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アークライト廃墟ダンジョン再興記――追放管理士と精霊少女のゼロから始める逆転経営譚――  作者: 盆ちゃん


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第21話:王都の動揺と最後の狂宴

第21話:王都の動揺と最後の狂宴

大陸南部の自由都市連合から派遣された使節団の団長ドミニクとレオン・アークライトの間で正式な「大陸横断型の独立流通網」の同盟が結ばれてから、アークライト廃墟ダンジョンの商業区画はかつてないほどの熱気と活気に包まれていた。第三階層の広大なフロアは、王都の迷宮管理ギルドが敷いた独占的な搾取構造を完全にバイパスし、南部から持ち込まれた希少な魔導具の素材や特産の鉱石、そしてエリカ商会の窓口を通じて取引される高品質な結晶が絶え間なく行き交う、大陸経済の真の中心核へと見事に変貌を遂げていた。

フロアの中央に鎮座する青白い魔力精製炉は、南部との大規模な交易による膨大な魔力の流入と循環によって、これまで以上の眩い純白の光を放ち、ダンジョン全体の構造をさらに強固で美しいものへと自動的に最適化し続けていた。第一階層のリハビリ区画で汗を流す駆け出しの冒険者たちから、第二階層の黒曜石回廊で戦術的な連携を磨く中堅の者たち、そして商業区画で公正な取引に満面の笑みを浮かべる商人や冒険者たちに至るまで、この要塞に集うすべての者たちが「奪われない自由と誇り」を実感し、確かな絆で結ばれていた。

その様子を、コア・ルームの巨大な魔力モニタリングディスプレイを通じて見つめていた精霊の少女ミラは、胸の前で両手をしっかりと組み、感極まったように瞳を潤ませていた。

「マスター……すごいよ。南部の人たちが加わってくれたおかげで、商業区画の活気が本当に信じられないくらい大きくなってるわ。王都の役人たちがどれだけ悔しがっても、もう私たちのこの世界を止めることなんて誰にもできないんだ……!」

ミラの銀糸の髪が、空間を巡る豊潤な魔力の流れに呼応して、きらきらと美しく心地よく揺れている。彼女の存在感は、初めて出会った頃の透き通るような頼りなさが嘘のように消え失せ、この独立経済都市全体の確かなる守護精霊としての圧倒的な気品と美しさを放っていた。

コア・ルームの隅で静かに腕を組んでいたレオン・アークライトは、ディスプレイに映し出された大陸全土の流通マップの推移を確認しながら、穏やかに、しかし鋭い眼差しでうなずいた。

「順調すぎるほどの成果だな。我がダンジョンと南部都市連合が結んだこの独立流通網は、もはや一つの小国に匹敵する経済的基盤を生み出している。中央管理ギルドがこれまで独占してきた迷宮市場のピラミッドは、この瞬間に完全に崩壊したと言っていい」

レオンの冷徹かつ知的な双眸には、長年にわたり自分からすべてを奪い去った腐敗した権力者たちに対する静かなる勝利の確信と、すべての冒険者たちに真の自由を取り戻したという深い達成感が宿っていた。

しかし、レオンのその表情に油断の色は一切なかった。

「だが、ミラ。追い詰められた獣ほど、最後に最も危険で予測不能な牙を剥くものだ。王都の最高幹部たち――バルトロをはじめとする連中は、自分たちの特権的な権力が完全に失われつつあるという現実を目の当たりにして、いまや最後の狂気に走っているはずだ」

レオンの低い呟きに、ミラの表情からふっと笑顔が引き締まり、緊張の影が走る。

「マスター……中央の連中が、いよいよ最後の手段に出てくるということ……?」

「ああ。これまでの特務管理官による武力制圧も、潜行工作官による内部破壊も、法的な監査という名の圧力も、そして古代の魔導兵器による破滅の企ても、すべてが我がダンジョンの防衛網と〈再構築〉の前に粉砕された。……となれば、奴らが最後に残されたカードとして切るのは、王都の中心部そのものを巻き込み、王国全体の政治システムを強制的に動かしてこのダンジョンを『国家反逆の敵性組織』として武力討伐する、総力戦の布告だ」

レオンの冷徹な予測は、奇しくも王都の中心でまさに今まさに実行に移されようとしている最悪の陰謀と完全に一致していた。

その頃、大陸の中心にそびえ立つ迷宮管理ギルド総本部、最高幹部専用執務室。

その漆黒の空間は、外の明るい陽光が一切差し込まないまま、冷え切った殺伐とした空気で満たされていた。机の上には、南部との同盟結成とアークライト廃墟ダンジョンの爆発的な経済成長を伝える最新の偵察報告書が無数に散らばり、最高幹部バルトロはその紙くずの山を前にして、狂気じみた血走った目を剥いたまま、ガタガタと全身を震わせていた。

「……終わりだ……何もかも、すべてが終わりだ……!」

バルトロの掠れた、しかし耳障りな絶叫が執務室の壁に虚しく反響する。

「あの追放したはずの小僧め……ただのゴミ溜めだった廃墟を勝手に復興させただけでも許しがたいというのに、今や南部と手を結び、我がギルドの数百年続く独占的搾取の構造を完全に根底から破壊しやがった……! このままでは、王都の国王陛下や他の貴族たちからも、我がギルドの無能と不正が徹底的に糾弾され、私メの首など一瞬で刎ねられてしまうわ……!」

