⒋ 目視亜(5) 隠レ見ノ
「…はぁはぁ……な、何だったんだ?あのメイドは?」
めめめを執拗に狙っていた妙なメイドー『町田リンジー』から少しでも距離を突き放そうと、小さな身体の体力が続く限り懸命に走り続けていた幼子。
ひたすら足を動かすことだけに意識が向いていたが、流石に走りっぱなしで疲れが溜まってきたのか、何処かに休めるところは無いかと近くの建物の中へと避難することにした。
意図せずのことだったのか、それとも自然とそこに向かって足が動いてしまっていたのか、避難先として入った近くの建物というのは――
本日二回目の来店となる【LinoA/ntique Shop OMEATE】であった。
確かにあの暗い店内の中なら、身を隠すのに適した場所ではあるだろう。
「………いらっしゃい」
店内に入った瞬間――、ニタァと不気味な営業スマイル?を浮かべて出迎えるはこの店の店主ー舌を出した大きな唇の髪飾りをツインテール状に左右に結い、スチームパンク風の片目ゴーグルを右目に掛け、ツギハギだらけのアンティークなうさ耳ハットを頭に被った………相変わらず、頭部だけでも情報量の多い――妙な格好をした奇人漂う人物の登場である。
「おや……、これは随分と可愛いお客さんが来たものだ」
店主に初見さんと思われてしまうのも不思議では無い。めめめ側からすれば馴染みの店の店長であるが、店主側からしてみれば小さな子供が来店してきたと思うだけで、まさかこの態で常連客と同一人物だとは思いもしないことだろう。
「……ええ、……ええ、実に可愛らしいお姿をしておりますこと………【執行犬の……いえ、【白妙の蟲眼金】でしたか」
「えっ………何故、唐突にそんな名が――」
唐突に正体を当てられ、ビビるめめめ。
「……その反応………やはりそうかい、ふふふッ………」
そう言って、からかうように口角を上げる店主。
「まさかッ!“目魂主”…………」
瞬間――、店主を警戒して構え始めためめめ。
「“目魂主”………その言葉の響きには聴き覚えが―――………嗚呼、すまない。
誤解される様な反応をとってしまい、申し訳無い。……だが、誤解しないでおくれ。私は君が思っているような存在で無いからの。そう警戒せんで良い。
――ただ、君の声の特徴が馴染みのお客様………最近SNSで広く見かけるようになった【白妙の蟲眼金】………いや、この場合――【執行犬の亡霊】と言われていた頃にSNSで流していたショート動画で聞いた声が、と言った方が正しいか。
そこで話す声の感じが君の声から、“近しい”ものを感じる…………平たく言うと、同一声―――そう、合致していると私の直感が囁いていての。
――と言うのも、マスクにはボイスチェンジャー機能が搭載しているが、ボイスチェンジャーの有り無しに関係無く、当店に並んでいる殆どのマスクが店個人で製作したものでの。
元はうちの店員が趣味で手作りマスクをSNSに上げていたのを見て、いっそそれらを売ってこの店の宣伝にするのはどうだろうかと、ただの思い付きで言っただけだったのだが――、
すっかりマスク作りに熱が入ってしまった店員がどんどん新作マスクを作るものだから、完成する度一つ一つ売り物にして店に並べているが………これが如何せん、商売としては全くと言って良い程、成功しちゃいない。それこそ……、例の馴染みのお客様ぐらいにしか売れないときた」
「は……はぁ………?」
何言ってんだ?……という様な様子で、思わず間の抜けた声を漏らしながら首を傾げるめめめ。
「だが――、彼女が実に楽しそうにマスクを作るものだから、無理にマスク作りはしないで良いとも言えなくての。これではアンティークショップと言うより、マスク屋さんな気もするが………野暮なことは言うまい。
日々様々なマスク商品を展開している中――、そのいくつかに内蔵している例のボイスチェンジャーなのだが、仕入れ先は一律一つの会社で製造しているその中でも一番安価な型式のボイスチェンジャーだけに限定しておっての。売り上げが出ている訳でも無いから、色々なところで仕入れたって仕方が無いからの。
