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24.秘密の関係……って大変だ

 俺は今日この日を待っていた……


 体育祭の日から夏帆に想いも告げられず、工藤先生との仲も確実な証拠が得られないまま夏休みに突入し、さぞかし焦りを感じていると思うだろう?

 確かに焦ってはいる……

 二人の仲を暴くために毎日毎日嫌というほど先生と夏帆のやり取りをくまなく見てきたつもりだ。

 でも、何も出てこない。

 全くスキもない。

 でも俺は間違いなくあの二人には何かあるって思ってる。


 ここまで執着するのは、俺はやっぱり夏帆の事が『大好き』だからだ。

 入学式にただハンカチを借りただけなんだ。

 初日だってのに、体調が悪くてトイレと教室を行ったり来たりしている俺をずっと気にしてくれていたのか、夏帆は誰より先に『大丈夫?』って声をかけてくれた。

 誰一人俺に近寄ってくる奴なんかいなかったのに。

 吐き気が止まらなくて、手を口で押えてまたトイレに駆け込もうとした時、彼女はそっとハンカチを差し出してくれた。汚れるのが分かっていて……


 彼女が天使に見えた。

 こんな優しい子がいるなんて……感極まって情けなくも泣きそうになった。


 その時俺は決めたんだ。

 夏帆を絶対に俺の彼女にするって!


 それはたとえ相手が工藤先生だったとしてもだ。

 俺の青春を、全て夏帆に捧げたいと思ってる!!



 ……だから、考えたんだ。

 夏休みに二人を誘って一日張り付いてやろうと。


 友香には適当にみんなで海に行きたいなって誘ったら簡単に乗ってきた。

 工藤先生の目の前で、俺は夏帆にも『一緒に行こう!』とわざとらしく声をかけ、二人の顔色をうかがった。

 何も知らない友香の『夏帆も一緒に行こうよぉ!!』というしつこい押しに俺は助けられて、まず彼女との約束の取り付けに成功した。

 傍にいた工藤先生には『海だと生徒だけじゃ心配なんで、先生付き添いで来てくれませんか?』そんな心にもない理由をこじつけて声を掛けたら、簡単に『いいよ』と答えやがった。


 やっぱり気になるんだろうか?

 そりゃそうだよな。

 ホントに先生と夏帆が付き合っていたんだったら、夏帆のことが好きな俺様と一緒に彼女が海に行くなんて、放って置ける訳がないよな?


 まんまと罠に引っ掛かりやがって!!

 勝ち誇った気持ちになって、俺はフン!と鼻を鳴らした。





「ねぇ、先生。本当に大丈夫なの??」

 夕食のハンバーグを頬張る俺を夏帆が心配そうに見ている。

 今日、俺が小島の誘いを了承してしまった事について、彼女は不安になっている様だった。


「遠足に引率するようなもんだろ? いつも通りにしてれば大丈夫だって」

 口をもぐもぐ動かしながら、夏帆の話に軽く返事をしては見たものの……

 正直内心、小島には俺たちの関係が悟られているんじゃないかと最近心配になっていた。


 体育祭の後から小島の俺に浴びせかける視線が尋常じゃない。

 やたらと親し気に話しかけてくるし、その会話の中に必ず夏帆も呼び込んでくる。

 俺は特別警戒態勢を張って、夏帆とも油断しないようにと毎日話し合っては来たが……


 もちろん断るって選択肢もあったんだ。

 でも……万が一ってことがあるだろう?

 小島は夏帆のことが間違いなく好きだ。

 それは確信を持って言える。

 そんな奴と一緒に海?

 無理だ!ダメに決まってる!!

 いくら佐藤も一緒に居るからって、あの子は間違いなく小島の味方だ。


 ……はぁ。

 まぁ、大丈夫だろう……

 夏帆は今この危機的状況をちゃんとわかっていると思うし、きっと上手くやってくれるはずだ。


「……うん。できるだけ私は友香と一緒に行動するようにするね。先生巻き込んじゃってごめんね。私がちゃんと断れればよかったのに……」

 しゅんとする夏帆の頭を撫でた。

 彼女にはあんまり我慢をさせたくない。

 俺と一緒に居ることで、友達との夏休みをつまらないものにさせたくない。


「大丈夫だよ。心配するな! なぁ、海に備えて明日買い物行かないか? ちょっと遠出すれば誰に見つかることもないし。ほら、最近アウトレットのモールが出来たのテレビでもやってただろ?」

 夏帆が急に顔を上げ満面の笑みを見せる。


「うん!!」

 キラキラと輝いているその瞳を見て、俺はまた彼女を好きになる。

 素直で、眩しくて……

 いつまでも、俺は彼女の笑顔を守り、誰にも渡さないと心に固く誓ったんだ。



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