バルトロの精神は、もはや極限の追い詰められ方によって完全に崩壊しかけていた。彼がこれまでに築き上げてきた富も、権力も、誇りも、すべてがレオン・アークライトの圧倒的な経営手腕と自由な経済圏の前に、まるで砂の城のように音を立てて崩れ去っていったのだ。

その狂乱に満ちた執務室の暗がりから、音もなく一歩、影の執行者ガーロッドが姿を現した。彼の身体は先の地下深部での魔核暴走の際に受けた魔力の反動で一部が痛々しく傷ついていたが、その表情の冷徹さと機械的な忠誠心は微塵も揺らいでいなかった。

「……バルトロ様。もはや、これまでの一般的な手段や、個別の刺客による隠密行動など無意味です。あのダンジョンは、単なる迷宮の枠を超え、大陸全土の流通の心臓部として完全に定着してしまった」

ガーロッドの低く冷たい声に、バルトロはガバッと顔を上げ、血走った目で彼にしがみついた。

「ガーロッド……! お前、まだ何か手があるのか!? あの小僧を、あの忌々しいダンジョンを、この世界から完全に消し去るための、もっと強力な手段が残されているのか……!?」

ガーロッドは感情の一切感じられない無機質な瞳でバルトロを見据え、ゆっくりとうなずいた。

「左様でございます。個別の武力行使が不可能であるならば、我がギルドが王都の国王陛下に対して長年蓄えてきた『非常時の国家非常事態布告』の特権を全面行使するのです」

「――国家非常事態布告、だと……?」

「その通りです。アークライト廃墟ダンジョンを、王国全体の安全を脅かす『極めて危険な反逆者の武装要塞』として公式に認定させ、王都直轄の最高騎士団と、ギルドの全戦闘管理士を総動員した『国家総動員による大規模討伐軍』を編成する。いかにレオン・アークライトの〈再構築〉が卓越していようとも、王国全軍の物量と、国家の中枢から発せられる絶対的な法の下での強制排除の波を完全に防ぎ切ることは不可能でしょう」

ガーロッドのその言葉を聞いたバルトロの顔に、歪んだ歓喜の色が浮かび上がった。

「はは……ははははっ! それだ! それしかないわ! 国の正規軍を動かし、あの小僧を国家反逆の罪で文字通り一匹残らず処刑してやればいいのだ! すぐに国王に働きかけろ! 全軍を出撃させろ!!」

王都の腐敗した権力者たちが下した、あまりにも自己中心的で、そして王国全体を巻き込む破滅的な最後の賭け。

自分たちの利権と保身のためだけに国家の軍事力私物化を企むその醜悪な企ては、もはや誰の目にも明らかな暴走であったが、彼らはその先に待ち受けている取り返しのつかない結末をまだ微塵も理解していなかった。

それから数日後。

アークライト廃墟ダンジョンの周辺を取り囲む荒涼とした荒野の地平線に、突如として不気味な地鳴りと、何千人もの重厚な足音を伴う巨大な軍勢の影が立ち込めた。

王都の紋章を掲げた無数の騎士団の旗印が風にはためき、その最前線には、ギルドの全戦闘管理士たちを引き連れた影の執行者ガーロッドが冷徹な眼光を湛えて仁王立ちしていた。

「――全軍、停止!!」

ガーロッドの低くよく通る号令とともに、王都の正規軍と戦闘管理士からなる数千人の大軍勢が、アークライト廃墟ダンジョンの巨大なエントランスの正面にピタリと隊列を整えた。

その異変の波長は、ダンジョンの最深部にあるコア・ルームの魔力モニタリングディスプレイに、一瞬にして鮮明に描き出された。

「マスター……! ダンジョンの外縁に、王都の紋章を掲げた正規軍と、ものすごい数の戦闘管理士たちの軍勢が……! その数、ゆうに数千人を超えています!」

ミラの青ざめた声がコア・ルームに響き渡る。彼女は手元の魔力盤を操作しながら、圧倒的な物量で押し寄せてきた敵の反応に強い緊張の色を浮かべていた。

しかし、レオン・アークライトの表情には、相変わらず微塵の動揺も恐怖の色もなかった。彼は腕を組み、静かにモニタリング画面を見つめながら、穏やかに、しかし芯の通ったクリアな声で答えた。

「……ようやく来たか。小間使いの刺客も、法的な監査官も、禁忌の魔導兵器もすべて通じないと知るやいなや、今度は自分たちの権力を笠に着て王国の正規軍を私物化し、国全体の軍事力でこの城塞を押し潰そうというわけだな」

レオンのその冷静すぎる反応に、ミラは深く息を吸い込み、少し落ち着きを取り戻してしっかりと頷いた。

「うん……! 王都の軍隊がどれだけ大人数で攻めてこようとも、私たちが築いてきたこの場所と、たくさんの仲間たちの絆は、絶対に負けないわ!」

「当然だ、ミラ」

レオンは静かに立ち上がり、その右腕にこれまでにないほどの眩い、神々しいまでの黄金の魔力を一気に滾らせた。

「王都の腐敗した権力者たちが国家の名の下に持ち込んだその最後の暴力の群れを、このダンジョンのすべての構造と、冒険者たちの揺るぎない連帯の力をもって、完全に、そして美しく――再構築リビルドしてやろう」

すべての運命をかけた最終決戦の幕が、いま、辺境の荒野のど真ん中で、かつてないほどの激しい轟音と共に切って落とされようとしていたのだった。

ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!

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