくれているこの場所に、そんな不衛生で危険な汚染を持ち込ませるわけにはいきません。レオン様、どう迎撃するのですか?」

レオンは静かにうなずき、その右腕に刻まれた管理士の回路痕に、第五階層の古代演算室から引き出した最高純度の黄金の魔力を一気に注ぎ込んだ。

「迎撃の手段はシンプルだ。奴らが『生態系の同化と侵食』を武器にするというのならば、我がダンジョンの全階層のシステムそのものを、奴らの汚染を受け付けない『完全無欠の浄化プラットフォーム』へと一斉に再構築リビルドする」

レオンのその力強い号令とともに、ダンジョン全体の魔力コアが盛大に脈動を始めた。

第一階層のリハビリ区画から第五階層の古代神殿に至るまで、すべての壁面や床面に刻まれた幾何学模様の魔法陣が一斉に眩い黄金の光を放ち、外縁部から侵入しようとしていたすべての有毒な胞子と紫色の侵略植物を、根こそぎ包み込んで浄化の炎へと変換し始めた。

ジジジジジジッ……! と音を立てて、〈深緑蛇園〉が送り込んだ生体兵器の群れは、レオンの圧倒的な〈再構築〉の光の前に一瞬で分解され、無害な魔力の粒子へと還元されて消え去っていった。

北方の原生林の深くまで、その侵略工作の失敗を察知した〈深緑蛇園〉の主導者たちは、自分たちの放った特殊な生体汚染がまったく通用しなかったどころか、逆に自分たちの魔力ネットワークの情報を完璧に解析されたことに気付き、恐怖のあまりに震え上がることになる。

外部からのいかなる悪質な侵略も、武力行使も、そして生態系を揺るがす汚染工作すらも、天才管理士レオン・アークライトの完璧な経営手腕とダンジョンのシステムの前には全く通用しなかった。

すべての脅威を完璧に退け、より一層その輝きを増していくアークライト廃墟ダンジョンは、大陸全土に真の平和と永遠の繁栄をもたらす唯一無二の聖域として、その歴史の新しいページをまた一段と力強く刻み込んでいくのだった。

ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!

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