第25話「これからも」
今回で最終回となります。
「イレギュラー・マリオネット -The Wild Guardian-」の後日談にあたる話です。
前作はこちら
https://ncode.syosetu.com/n9755kt/
「ほほう、地上界でそんなことがあったんですねぇ」
ライガとレオンは、エルト達と別れたあとすぐにノクス達と合流し、グリオールの提案で冥王城で一息つくことにした。
「はい、休日……というニュアンスには不釣合いですが、無事資料も回収できたので有意義な一日でした」
レオンはいつものようにグリオールとノクスにティーセットの用意をしながら、地上界での顛末を話していた。
「それは良かった。ライガにとっても良い経験になったでしょう」
モミモミモミ……。
「……おいっ、おいコラ!」
「はい? 何ですライガ、いまレオン君とお話し中なんですよ?」
ナデナデナデ……スリスリ……。
「いい加減にしろテメェ! ベタベタ触るな!!」
レオンの視線の先、ノクスは半裸にしたライガを自分の膝に向かい合うように跨らせて、体中を触っていた。
当の本人はというと、例のごとくリンクリングで体の自由を奪われ、抵抗もできず、されるがままになっていた。
「ダメです! 息が詰まるほど堅苦しい親睦会からようやく解放されたんです、ライガ成分をたっぷり補充して疲労回復せねば」
「何だよライガ成分って……」
ノクスは両腕をライガの背中に回して自分に引き寄せると、胸筋の谷間に顔を埋めながら深呼吸をし出した。
「スーハ……! はぁ……♪ やっぱりこうしてライガを抱っこしてる時が一番幸せですねぇ~。日々のストレスの癒しです」
「……たくっ、帰ってきたらこれかよ」
ライガは諦めたのか、抵抗するのを止めたようだ。
「……あら、あの子ずいぶんお利口さんになったわねぇ。前まで本気で嫌がってたくせに」
「ええ、少しずつですが……主人に対し従順な姿勢を見せています。受肉人形として良い傾向です」
「アンタも、少しくらいアタシに歯向かったって良いのよぉ~? それを叩き伏せるのも面白そうだし♪」
「滅相もありません。俺は、貴方に仕えられるだけで満足です」
「……で、エルトちゃんに復元してもらったっていう資料がそれ?」
グリオールの視線の先、少し離れた机に地上界から持ち帰ってきた資料が置いてあった。
「はい、他の地上世界の情報も網羅してあるので、いつまでもテラアースに置いておきたくなかったんです」
「おや、そうなんですか? テラアース以外の地上世界の情報は僕もあまり知らないので、興味ありますねぇ」
「にしても、とんだ休日になっちまったぜ。まぁ、一日中レオン兄ちゃん独り占めできたし。温泉も気持ちよかったな~♪」
ライガはノクスに抱かれながら、うっとりとした表情で温泉に入った時のことを思い出している様子だった。
「あら。だったら、うちの大浴場使う? 結構、気持ちいいわよぉ~♪」
グリオールの提案に、ライガは途端に目を輝かせた。
「おおっ! 良いのか? ノクス、風呂だ! 風呂入るぞ!」
「ええ~……っ。いやしかし、もっとライガ成分を補充してから……」
渋るノクスに、ライガがポツリと呟いた。
「……ふ~ん? 風呂で好きなだけアソコも触らせてやろうかと思ったけど、残念だなぁ~?」
「さぁ! お風呂に行きましょうか! レオン君、大浴場はどちらですか!?」
ノクスはライガをお姫様抱っこしたまま颯爽と立ち上がる。
ライガもまた、してやったりといった顔だ。
「アンタ、主人が人形に遊ばれてんじゃないわよ、まったく……!」
「では、資料を片付けたらすぐにご案内します」
レオンは皆に軽く会釈をすると、資料を持って部屋を出て行った。
◇◆◇◆
少し歩いた先にあった扉を開けると、薄暗い灯りに照らされた部屋があった。
そこは、今まで様々な歴史的価値のある資料を集めたレオンの資料室だ。
受肉人形として蘇ってから幾年月、今日のように暇をもらった際に自ら地上界に出向いて集めたものだ。
「人形として生まれ変わったとはいえ、人間だった頃の趣味だけはそのまま変わらなかったな」
持ち帰った資料を丁寧に棚の空いたスペースに安置すると、レオンは呟く。
「不思議だ。ずっと重荷に感じていたけれど、こうしてアイツを受け入れた今は……少しだけ軽くなったように感じる」
今日、改めて地上界へ出向いて過去の自分と向き合った。
自分はもう、あの頃のライガとは別人だと自覚はしている。
けれど、先生への恩義も、カインへの愛も忘れられなかった。
ふと、視線を後ろにやる。
そこには防護ガラスのショーケースに入った白銀の鎧が鎮座していた。
中に収められていたのは、銀色の鎧と、重厚感ある一振りの剣。
剣も鎧も、使用感が色濃く残っている。
そう、『武勇の衣』だ。
冥界での戦いの後、戦利品ということで保管されていたものを引き取り、手入れしてきた。
カインからの愛の証。しかし、今となっては大切な主人を傷つけてしまった罪の証。
◇◆◇◆
しばらくすると、部屋の外で騒がしい声が聞こえてきた。
「ああもうっ、我慢できません! いますぐ下も脱がしちゃいましょう!」
「……勝手に脱・が・す・な!!」
――ドゴォッ!!
「あぎょへぇえええ!?」
何かが壁に打ち付けられる音と、ノクスの悲鳴が響きわたる。
「レ~オ~ン! いつまで油売ってんのよぉ~! この二人さっさと連れてって頂戴! 騒がしいったらないわぁ~」
その声に、レオンは思わずふっと笑みがこぼれる。
「お前は、ライガが生きた証だ。永遠に忘れない為に、俺はこれからも生きていくよ」
レオンは鎧に語りかけるように呟くと、部屋を出ていった。
そう、これからも生きていこう。
ライガとして生まれ、勇者として生きた、レオンという人形として。
ご愛読誠にありがとうございました!
無事に物語を終えることができました。
もし気に入っていただけた部分があれば、ぜひ感想や評価をお聞かせいただけると嬉しいです!
☆1でも☆2でも、大歓迎です!皆さんからのフィードバックが、これからの作品作りの励みになります。
どうぞよろしくお願いします!
Copyright(C)2026-流右京