そのせいか、同一型式のボイスチェンジャーの加工精度――、 音の変域……?とでも言うべきか、感覚的に耳が覚えてしまって、何と言うか……周波数を―――」
「――耳が記憶していると?」
不意に話の最中でめめめが言葉を被せてくると、暗い店内の中で一瞬不敵な笑みを浮かべた店主は話を続けた。
「声帯の長さの違いで現れる声の高低差――、吐き出した空気によって声帯が振動する回数――、声道の大きさの違いからくる声の響き方――、育った環境――、親や周りにいた人の話し方を聞いて真似し身に付いた声の出し方や日々摂取する栄養素によって変化する体付き――、筋肉や骨格は勿論のこと、喉や口、鼻などの器官の大きさや形――、肺活量や唾液量といった様々な要因によって口から自然と発せられる、率直で作り声をしないありのままの声ー『素の声』には人それぞれ違いが現れるものだが………、
普段、日常的に耳にする様々な人の声質や声量、発音&抑揚、話すスピード、呼吸頻度――、代行屋/【白妙の蟲眼金】を名乗る輩が投稿した写真から見るに、店手作りの一点物マスクを被った人物であることから、その正体はこの島の人間であると見て良いだろう。……そもそも、あのSNSサービス自体――、この島でしか利用されていないものであるからの」
「………(………普段お店にいる時は口数少ないから知らなかったけど、やたらとこの人喋るものだなぁ)」
一転して黙りこくるめめめ?を尻目に――、店主の話はまだまだ続く。
「その上でこれまで私が布都部島で耳にしてきた人声に、職業病……?と言って良いものなのか判断に困る話だが、決して質の良い訳では無い――同じボイスチェンジャーばかりを発注していたせいからなのか………、
すっかりお耳が取引先メーカー最安《御面仕掛ケノ絡繰音》の加工性能待った無しの高低音幅や声帯創声出力の低スペック加減聴勁して――それこそ“考えるな、感じろ”じゃあ有りませんが、野生の嗅覚さながら感覚的に――………、御面仕掛ケノ絡繰音だけは些細なことでも耳で特徴を捉えられるぐらいには耳が鍛えられてしまっているとでも言いましょうか………、
それこそマスクのちょっとした隙間から地声が漏れ出してはいないか、何回も何回もマイクテストを繰り返し行いながら自然と独特な加工音を耳にしている内――、自然と脳内で(安物加工音が)無限再生出来てしまうくらいには耳に残る状態に毒されてしまっている訳で…………
耳に残るその音と周りで耳にする人声を聞き比べてみた時、聴感覚的に【白妙の蟲眼金】の元の声と思われるのが君の声では無いかと私の聴力が囁くのだよ」
「……えーっと、それ………本当に言ってます?……いくらボイスチェンジャーが安物であろうと、人の耳だけで声の特定に至れるような離れ業なんてのは流石に話として飛躍し過ぎと言うか………無理に近しくないですか?」
実に聴感覚な話過ぎて素直に耳に入っていけず、それ相応の反応をめめめは見せる。
「――なら、私の聴力を試してみるかい?」
「まさか、例のボイスチェンジャーを私に試すとでも?そんなのボイスチェンジャーに声を当てる時にでも私がふざけて話し方を変えたりなんだりして、まともに整合性を確かめることに協力しなかったら確認することだって出来ないでしょ?」
「くひひひッ……君の言うように、直接の検証で素直に応じるとは限らんからの。わざわざボイスチェンジャーに声を当てぬとも、音韻認識に秀でているかどうか、単にそれを試す……と言うか、示す方法だけで言うなら、もっと良い手段がある。――そう言ったら?」
「良い手段……?一体、どんな提言が飛び出してくるのやら………」
「いやなに、如何に聴力が優れているのか、それを確かめるちょっとしたゲームをするというのはどうだい?
