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なんちゃって落窪物語  作者: fukuneko
巻一
20/105

ツタンカーメンの弁当箱

●あこぎ、悔しさをぶちまける


 姫君の大切な鏡箱が持ち去られてしまった!

 あんまりじゃない! 

 継母が部屋を出ていったあと、あこぎは悔しさをぶちまけます。――道頼はまだ几帳の陰に隠れています。

「姫君がお持ちになっていた物は、何もかも取りあげられちゃいました。調度類もお道具類も」

「そうだったかしら」


「大君、中君、三の君の婿取りのとき、ちょっとこれと取り換えてとか、ちょっと貸してちょうだいとか言われて、屏風も几帳も持っていかれちゃったじゃないですか」

「そうだったかしら」


「姫君は寛大なお心でいらっしゃるのに、北の方さまはただ強欲なだけじゃありませんか」

 そこで姫君は、くすっ、と笑います。

「私はかまわないの。どのお道具も、必要がなくなったら、返してくださるわ」

 このやりとりを聞いていた道頼は、姫君はたしかに寛大な心の持ち主だ、と思うのでした。


 道頼は几帳の陰から出てきて、姫君を抱き寄せます。

「北の方が若作りなのには、ちょっと驚いたな。四人の姫君たちは母親似なの?」

「どうでしょう。あまり似ていらっしゃらないように思います。どの姫君もお美しくて、しっかりしていらっしゃいます」

「あんなふうに、えげつないわけじゃないんだね?」

「まあ……そんなふうにご覧になりましたの。それはそうと、北の方さまは、少将の君さまがここに隠れていらっしゃったと知ったら、何とおっしゃるかしら」

 

 道頼の腕に抱かれ、姫君は少し打ち解けたようすで話をしています。

 かわいいな、と道頼は思います。雨のなか、ここへ来るのを取り止めにしていたら、後悔するところだった、と。


 そこへ、継母が、女童に黒い箱を持たせてよこします。

「お鏡の箱だそうです。えっと……これは絵が剥げていますが漆塗りです、とにかく漆塗りです、とのことです」

 見れば、とんでもなく古ぼけた箱なのでした。

 

 これ、何やの?

 どこから発掘されたん?

 あこぎはうんざりします。

「まあ、なんて素敵なお品でしょう。ありがたくて涙が出そう」

 あこぎは箱に鏡を入れてみますが、箱が大きすぎて、収まりがよくありません。


「まあ、北の方さまは、なんてご親切なんでしょう。――姫君、こんな箱は使わないほうがましです。うっちゃっておきましょう」

 姫君は優等生モードに入ります。

「ドントセイザット(そんなことを言ってはなりません)」

 あこぎをたしなめて、女童に微笑みかけます。

「北の方さまに伝えてください。鏡の箱、たしかに頂戴いたしました。お言葉のとおり、大変結構なお品です」

 

 女童がいなくなってから、道頼は箱を手にとってながめます。

「これはツタンカーメンの弁当箱だ。この世に二つとない貴重な物だよ」

 

 というわけで、少将道頼は、もう一晩を姫君とともに過ごします。そして、今度こそ自邸から迎えの牛車を呼んで、夜明け前に帯刀と帰っていったのでした。



●姫君、あこぎの気遣いに感謝する


 少将道頼が帰ったあと、姫君はあこぎに話しかけます。

「昨夜は恥ずかしい思いをせずにすみました。いろいろなものは、どうして手に入ったのかしら? 几帳を用意してもらえたのは、本当に嬉しかったわ」

「叔母に頼んで借り受けたんです」


 姫君の胸に迫るものがあります。

 あこぎ……。

 あなただってまだ幼いのに、思いもよらない活躍をしてくれたのね。なんて健気けなげなの。

 亡きママンが、あこぎを後見うしろみと名づけたけれど、正解だったんだわ。


 あこぎは帯刀から聞いたことを話します。

「少将の君は、どしゃ降りのなか、とんだ災難に見舞われたんですよ」

 糞まみれになられたんです、糞ですよ、糞!――と言いそうになって、おっとっと、

「ずぶ濡れで泥んこになっちゃって」

「まあ……!」

「そんな災難もものともせず、少将の君は通ってきてくださったんです」

 なんて熱いハートの持ち主なのかしら、少将の君は! このお邸の人々に見下されている姫君を、どうかお守りください。

 あこぎは祈るのでした。黒いシルクのビキニパンツを、ちら、と思い浮かべつつ。




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