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ゆびが痛い。
その夜、私と東はお母さんに押され、東の部屋に来た。お母さんが出るとき、東に何かを渡した。東がすごく顔を赤くして
「ば、ばっきゃろー!」
と、叫びながらお母さんを押し出す。出るときにお母さんの顔がにやけているのが見えた。何を渡したのだろう。
「何貰ったの?」
「っ!?ばっ!な、なんでもねーよ!」
東がすごく顔を赤くしてそのものをゴミ箱の中に入れる。なんか、正方形で薄っぺらい袋が見えたが、何かは分からなかった。後でゴミ箱を調べてみよう。
その後、東がむすっとした顔で私と一緒に並んでベッドに座る。私はそんな東をまじまじと見つめていると、更に顔を赤くしてそっぽを向いた。なんか悔しい。ちゃんと見てほしいのに。そう思った私は東の頭を持って、ぐいっと私の方に無理やり向けた。鼻先が当たる。東の吐息が私にあたっていた。
「お、おま」
引きつった顔でそう言った。私はじっとその黒い瞳をただただ見つめる。ちゃんと見ててほしい。そっぽを向いてほしくない。
「ちゃんと私を見て」
そう東に呟く。東は私の肩を押して、距離を離した。そして、顔が赤いまま
「た、ただ恥ずかしかっただけだ。椿が嫌いなわけじゃない」
と、頬を掻きながら言った。よかった、嫌いになったんじゃないんだ。私は、その言葉に安心していると、自然とふわっと眠気が襲ってきた。
「ふあぁぁっ」
「ん?眠いのか?」
うつ向き気味で間抜けな欠伸を出すと、東が顔を覗き込みながら聞いてきた。それに私は「うん」と頷く。
「ベッドどうしようか。流石に一緒に寝たくないよな? 俺、床で寝るから毛布持ってくる」
そういいながら立ち上がろうとしたので、無意識に手を掴んだ。
「ん?椿どうした?」
「えっ、あ、いや……」
無意識でつかんだため、言葉が出ない。そんな私に東はやさしく私の顔をみる。ど、どうしよう。んーと、こ、こういうときって。あの『テレビ』だと。
「い、一緒に。寝てほしい」
ぼそっと呟く。ただ、テレビで流れていた内容を言っただけだったが、それを聞いた東の顔がボンと音を立てて赤くなった。
「あ、えーっと。……俺は構わんが?」
「じゃあ、一緒に寝よ?」
私と東はそのまま一緒にベッドに入る。一人用のものだったので、東と体が向かい合って密着する。私はぎゅっと東を抱きしめた。
「お、おまえ」
「えへへ」
自然とそう笑えた。東の顔は見えないが、赤くしてるのが分かった。やっぱり、東の体は落ち着く。えへへ。
そして、私はぐっすりと眠りに堕ちた。
不本意な揺れで目を覚ますと、昔見ていた天井が見えた。そう、牢獄。体を起こす。
ドゴン!
起きた直後にいきなり体が縦に突き上げられた。なんだろう。
鉄格子の外では、見張りたちが走り去っていき、罵声が聞こえる。何が起きているんだろう。
唯一、小さな窓があるため、私はそこから外を見た。丁度、出たことが一度もないとても広いグラウンドの全貌が見えた。
そこでは、信じられない光景が。
赤髪の、少女が、無数にも見える兵隊や見張りたちをばったばったとなぎ倒している。血飛沫が上がり、その髪はそれで塗り固められたのではないかと思うほどだった。
一瞬。本当に一瞬だったのだろうか。その時間にその少女が私を見た。距離が遠すぎるため、本当に
私を見たのかは分からないが。その目は、紅かった。
がばっ!
私は反射的に体を起こす。机と箪笥があるぐらいのシンプルな部屋、ふかふかのベッド。そうだ、ここは東の部屋。肝心の東は私の隣で寝息を立てていた。ちらっと時計を見る。7時。
昔の夢だった。あの時の事件の、夢だった。