名付けて――《聴取散漫言葉当てゲーム》と言ったところかの」
「《聴取散漫言葉当てゲーム》……?」
「今は他にお客様もおらぬし、この際思い切ったルールにするのも良いだろう。
ではルールだが、まず今流れている店内BGMを曲調の早い曲に変え、それを大音量で流す。
出題側はその状態で口元を手で隠し、文字数制限関係無しに思い付いた言葉をひっそりと声に出して提示する。
言い終えたタイミングで手を下に下ろしたら音楽を止め、今度は回答側が答える場面へと移り、出題された言葉を一言一句間違わずに言い当てることが出来れば勝利。ただし回答権は一回のみとし、言い間違いは即座に負けとする。
また、出題側が言葉を口にする際、口元を隠す代わりに後ろを向いて言うのでも構わないが何であれ、口の動きが見えないように立ち回ることが絶対条件である。
……そうでもしないと折角――、回答が合っていても実力を素直に信用してもらえなさそうからの」
「成る程、そういう単純なゲーム……」
と、めめめがルールを理解した様子であったにも関わらず、店主は話を続ける。
「それに何処から何処までを言った言葉が出題の言葉だったのか、回答側に示す為の合図としての役割でも露出と遮蔽―――、《口元隠すか後ろ向くか》と《口元現すか前を向くか》を起こすことは実に有効的であるからの。言うまでも無いだろうが、君が出題者で私が回答者だ。
意地悪に声を抑えて言うも良し。将又試すように……聞き取りの妨害となるBGMを活かしてやろうと、敢えてギリギリを狙って音階に似せて言うようにして、撹乱させてやろうと仕掛けるも良し。言葉の提示方法についてはどんな手段であれ、声に出してくれさえすればそこは自由とする。
本来はこのようなゲームを行う場合には、何度か繰り返し言ってもらえる回数を設けた上で見事正解を言い当てることが出来るのか――というのが、一般的にこのゲームを行う際の(ゲーム)バランスとしては最良と思うが、今回私に対して君が口に出す回数は一度きりで構わない。そうでなくては、本気で私の聴力を信じて貰えないだろうからの」
「証明するにはそのくらいじゃないとって考え方――、店主さんよ分かってんじゃん。……けど、話長過ぎ」
おおよそ虚勢を張ってしまって、引くに引けなくなったのだろう――と、何処と無く軽視しているような………露骨な態度を取るめめめ。
「つまり、このゲームの味噌は如何に周りの雑音に引っ張られること無く、一度きりしか口にしない言葉に気を散らさず出題側の小言にのみ耳を傾けていられることが出来るのか、そこに全て掛かっているって訳ね。――良いね、やろうよ。間違わずに一発で言い当てられるって自信があるのなら、その聴力をしかと示してもらおうじゃん」
「それではルールを把握して頂いたところで同意も貰えましたので、早速ですが始めると致しましょうか」
店主はそう言って、手元のEPOCHから何やら専用のアプリでも用いて操作しているのか、突如として天井に備え付けられたスピーカーから流れている曲が変わり、そのまま音量も遠隔で調節出来るようで、だんだんと音量を上げ………ないで――、
「あっ……そうそう、音量を上げる前に………
鳴傀門くん」
そう名前を呼ばれて現れたのは――、顔前に絡繰仕掛けの傀儡蜘蛛を装着した、店主に負けじと変な格好をした店員だった。
「何でしょうか?」
「この小さなお客様にちょっとしたゲームをして上げようかと思っての。少し変わったゲームをするから、これから店内のBGMの音量を大きくしようと思うのだけど、その前に一度、地下室へと避難するかどうか聞いておこうと思っての」
「……何故、この子とゲームをするという話に………?」
「お察し悪いの、鳴傀門くん。こんな小さな子が一人で店に来たんだ。何か事情がある思って、遊んで上げようとなったに決まっておろうに」
「えっ……誥富弭さんって、意外と子供に気遣うこととか出来る人なんですね。てっきりそういう建前ってだけでその実――、全く関係ない理由から“戯れている”………と言うより、“試されている”のかと……」
「……雇われ君は嫌なことを言うの。――その態度は構わず避難しないと、そう解釈して良いかえ?」
店主――もとい、本名:『誥富弭 恢眈』はそう言うと、鳴傀門の返事を待たずして手元のEPOCHで店内BGMの音量を上げ始めた。
そうして準備が整ったところで、誥富弭は左右の耳それぞれに手を当てて聴く姿勢になり、静かに意識を集中し始めた。
その際――、さっきまでスマートリモコン操作を行っていた腕のEPOCHが所作の弾みで触れたりでもしたのか―――
ほんの一瞬、それとなく店内が少し明るくなったような感覚がめめめにあった。
そんな中――、確かにさきの鳴傀門の返しでは誥富弭にそうされても仕方が無いように思えるが、それでも直接音量を上げて良いか聞かれなかったことに少なからず、思うところがあった?、のか………
「うわぁー、さらっと意地悪されたんですけど………。たった一人の店員を大切に扱わないとかそれ正気です?
