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ステーショナリィ☆プリンセス るりか  作者: 真坂野琉実
第01話 「ステーショナリィ☆プリンセス誕生!」

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Bパート-002

「ルリカ様の魔法の力を佐々木さんに届けるためには、近づかないといけないっピ」

「どのくらい?」

「ルリカ様の魔法力だと3mくらいだっピ」

「3mってよくわかんないよぅ……」

「とにかくあの人の横に座ればいいっピよ」

「そっか!」

メートルは学校で習ったけど、どのくらいかって言われたらわかんない。

それならモノの言う通り横に座るのが簡単だよね!

るりかは佐々木さんの前に立って挨拶した。

「こんにちは!」

『知らない人とお話する時は挨拶から』ってママも言ってたもん。

佐々木さんは少し顔を上げてちらっとるりかを見たけど、またうつむいてしまった。

「……これは重症であるな」

クルトが呟いて少し遠くの木に飛んでいってしまった。

木の一番上の方の枝にとまって何だかキョロキョロしている……どうしたのかな?

「ルリカ様、横に座って話しかけてみるっピ」

るりかの肩に座っていたモノがアドバイスしてくれた。

「うん!わかった、やってみる!」

るりかは佐々木さんの横にちょこんと腰掛けて話しかけてみる。

「こんにちは!佐々木さん!」

さっきよりも大きな声で挨拶してみる。

「うわぁぁっ!何なに!」

佐々木さんは大きな声を出して飛び上がり、そのまま地面にへたり込んでしまった。

「るりかだよ。佐々木さん、お話しよ?」

「し、小学生?……意味分からないんだけど……」

ぶつぶつ言いながら、佐々木さんはお尻をついたままじりじりとあとずさりする。

とても驚かせちゃったみたい。

……でも、手に持ったスケッチブックは大事そうに抱えているの。

「あの!おはなし……」

佐々木さんはるりかの言うことを全然聞いてくれない。

聞いてくれないだけじゃなくて、立ち上がって走って逃げ出したの。

「待って!佐々木さん!」

そんなるりかと佐々木さんを見て、モノが肩から飛んで、るりかの前に浮いて言った。

「ルリカ様!魔法のペンだっピ!佐々木さんのイメージにある絵本作家さんに変身して、魔法のペンを使うんだっピよ!」

そっか、佐々木さんの憧れていた人に変わるんだね!

「ラビ!お願いっ!」

「モード移行申請受理したピョン!ドリームモード、起動するピョン!」

ラビが言うと、手首のスマートウォッチからピンクと黄色の光の粒子が溢れ出し、るりかの身体をふわりと包み込む。

光が消えると、ベレー帽、ワンピースにお洋服が変わっていた。

……これが絵本の作家さん……なのかなぁ?

モノがふわふわと浮きながら教えてくれた。

「ルリカ様、横に行って話しかけてみるっピ。ドリームモードに変身すると、ルリカ様の周りがドリームエリアに変わるっピ。この中では相手の警戒心がなくなるっピよ!」

「そうなの?」

よく分からないけど、佐々木さんとお話できるようになるのかなぁ?

