第539射:ここは本当に
ここは本当に
Side:アキラ・ユウキ
「うわ~……」
「これは、本当に地球の人が関わっていますわね」
「だな」
田中さんから、そしてドローンから送られてくる映像を見て俺たちはそういうしかない。
どう見ても、町の道は車、自動車を意識したモノだ。
今は馬車がお互い走っているけど、そこに自動車が走るものだと俺たちはすぐに理解した。
『ま、というわけで、ウエストスターズはどこかで地球人が関わっているのは間違いない。ジョン・スミスの正体もわかるかもな』
ノスアムで見つけたおそらく、地球出身者であろう本の作者。
偽名の代表みたいな名前だったのが、ここに繋がってくるのか。
いや、実際に会えるかはわからないけど。
「俺たちに手伝えることはありますか?」
俺はそう聞く。
ノスアムの方も忙しいが、ウエストスターズで動く二人の安全はもっと重要だ。
何せ生命線と言ってもいいぐらいの人たちだ。
『そうだな。ドローンを5台連れてきているが、城の偵察と教会の偵察に回すのと同時に、監視カメラの役割もさせる。狙撃できるならその位置だからな』
そういって、3台のドローン制御がこちらに回ってくる。
「分かりました。ですが、残り2台で大丈夫なんですか?」
『そこに関しては自由に増やせるしな。何かあれば増やして対応する。まあ、そっちには退屈な監視任務ってことになる。そっちが見落とせば終わりってわけじゃないが面倒だから頼む』
「大丈夫です任せてください。ノスアムのほうもありますから、一緒にやるだけですよ」
『そうか。そういえば、ノスアムの結界設置はどうだ?』
「そこまで進んでいません。現在結界設置は全体の20パーセントぐらいです。予定よりもちょっと早くはあるんですが、やっぱりやると現場でのトラブルが多くて」
『予定よりちょっと早いなら十分だ。確か予定なら15パーセントだったろう? 5パーセントも早いのはすごいことだ。トラブルがあってそれなら大丈夫だ。まあ、焦りすぎてミスがないようにな。遅れなんて付き物だ。日本が生真面目なだけだからな』
ああ、そういえば日本の工事とかは予定より早く終わったとかで騒がれることがあったっけ?
一応、俺たちも余裕をもって計画を立てているんだけど、それでもちょっと早いぐらいなんだけど。
他所がどれだけのんびりしているんだって思うんだが……。
まあ、田中さんの言う通り、予定通りに進めようとして、手抜きしたり、失敗してしまえば予定が遅れるよりもひどい損害になるしな。
「分かりました。そこは注意します」
『おう。遅れても何も問題はないからな。それにこっちのフォローも頼むんだ。遅れて当然だから気にするな』
そういってくれて少しだけ気持ちが楽になったところで、光が話に入ってくる。
「ねえ、田中さん。結局、アダムズだっけ? その町はどうなの?」
「そうですわね。映像は見ましたが、田中さんたちからの感想を聞きたいです」
『そうだな。アダムズの町は下手をしなくても大抵の建物が5階建てのモノが多い。圧倒的な建築技術があるってことだろう。まあ、と言っても5階建てが限界みたいだが』
確かに、リアルタイムで送られてくるドローンからの映像では、背の高い建物が相応に見える。
ビルが乱立しているという感じだろうか?
とはいえ、地球の都会ほどではなく、微妙に背の高い建物があるぐらいだ。
確かに建築技術はあるみたいだが、高層ビルとまではいかないようだ。
『それで、その中で高い建物が俺たちがいるホテルと、用途は不明だが数件の建物、教会と城ってところだな。とはいえ、射線の関係上、教会と城以外は射線が通っていない』
『不思議だよな。いや、ばらけているって感じか?』
『まあ、色々と理由は考えられるが、一旦警戒するのは教会と城ってだけだな。高さについてはそんなもんだが、町を実際に見てというと、やっぱり西洋の文化が近いな』
『ああ、どう見ても西洋だな。幸い、石畳を敷いているところが多いから、泥跳ねは少ないだろうな。とはいえ、やっぱり文明的には中世より少し上ってところか』
「少し上? なんで?」
『ああ、そこは簡単だ。トイレがあるんだ。ああ、いやなんというか……』
『衛生面だ。思った以上に糞便の匂いがしない。おそらく下水道って感じの、専用の汚水路があるんだろう』
「あ、そうなんですか」
ノスアムも糞尿の処分は雑でいたるところから酷いにおいがするんだよな~。
これだけは異世界に来ても慣れない。
というか、ファンタジーの世界もこういうのは進歩していないことに愕然としたね。
まあ、田中さんとそのことで話をすれば、そんなこととは言わないが、下水道工事をするなら、軍事力を高める方が優先されるって。
確かに、魔物とか盗賊とかそういう危険が沢山ある中で、衛生面とかこの世界ではよくわかっていないことに資金や人員を回すなんて言うのはまずないよな。
俺たちは石鹸や消毒液での手洗いうがいをしっかりしようと改めて思った。
と、そこはいいとして、アダムズ王都はその下水が完備されているってことは……。
「やっぱり、ウエストスターズの王様は地球人の可能性がたかいってこと?」
『だな。ルクセン君の言う通り、その可能性は高いと思う。そうでもなければ下水道とか糞尿の処理ルールを作ろうとは思わないだろうしな』
『まあ、そういう方向性を見出した人物って可能性もゼロじゃないだろうけど、ほぼ確定だろうな。あ、あと、優先的に見てほしいというか、調べてほしいことがあるんだけど、ダストいいか?』
『ん? なんだ?』
珍しい、ジョシーさんが調べてほしいことがあるっていうのは。
基本的には自分で勝手に調べてくるって感じなんだけど……。
『ああ、元々銃があるみたいなことを化け物が言ってたんだよな? ここのどこかにその手の武器がないか上空から探せないか? あるいは近くの軍事施設とか。王都ならその手の武器が配備されていても不思議じゃないだろう?』
『なるほどな。確かに銃器があるようなことを、ノルマンディーに来た奴は言っていたな。なら、その手の武器を持ったり、配備されていても不思議じゃないか』
なるほどな。
敵が銃器を持っているかの確認か。
『結城君。ジョシーからの提案だが、頼めるか? こちらも勿論捜索してみるが、王都から離れた施設にある場合は確認しにくいからな』
「わかりました。俺たちは具体的にはどうしたらいいですか?」
『そうだな。とりあえず、王都上空、全体が見えるぐらいに上がってくれ。そこから、どこを探るか決めよう』
『素直に王都内に軍事施設があるといいんだがな。この手の兵器って別の場所で開発しているだろうしな~』
『それはそれで仕方がない。とはいえ、開発生産はしていなくても、王都に持ち込んでいる可能性はあるからそれを探してもいい。とりあえず、ドローンは捜索用に3つ追加するか』
ということで、王都全体を見る機体、そして王都以外を捜索する機体、王都の怪しい所を捜索する機体が増えて、それを俺たちが扱うことになった。
もちろん田中さんたちも、別で銃器を中心に調べるようだ。
他の兵器もあるかもしれないという懸念もあるから、そちらも調べるとのこと。
いや、単純に俺たちじゃ、兵器を見ても兵器だと気が付けない可能性が高いってことなんだけどな。
「ねえ、話はわかったけどさ。これって結界設置と並行してってことだよね?」
「確かに、ノスアムや砦の監視も一緒にですわよね?」
「あ」
これは不味い。
ノスアム砦の監視はノールタル姉さんたちと分担してはいるが、アダムズの町もとなると、俺たちの分を変わってもらわないと無理だ。
……大丈夫かこれ?