――とは言え、あの店主が子供と遊ぶところなんてそうそう見る機会もありませんし、珍しい物見たさに言われるがまま居座るのも良しとしましょうか」
実にわざとらしい棒読みで不平を零す反面――、店主と子供の間で始まる謎めいた超展開を面白がって好奇の目を向ける鳴傀門。
そんな彼女を余所に――、ここでめめめに動きがあった。
「……あーあ、知らないよ」
ボソッとそう呟いたのを皮切りにめめめは可能な限り――、誥富弭から距離を取った上で僅かな口の動きから言葉を読まれるようなことがあっては意味が無いと言わんばかりに両手で口元を覆い隠しては、殆ど言っているような言っていないような小言を長々と言い始める。
「………………………e……………………………ァ………………………………」
それから――、恐らく満足のいくところまであれこれ言ったのだろうか、口元を抑えていた手を下ろすとめめめは元の誥富弭のいるところへと戻って来ては、再びその口を開いた。
「ほらっ!言い終わったから早くこの爆音やめろっ!耳が痛いったら、ありゃしねぇ」
お声が掛かったかと思えば、叱り付けるようなめめめの第一声に、誥富弭は手元のEPOCHですぐに店内BGMを元に戻した。
「ようやく、マシになったわ。それじゃあ、さっき私が口元を隠しながら言った言葉を一言一句欠かすこと無く答えられるものなら答えてもらおうじゃないの」
自身が述べた言葉がそっくりそのまま当たる訳が無いだろうという自信の表れなのか、その見た目も相まって、ただただめめめが小生意気な子供を彷彿とさせるようにしか見えなかった。
特に気に障った様子も無く、誥富弭は一呼吸置くと回答時間に入った―――。
「……ふぅ。では、答えるとしよう。――“Near an ear, a nearer ear, a nearly eerie her ears err here feel to here, hears near, kneel here and feel her voix.はいぇぐへぇ!”――何やら英語じゃない単語を最後に言った後にクセの強い訛りで『早く言え』と言って来よったようだったからの。
言い直しが出来ないルールを出した時点で、場合によっては早口を要求されるだろうかと警戒しておったが、まさかこんな分かりづらい形で出てくるとはの。………ったく、良い性格をしているよ」
「……へ………?……やば………えっ………?……小声で………しかも距離を離して…………違和感無く混じって言ったつもりだったのに、初めて耳にした筈の“出題ワード”を意図含めて言い当てられるとか、どんな耳してんの。
突然のことだったから耳から着想を得てふと、ある早口言葉を思い出して取り入れていたとは言え、聴力を測るならここは日本語より外国語の方が難易度跳ね上がるだろうと、良いの(頭に思い浮かび)出たじゃん!って思いながら、即席ながらに近い発音をする言葉並びの構成で――、(地元民でも伝わるのが少ない可能性の)灰汁が強い言葉も乗っけりゃあ容赦無いだろうと調子こいてた私が馬鹿みてぇじゃんか」
「けひひひッ……だがその分――、私の耳が節穴では無いことが十分に証明出来た筈だ。
………お前さんが【代行屋】なのは、事実だろう?」
「……あんな耳をしているなら、貴女には誤魔化すだけ無駄か。――ああ、そうだ。私が【代行屋】さ」
「おお、やはり違い無いか。素直に吐き出してくれて、私は嬉しいよ。
安心すると良い。最初にも言ったように私は目魂主とやらでは無いが、目魂と言うからには《眼球》――【目】のことであろう?
