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前回のあらすじ
赤髪ツインテールはフラッチェという名前だった。
「んつぅ! ここにあるでしょっ、ここに!!」
フラッチェが無い胸を張っている。いや、胸を張ったところで何にも強調されてないんだが……………………。だが、その頑張りは認めてやろう。
「無い胸を張ったところで、無いものは無いんだぞ? むしろ哀れにすら思える。黙って自分のフラットチェスト受け入れろ」
「……さっきからフラットチェストやフラッチェやら言っているけど、それどういう意味なのよ!! 何だが馬鹿にされていることだけは分かるけど!」
「何言ってんだ? フラッチェはお前の名前だろう? 自分の名前すら忘れたのか?」
「私の名前じゃないからっ!!! 私の名前はレンだって言ってるでしょ!!!! ちゃんと名前で呼びなさいよ!!」
「わがままだな、フラッチェは」
「どこがよ!?」
赤髪ツインテールこと、フラッチェはプンスカと地団駄を踏んでいる。リアルで地団駄を踏むやつなど見たことがなかったからとても珍しい光景をおれは今目にしている。この珍しさはこうなんて表現したら良いのだろうか。おれにもっと語彙力があれば伝えられるのに残念でならない。
「因みにフラッチェとは君みたいな胸のサイズの持ち主の総称だ(おれが前いた世界でだけど)」
「私みたいな胸って……」
自分のフラットチェストを確認するフラッチェ。するとプルプルと震えだし、声を張り上げ、またこちらへ殴りかかってきた。
「──おっと」
「避けるなっ!!」
「無理いうなよフラッチェ、おれは殴られるのは趣味じゃないんだ」
美少女には殴られるより、触れ合いたいの思うのが男として当然の反応だと思う。
「だからレンって呼べって言ってるでしょ!!」
「──よっと」
ぶんぶんと拳を振り回すが、全て紙一重で躱す。この実力で本当にDランクなのか? まぁでも剣とか魔法とかスキルとか使ったら強いのかもしれない。これだけで実力を測るのは失礼ってもんだ。
「──きゃっ」
と、考え事をしていたら、赤髪ツインテールが一人でつまづいてこけそうになる。おいおい、またか……。これはあれだろ? また支えて欲しいですよってことだろ? フリだろフリ。好きだねぇこのフラッチェは。わかりました。そこまで言うのであれば(言ってない)おれも支えるのは吝かではない。この思考に至るまで僅かコンマ二秒だった。
「何回転けたら気が済むんだ? 足元にはちゃんと気を付けろ」
「……………………」
ちゃんと支えてやったのに、ギロっと効果音が聞こえそうなほど、睨まれた。あれ? これはおかしいね。助けてあげたのにこの反応。一体全体どういうことなんだろうか?
「──どうした? そんな顔を真っ赤にして」
「どうしたもこうしたもあるかっ! さっきから胸ばっかり触って!! あんたわざとやってんの!?」
「すまんすまん、平たいから全然気がつかなかったよ」
「平たくないわよ!! 少しくらいなら膨らんでいるからっ!!」
まさかのカミングアウトである。美少女から自分のおっぱいのサイズを教えてもらえるとはありがたや。今日まで生きてでよかったぁ! 神様ありがとう。
「少しって見ただけじゃ全然わからんぞ? もっとわかりやすくしてくれないとおれはわからないぞ、フラッチェの胸のサイズは」
「──っ! フラッチェ言うな!! ……それならこれでどう?」
赤髪ツインテールことレンちゃんがいきなりストリップを始める。いやここ、路地裏だけど人が通らないこともない。なんて大胆なんだこの美少女は。レンちゃんはケープみたいな服を脱ぎ捨て、無い胸を張る。体のラインがはっきりと分かる服を下に着ていた。また無い胸を強調しているけれど強調する胸がないのが悲しいかな。
「どう……とは?」
「胸よ胸! ほら! これでわかったでしょ? 少しはあるって」
「……………………」
