クリスマスイブ~最期の夜
その頃ゆう。は病院のベッドで昏睡状態に
陥っていた。
どうやら、弱った体で丸一日外出し、
夜風にも当たっていたせいか、肺炎を併発したらしい、、、
「すみません…許可した私の責任です。」
と主治医、丸山の言葉に、母、美枝は
「いえ、先生には、この子の我儘を赦して下さり、
感謝してます」
「この子も、この子なりに、
悔いを残さないようにした結果です、
きっと本望でしょう…」
「でも、もう…目を覚さますことは無いのでしょうか?」
美枝は覚悟を決めて聞いてみた。
「それは何とも…」
丸山はそれ以上答えることができなかった・・・
呼吸器をしたゆう。は、
ただ眠ってるだけのように見え、
とても生死の境をさまよってるようには見えない。
「ゆう!…ゆう!」
呼び掛けたら目を醒ましそうな気がして
美枝は名前を呼ぶが、一向に反応は無い。
「ゆう…あなたはまだ22歳なのよ、
これから素敵な恋をしたり、楽しいことが沢山あるのに
このまま終わっていいの?、、、目を覚ましなさい!」
母の声が虚しく病室に響いた──────
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「煌太~♪明日の夜どうする~?」
野村恵美が休憩中に聞いてきた。
「どうする?って…べつに用事ないけど…」
「用事無いって、、、?
明日は、恋人達の最大のイベント、
クリスマスイブだよ!
私たち付き合ってるんでしょ?」
まだ恋人って感じじゃないし、、、と思う煌太…
「まったく、もーーー!
いいかげん、付き合ってるって自覚してほしいよね!」
少し苛つく野村恵美…
「だって、クリスマスウィークは忙しくて
ずーっと仕事だったから…」
「明日は二人共早番だから、6時に上がって
イルミネーション見に行こうよ」
「イルミネーション?、何処へ?」
「相模湖で有名な場所があるのよ、
ここからなら1時間くらいだからさ」
「じゃあ、行ってみようか~」
あまり気乗りしない煌太だったが、
野村恵美と付き合うことで、
早く自分の気持ちにケジメを着けようと思った。
「ホワイトクリスマスになったら
ロマンチックだよね~」
「えーーー!
僕、寒いの苦手だしーーー」
野村恵美は明日のイルミネーションデートで
ポン太と同じ写メを撮り、サイトへアップして、
さりげなく付き合ってることをアピールしようと
企んでいた。
そうすれば、誰もポン太に近づかないだろうと…
もちろん、ペコリンも────
夜になり、サイトを開いてみたが
ペコリンからの返事はなかった、、、
もしかしたら、もうサイトに来ないのかな?
僕のつぶやきや、メッセージに
反応がないのは初めてなので
凄く不安になる、、、
相変わらず野村さん…いや、momokaさんは
マイペースにつぶやき続けてる。
◇◆◇◆◇◆
ねえねえ~(*´∇`*)
明日はクリスマスイブだよ!
皆はどんなイブを過ごすのかな?
私は大切な人とイルミネーションデート♪
・・・なんちゃって~(*≧∀≦*)
◇◆◇◆◇◆
サイトで言いふらしてるしーーー
─────イブの朝、
店内は開店と同時にクリスマスの準備であろう
お客様でごった返していた。
「野村さんのサンタ姿、可愛いね!」
と、煌太が言うと
「ミニスカサンタにしたら、エロオヤジが
ケーキをいっぱい買っていきそう」
今日は二人とも、サンタ姿でケーキの販売だ…
6時までにこのケーキの山を
売り尽くさなければいけない、、、
「いっぱいって言ったって、一人で2個も3個も
買わないよ~」
「それでも頑張って捌くのよ!」
幸い、予約のお客様がほとんどなので
みるみる捌けていった───
「さあーーー、今度は私たちのイブだよ!
楽しまなくちゃ~♪」──────
さすがにクリスマスイブ、、、
イルミネーション会場のゲートの前では
多くのカップルが列を作っていて
その横で大きな雪だるまのイルミネーションが
二人を迎えてる。
「わーーー!あれカワイイーーー♪」
野村恵美が子供のようにはしゃぎながら、
写メを撮っていた。
「一緒に撮ろう♪」
と、半ば強引に、
雪だるまをバックにツーショットを撮る、、、
1枚は顔もはっきり判るように、
もう1枚は顔がシルエットになるように撮った。
もちろん、シルエットの方を
サイトにアップするつもりだ、、、
「煌太も写メ撮って、サイトのフォロワーさんに
見せてあげたら?
こんなに綺麗なんだから、きっと喜ぶよ」
ペコリンにも見せてあげたい・・・
煌太は一緒にいる野村恵美よりも
ペコリンのことが気になって仕方がない
ゲートを抜けると、目の前には
山一つ分をLEDに埋め尽くされたような
青や白、ピンク、緑に彩られた光の世界が広がっていた。
「うわーーー!すごーい!」
光の滝、流れる青い光、行き交う光のロープウェイ…
あちらこちらに光の雪だるまや動物達が
遊んでる・・・
まさに光の国だ
中でも光のトンネルは圧巻で、
異次元世界に入り込んだようだ──────
煌太と野村恵美は写メを撮りまくった
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煌太と野村恵美がイルミネーションデートを楽しんでる頃、
母の願いが届いたのか、ゆう。が意識を取り戻した。
しかし、丸山が言うには一時的なものらしい・・・
ゆう。の命の炎は消えかかっていた。
「ママ…親不孝でごめんね」
「何言ってるの!きっと良くなるわよ」
「ううん、、、ワタシには判るの…」
虫の息のように、やっと答える、ゆう。
「ワタシの…スマホ…」
「はい、これ…どうするの?」
「メッセージを残しておきたいの…」
ゆう。は、おぼつかない手でサイトを開いた。
そこに、ポン太からのメッセージを確認し、
目を閉じ、
「ポン太さん…」と、
声にならない声を漏らした、、、
休み休みメッセージを打ち終わると、
「クリスマスに逝くなんて…ドラマチック…よね」
「まるで映画みたい…」
「ママ・・・」
「今のうちに…言っとく…ね…」
「産んでくれて…ありがと…う」
と呟きながら、送信ボタンを押すと
スマホを握ったまま、再び昏睡状態に陥った───