実は私も似たような“生得”………いや、それよりも《転付された非天然物》と言った方が実質正しいか。
物は違えど、ある種似た境遇を持つ同士――とんだ御冥福を貰い受けた、話の通じる理解者だとは思わんかえ?」
「その特殊な目魂については持ってないが、似た境遇を持つ存在……そういや、引き継がれた記憶の断片に引っ掛かる存在が………ま、良いや。何やら同業らしいし?こっちの事情を汲んだ上でこの店に匿ってくれたりとかしてくれる感じ?」
誥富弭の口から気になる言葉が飛び出したことで、何か鍵になりそうな記憶が呼び起こされそうな気がしたのだが………真っ先に逃走の末――、疲弊した体力を少しでも休める時間が惜しいと思ってのことか変に勘繰るのは止めて、颯爽と茶目っ気混じりにそう口にするめめめ。
「匿うなんて大層なおもてなしは勘弁願いたいが、営業時間の間に居座る分には好きにすると良い。
さながら――、追っ手から逃げるように駆け込んで来た様子を見るに、大方同じゲームに巻き込まれた目魂主から逃げて来たとかそんなところであろう?」
「……えっ?なになに、どういうこと?匿うのはごめんだが、居座るのはどうぞご勝手にって本当?
もしかして、事情を汲み取って同情だけはしてくれちゃう感じ?知り合いの誼みってやつ?」
「きゃひひひッ……、調子に乗るでない。ほんの少し、寄り添うぐらいの面倒なら見てやらんことも無いと言ったまでさ」
「あっ、そういうのは何だって良いから。それじゃあ、お言葉に甘えて……っと」
そう言うと、めめめは店内に置かれた肘掛けの付いたナーシングチェアへと座り込んでしまい、一息つくだけのつもりが頭で思う以上に疲れていたのか、そのまま彼女は身体を仰け反らせながら静かに眠りについてしまった。
そんな様子を遠くから見る誥富弭の後ろから、ひょっこりと店員の鳴傀門が現れる。
「……良かったのですか、店主」
「余程、走って疲れたのか――そういうところは見た目と同じく、年相応なのだろう。どうしてこの姿になったのかは後で聞いておくとして………今だけはそのままにしておいてやれ」
「そう仰るのでしたら、店主である貴女の意を汲みますが………にしても、噛まずに易々と言い当てるをしておいては、力を使ったことはバレバレでしょうね。……そうは思いませんか?
各国における布都部島では唯一の“耳神の協力者”――耳力:【地獄耳】の店主さん」
後ろに立つ鳴傀門の視線の先には誥富弭の耳裏から奇妙な模様が――、まるで『悪魔の耳』を彷彿とする正面向きに描かれた、禍々しい形の耳輪をした耳の形状に発光する様子がハッキリと映るのだった……。
〈能力解説〉耳力:【地獄耳】
悪魔の耳みたく正面向きに描かれた、先の尖った耳輪をした紅い耳のシルエットが耳の裏に浮き出ている間(端的に力を開放している間)、明らかに人の耳では拾える筈の無い遠くの音や声を拾うことが出来る異能
聞こえてくる声のイメージとしては、男女様々な人が口々にリアルタイムで話す言葉が一度に耳に入ってくる為、まるでそれぞれが自分勝手に声合わせもせず、合唱練習をしているかのような雑多な音や声が常に聞こえ続けてくる状態。更にその中で色々な環境音なども聞こえてくる為、発動中は常時大量の音が耳にこびり付き、雑音が無くなる瞬間がまず無い。
一見すると、多くの音や声を拾うことが出来るだけのノイズのような能力でしか無いが、200m程の距離であれば特定の人や物に対して出ている声や音だけを聞き分けることが可能。
集中すれば、その精度は地球全土から聞こえる音や声を拾うことも出来る。だがそこまで遠いと、音全体を拾ってしまい、特定の音だけを聞き分けることが出来ない。……とは言え、盗聴器と比べたらその精度は桁違いである。
情報提供者:???〈耳力:【秘聴】 耳を傾けることで、神耳を持つ存在―『神耳人』が扱うことの出来る異能力:【耳力】の秘密を告げてくれる(他の人には聞こえない)謎の声を聴くことが出来る異能の使い手〉
【ボツ案】
