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ねむいですしおすし

「もう、時間が無いのよ」

お母さんが私にそうなだめる。だけど、離れたくない。せっかく、幸せになれたのに。

「椿ちゃん。東を頼めるか」

お父さんの頼みに私は首を強く横に振る。お父さんが私に頼んだのは、私の力を知っているからだとはわかっている。

すると、東が私の前に出る。東の目が見えた。怖いほど、目が据わっていた。

「親父と母さん。……死なないよな」

「さぁ」

「生きれるようには、がんばる」

二人それぞれの答えを返した。東はその言葉を聞いて、「そうか」と自分で頷いて、私の方を見る。

「逃げよう」

「嫌だぁっ!」

即答で叫んだ。こんなの嘘だ! 東が、お父さんとお母さんを見捨てるわけがない!

「椿ちゃん」

お母さんが私の肩をがしっと掴む。顔はほほ笑んでいるものの、目は死ぬことを悟っていた。

「あなたたちには生きていてほしい。私とお父さんの気持ちを受け継いでほしい」

私は動けないで、お母さんの目をひたすら見つめていた。どうして。どうしてそんなことを言うの?

お父さんが私の頭をなでながら

「幸せの家庭を築くことだよ」

と呟いた。お父さんの目も、お母さんと同じだった。嫌だ。離れたくないよぉ。

初めて、親というものをもった私にとっては、離したくない。

目から涙が流れる。二度目なのだが、枯れを知らないのか、どんどんあふれてくる。

「東。椿ちゃんを」

「……ああ」

お母さんがそう言うと、東が私をくいっと引っ張る。

「椿。逃げよう。ここから」

「いやだぁ」

私は駄々をこねながら、東に訴えかける。だけど、思いは届かず。東はお母さんとお父さんに言葉をかける。

「また、会えたらいいな」

そして、私の手を引っ張り、窓の方へと行く。離れていく。お母さんとお父さんが。いやだ! 離れたくないよ! どうしてなの!? 東!

私は東をきっと睨むように見る。だけど、東はお母さんたちに背を向けながら、……泣いていた。

やっぱり、東も離れたくないんだ。でも、どうして離れるの?

「椿」

不意に東が口を開く。東の涙声に、私は黙ってしまう。

「俺、立派かな」

そんなのわからないよと呟きかけたが、口をつぐみ、頷く。この気持ち、私だけじゃないんだ。

あなたたちには生きていてほしい。そんな、お母さんたちの言葉を胸に私は東と一緒に外へ出た。


後ろの塀を乗り越えて路地に出た。何故か、こちら側には誰もいない。私たちはお互い手を繋ぎ、走り出した。早く、遠くへ。

「居たぞ! 追え!」

後ろからそんな声が聞こえる。早くも見つかった。

「早く、ビル街に逃げたら路地裏で逃げれる!」

東がそう言って、私の手を引き、リードする。私は頷き、東に合わせて走る。

曲がり角を曲がり、蛇行しながら逃げる。


「はぁっはぁっ」

東の息が上がってきた。私も息が荒い。

「ここからは行かさないぞ!」

目の前に突然3人の兵士が現れる。私と東は立ち止まる。もう少しでビル街なのに!

「さぁ、大人しくしてもらおうか」

兵士たちに銃を構えられる。 ……もう、使うしかないんだね。私は東の前で両手を左右に開く。

「おい、椿」

「大丈夫」

東が、私が庇っているのだと思い込んでいたので、なだめる。

『旋律』発動

私の両手に魔方陣のようなものが現れる。兵士たちは突然のことであっけに取られている。東も同様あっけに取られていた。

「旋律、Gun」

私はそう呟き、手の中に銃を形成していく。だが、普通では見えない。私は手を、銃を握るようにし、兵士一人に向ける。

そして、引き金を引いた。

傍から見たら、それは只の銃のまねをしているだけに見える。だけど、私は”引き金を引いた”。

「がっ」

すると、狙っていた兵士が、額から赤いものを噴き出しながら倒れる。

「ぐっ」

私はもう一度引いた。一人、胸からどす黒い赤い液体を出しながら倒れた。

「ひ、ひぃぃぃぃ!」

最後の一人が倒れていく仲間を見て、私を悪魔を見る目をして銃を構える。

容赦なく、私は引き金を引いた。

悲鳴もなく、その兵士は、顔から血を噴き出しながら倒れた。

私は東の方を見る。東がわなわなと震え、私を見つめていた。その目は恐怖に満ちている。やっぱり、嫌われて当然かな。

だが、東は自分の頬を自分でばきっと殴った。

「えっ」

私は東の突然の行動に茫然としてしまう。そして、東が私を見て

「俺を殴ってくれ。お前に恐怖した俺を」

と、言いつつ頭を下げた。突然のことであたふたとする。

「き、恐怖なんて仕方ないよ。だって、私『異端者』だもん。それよりもさ、行こ」

私は東の手を引いた。東はうんと頷いて、私に続く。


これから、何日逃げないといけないのだろうか。

私にはわからない。早く。早く、幸せな生活に戻りたい。そう願った。

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