サイトと現実の狭間で揺れる想い
あれからどうやって店を出て、
どうやって電車に乗ったか判らないほど
ゆう。は深い悲しみに陥っていて、
気がつくと病院の駅を遥かに乗り過ごし
海辺の街に降りたっていた。
あてもなく歩いていても、頭の中に甦ってくるのは
ポン太と野村恵美の親しげな映像ばかり・・・
「ワタシもあんな感じになれたら…」
でも、それは叶わない夢
トボトボと海岸線の道を歩いて来たら
見覚えのある景色が広がってきた。
運命の糸なのか、神様の悪戯なのか、
「こんな…追い討ちを掛けるようなこと、しないでよ!」
そこは砂浜にできた、芝生の公園
羊のオブジェが並んでる。
そう、ポン太と文字デートした羊の公園だった、、、
雄大な鹿島灘の海をバックにして
羊や牛やウサギが仲良さそうに遊んでる
その羊を前にして、ポン太の笑ってる姿が
浮かんできた。
まるでここに一緒にいるかのような感じだ。
「背中に乗ってみて」
幻のポン太が言ってきた。
ゆう。は言われるまま、羊の背中に乗ってみる…
ポン太もゆう。の後ろに乗ってきた、、、
背中越しに感じるポン太の温もりに
まるで前世から一緒にいるような
不思議な感覚に包まれた。
「僕はサイトの中とか外とか関係無いよ、、、
ポン太はポン太…いつもペコリンの心の中にいるよ。」
心に染みてくるようなポン太の言葉に
ゆう。は、やっと判ったような気がした。
そうなんだ…
ポン太さんと仲良くしてたのは
ワタシじゃなくてペコリンなんだ…
ポン太さんも、きっと、それに気づいたんだ・・・
ポン太さんもペコリンもサイトの世界で生きてるんだ───
ワタシは現実を受け止めて
残された時間を精一杯生きよう!
「もう少しこのままでいさせて」と、
後ろのポン太に手を伸ばそうとしたが
その時すでに、ポン太は消えていた。
病院へ帰ろう・・・
もうすっかり夕闇に包まれた頃
やっと病院近くの商店街まで来た。
あちらこちらから聞こえてくる
クリスマスの定番ソングとイルミネーションの中を
独り歩き続けるゆう。
きっとポン太さんも、あの女性と過ごすんだろうな~?
いつもは楽しみにしてたクリスマスも
今年は来てほしくない。と思った、、、
と、いうよりも
その前に死んでしまいたい。とさえ思う。
病室に入ると、
「いったい、どこに行ってたの!」
心配そうな母、美枝が叫んでた、、、
きっと主治医から連絡が行ったんだろう。
「ごめんなさい!ママ…」
そう言うとその場で倒れ込んでしまった。
「ゆうーーー‼」
「せんせーーー‼」
美枝はただならぬ気配を感じ、
主治医の丸山の元へ走った────
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その晩、煌太は夢を見た
ペコリンと羊の背中に乗った夢を─────
夢の中のペコリン…
ポン太は顔を知らないけど
確かに泣いていたと思う
何故泣いていたのか?
単なる夢なんだろうけど、少し気になる夢だった・・・
翌朝、気になった僕は、
ペコリンにメッセージを送ってみた。
◇◆◇◆◇◆
昨日、ペコリンの夢を見ました。
何故か判らないけど、泣いてたんだよね、、、
こんなに心配するなんて…
顔も知らないのに、変だよね?
でも、僕はきっと、ペコリンが好きなんだ・・・
◇◆◇◆◇◆
何もなければいいけど、やっぱり気になる…
サイトはサイトと割り切らなきゃいけないのに
心のどこかでそれができない僕がいる────