実は当初、始めのところでめめめに目魂主であると疑われた店主が(相手は神耳人では無いから特別反感を買うことも無いだろうと)あっさりと耳神の協力者であることを彼女に明かしてしまう展開で進めていき――、店主の耳を疑っためめめはその幼い見た目とは裏腹に、記憶をある程度引き継いでいるからこそ様々な世界線における多種多様な言葉の数々を織り交ぜて即興で考え付いたオリジナル早口言葉を展開し【※正直ここが一番の投稿を待たせてしまった要因である】、一言一句その言葉を間違えずに聞き取ることが出来るかという会話のシーンを挟もうと考え、半年以上最新話を投稿しないで毎日ずっと早口言葉のことだけを考え、頭を悩ませながらその都度書き足していたのですが、こともあろうに書いていた早口言葉のデータがある時消えてしまい、何にも考えられなくなってしまって最終的に当初のものから変化して書いたという経緯がありました。
元々想定予定だった?幻の没やり取りをどうぞお楽しみ下さい――。
〈耳力:【地獄耳】によって一連の騒動を耳にし、正体が【白妙の蟲眼金】であることを知っていたことを店主が話した後――〉
「……いやいや、話だけ聞いたところで信憑性無いって言うか………」
「ほぅ。君は中々に疑り深い性格をしておるようじゃの。――どれ、これならどうかの」
そう言うと、暗がりの室内の中――、店主の耳の裏からボワッと蛍火のように光が漏れ出しては、めめめにその耳の裏を見せるようにくるりと後ろに振り返る。
「これって………」
めめめが目にしたもの……それは禍々しく紅色に光る、先が尖った正面向きの耳――、さながら『悪魔の耳』を彷彿とさせるシルエットが店主の耳の裏に浮き出ているのだった。
「突然のことで驚いたかの。……まぁ、これで君の言っておった――、目魂主……とは違うことに真実味が増したのではないか?」
「は……ははっ………、その耳が人の聴力レベルを遥かに越える能力を宿しているという例の…………、それで私の正体を特定出来たと―――。そいつの持つ力が本物だと言うのならここは一つ、ゲームして頂けませんか?」
「ゲーム………、そいつは命のやり取りという意味――、で言っておるのかえ………?」
「いいえ、ゲームと言われていつもの日常ゲームを真っ先に連想してしまうぐらいに脳がバグっていては、たまりませんって。本当にただのゲームです。
良いですか――。これから私が言う些細な小言を言い当てることが出来れば、貴女の地獄耳とやらを信じるに値すると判断致します。決して口だけでは無いというところを示してもらいましょうか」
「何だ、そんなことか。まるで私のことを試すような物言いだったから、何か過激なことでもおっ始めようとするのかとつい、身構えてしまったものだが、そんなことで君の気が済むのであれば………」
店主は紅色に光る耳の後ろに手を当てるようにもっていくと、静かに耳を澄ました。
めめめは万が一にも口の動きから言葉を読まれないようにと、両手で口を覆いつつも可能な限り距離を取った上で殆ど言っているような言っていないような小言を長々と言い始める。
「…………………ぃ…………………――っと!さーて、今この私が口にした言葉を一言一句漏れず間違わず、言い当てられるものなら当ててみなってーの!」
言葉を言い終えたタイミングで口元を抑えていた手を下ろしては、店主の元に向かっていきながらめめめは挑発的にそう口にした。
「嗚呼、ようやく言って良いのかい。……では、言おうか。
“彼の人の瞳で人見て一目で人仕留て匪徒試図してsit………………西目町西目に待ち…………(中略)…………… 血眼様異嫌なこと止むこと無し”」
「……いや、まさかそんな………。あの嫌がらせみたいに言いづらさを意識した言葉運びをこうもあっさりと言い当てられてしまうだなんて――
※本当は中略の部分もあれこれ文章を書いていたのですが、それを書いていたデータが消えてしまった為に、あれやこれや記憶を掘り起こそうと頑張っていたのですがこれ以上は思い出せず、やむなく公開出来なくなってしまった部分となります。
〈キャラ紹介〉
【顔面に傀儡蜘蛛を付けた謎の店員】:鳴傀門 目糸
とある力のこと以外、店主と出会う前の記憶が分からないと言う謎多き少女。
それ故に今の名前は店主が名付けてくれた仮の名であり、本当の名を彼女自身は思い出せずにいる。ちなみに、朝が苦手。
どういう訳か他人に顔を見られたくないという強い気持ちを抱いているらしく、マスク作りが趣味になったのも元は自分の素顔を隠すために作っていたことが関係している。
ちなみに、店主である誥富弭 恢眈の趣味(他人の会話を盗み聞きすること)を唯一知る人物でもある。