どう見ても、断崖絶壁、まな板、ぺったんこ、フラッチェである、一体何を根拠にこのように胸を張れるのだろうか? 貼るなら御老人にでも腰によく効く薬草でも貼っておいて欲しい。喜ばれるぞ? いやしかし、見事なまでのフラッチェですな。いやおれは別にフラッチェが悪いとは言っていないぞ? 大きい胸も小さい胸もそれぞれ良いところがある。因みにおれはどちらも大好きだ。
おれが黙っていると、レンちゃんがプンスカ暴れだす。地団駄を踏みまくるウーマンになっている。そして負け惜しみとも取れる発言をした。
「お、おっぱいが大きくたって良いことなんて無いんだからね!!」
「……………………」
ちょっと涙目になっている赤髪ツインテール。灼眼がうるうるしている。不謹慎かもだけど女の子涙目って何でこんなに可愛く見えるんだろうね? 世界七不思議だよ(嘘)。
「……ふ、太って見えるし?」
「……………………」
「……そ、それに肩も凝るって聞いたわ!」
あ、それは確かにそうだろうな。シルクちゃんはいつも自分で肩を揉んで辛そうにしていたからな。む? そうだ! シルクちゃんの方が凝っているならおれが揉んでやればいいじゃない! 何故このような俺得イベントを見落としていたんだ! よしっ! 思ったが吉日。早速帰ったらシルクちゃんの肩揉みをしよう。決してやましい気持ちがあるわけではない。純粋にシルクちゃんの身体が心配だから、お世話になっているし労ってあげたい。そう思う今日この頃でした。
それにしても、レンちゃんはそうとう小さいおっぱいにコンプレックスを持っているらしいな。ここは一つ、おれが小さいおっぱいも大きいおっぱいにも負けていないというところを教えてやらねばならないな。
「──レンちゃん。小さい胸にも良いところがいっぱいあるんだぞ?」
「──だから! フラッチェって…………て、あれ?」
いきなり名前で読んだから、戸惑っているレンちゃん可愛い。
「まずは、そうだな。どんな装備でも着ることができるってところか、大きい胸だと鉄の胸当てとかフルプレートとかは着にくいだろうからな」
「……そ、それはそうだと思うけど……」
おれの言葉に少し聞き入り始めたレンちゃん。さっきまで大きいおっぱいを批判しまくっていたときとは大違いだ。
「あとは、幼くて可愛らしいっていう利点もあるぞ?」
「かわっ、可愛い……………………?」
「そうだ、可愛いんだよ、胸が小さい女の子っていうのは。男の中には胸が大きくて大人っぽい女性より、胸が小さくて幼さを感じさせる女性の方が好きだって人もいるからな。だからそう胸が小さいからって気にすることはないぞ?」
「……そ、そうなんだ」
何やら、感心したようにおれの方を見つめる赤髪ツインテール。相当まな板のことを気にしていたらしい。レンちゃん、何も気にする必要は無いんだよ? 貧乳はステータスだ、という言葉もあるくらいだ。貧乳は考え方によって武器になったりもする。ようは使いようだ。
扱い方を間違った大きなおっぱいは、扱い方を工夫した小さいおっぱいに負けるのだ。
だからレンちゃん。おれは君のこれからに期待する。たとえこれからその小さいおっぱいが成長しなくても、その小さいおっぱいをどう工夫して武器としていくのか。それを楽しみにしている。
……………………おれは一体、何を言っているのだろうか?
やべぇ、貧乳について考えすぎて頭がおかしくなっちまったぜ。落ち着け落ち着け、こうゆう時はクールに行こう。焦ってもしょうがない。クール、ザッツクール。ふぅ、落ち着いた。
「胸が小さくても、気にすることはないってことがわかったか?」
「……うん、分かったわ。あんたの言葉信じてあげる」
初対面の相手に、貧乳だけど気にするなと言われているのに素直に信じるレンちゃん可愛い。この子大丈夫か? 何だが守ってあげたくなってきた。この子も冒険者だし、たまにパーティでも組んで依頼を受けるものありだな。またフラッチェ弄りしたいし。