確かに、さっきまで驚いて走って逃げようとしていた佐々木さんが立ち止まってきょろきょろしている。

るりかはそんな佐々木さんの前に行って、もう一度話しかけてみる。

「ねぇねぇ。それなぁに?」

「……えっと、君は誰なんだい?」

佐々木さんはさっきと違って、るりかのお話を聞いてくれるみたい。

だからるりかももう一度自己紹介をする。

「るりかはね、ステーショニア王国のプリンセスのルリカだよ?今は絵本の作家さんなの」

「……プリンセス?……絵本……作家?どういうこと?」

佐々木さんには、るりかが絵本作家だってことがよく分からないみたい。

だから、佐々木さんが逃げるときにも大事に抱えていたスケッチブックのことを聞いてみる。

「それってスケッチブックでしょう?何が描いてあるの?」

るりかが佐々木さんの顔を覗き込むと、佐々木さんは少し考えてから決心したように言った。

「……あ、あぁこれかい?欲しかったらあげるよ。いらないなら捨てちゃっていい……いや、むしろ捨ててくれないかな?」

そう言ってスケッチブックを差し出してきた。

表紙はボロボロ、端っこも少し折れてる……きっと何回も何回もめくったんだ。

るりかもスケッチブックをめくって、中を見てみる。

……そこには夢の世界が広がっていた。

ピンクの大きなイルカさんが青い空を飛んでいる絵。

ふわふわした雲の中を走るライオンさん。

そして……森の中で迷子になって泣いている女の子の絵。

どれも素敵な物語が書いてありそうな絵だった、何だか心がぽかぽかする……。

「こんなに素敵なのに、どうして捨てちゃうの?」

佐々木さんは少し困ったように、しばらく目を閉じていた。

後ろを向いて、ゆっくり歩きながら、噛みしめるように言った。

「……大人になるとね、夢を諦めなくちゃいけなくなるんだよ。……僕はね、子供の頃に絵本を書く人になりたかったんだよ。笑っちゃうだろ?」

そう言いながら佐々木さんは振り向いて、るりかに力のない笑顔を見せた。

でも、るりかには笑っているようには見えなくて、涙は出ていないけど泣いているように見える。

「おかしくなんかないもん!この絵、とっても素敵!るりかもこんなイルカさんに乗ってみたい!」

「……乗ってみたい、か」

佐々木さんはぽつりと呟いた。

「ありがとう。でもね、これはただの絵なんだ。乗れるわけないし、お金を稼いでごはんを食べられるわけでもない……」

「そんな……」

佐々木さんは続ける。

「会社の上司に言われたよ。『いつまで落書きしてるんだ。そんな暇があるなら仕事覚えろ』ってさ……」

佐々木さんの声はだんだん弱く、震える。

……大人の言うことは難しくてるりかにはわかんないや。

「違うもん!この絵は魔法の絵だもん!るりかの心がぽかぽかしたもん!だから捨てるなんて言っちゃだめーっ!」

「……っ!」

佐々木さんが息を呑んで目を見開いた。

その瞳の奥で、黒くて重たい何かがドロリと揺れたように見えた。

まるで、無理やり蓋をしていた悔しさが溢れ出して、破裂しそうになっているみたいに。

「まずいっピ、この深度の悪夢には刺激が強すぎるっピよ!」

モノが焦った声を上げ、るりかの前に両手を広げて飛び出してきた。

「ルリカ様、今だピョン! 魔法のペンを使うピョン!」

スマートウォッチからもラビの必死な声が響く。

そうだ、佐々木さんに夢を見る力を書き戻してあげないと!

るりかが強く思うと、ランドセルがひとりでに開き、ピンクゴールドのキラキラと輝く細身のペンが飛び出してきた。

るりかがペンを握ると、それを合図にパチン、と小さな金属音を立てて、王冠の飾りがついたキャップがひとりでに外れた。

現れたのは、銀色に光る細いペン先。まるで大人が使う万年筆みたい。

キャップが外れると、ペン先からシュワシュワと星屑のような光の粒子が溢れ出し、るりかの周りをふわりと包み込む。

そして、るりかがペンを振ると光の粒子はペン先に集まりながら軌跡を残して流れる。

「夢見る力をもう一度!佐々木さんの心に書き戻してあげる!ステーショニア☆リライト!」

想いを込めて大きな星を空中に描き、ペンでその星を佐々木さんの心に導く。

星の軌跡を描いたキラキラした光が佐々木さんの体に吸いこまれて、やがて消え……目を見開いていた佐々木さんがゆっくりを目を閉じた……。

……書き戻すための呪文はずっと練習してたんだからきっと大丈夫。

るりかもいつの間にか絵本作家さんから元の魔法少女に戻ったみたい。

佐々木さんはゆっくりと目を開け、そして静かに言った。

「……そうだね、もう一度描いてみる。もう捨てるなんて言わないよ」

そう言って佐々木さんは大事そうにお絵かき帳を抱きしめた。

その顔からは、さっきまでの暗い影はすっかり消えて、かわりに子どものような優しい笑顔が浮かんでいた。

「今日からまた絵本を描いてみる、もう諦めるなんて思わないよ」

佐々木さんは決意したように言った。

「うんっ! やくそくだよ、お兄ちゃん!できたら見せてね!やくそくだよっ!」

るりかが元気に手を振ると、佐々木さんも嬉しそうに手を振り返してくれた。

「奇跡だっピ……!初陣でいきなり大惨事にならなくて本当によかったっピ!」

るりかの足元で、モノが胸を撫で下ろしてヘナヘナと座り込んでいる。

モノはいつも大げさなんだから。

ざざっ、と遠くの木が揺れる音がした。

振り返ると、木の上にいたクルトが静かに羽を整えながら、こちらへ滑空してくるところだった。

「るりか様、任務完了だピョン! おうちに帰るピョン!」

ラビの元気な声に、るりかは「はーい!」とお返事をして、大満足で公園をあとにした。

◇

ピピッ!

端末が通知音を鳴らした。

パパは端末を操作して、ママに見るように促した。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

氏名:佐々木健一

年齢:22

職業:印刷業

状況:リライトによる現実の悪夢の消失

:絵本作家への意欲が回復

侵食度:5%

夢 :絵本作家

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「瑠璃香が頑張ったようだよ」

「さすがは王女様ね、私の時とは違うわ」

「ふふふっ。王女様じゃなくて瑠璃香だからじゃないかな」

「そうね。瑠璃香は真っ直ぐだから、きっと気持ちも届くのね」

パパとママは顔を合わせて微笑んだ。

◇

「ただいまー!パパ!ママ!るりか、お仕事できたよー!」

玄関を開けて靴を脱ぐのももどかしく、リビングに駆け込みながら言った。

「るーりーかー!靴はちゃんと揃えることって王妃様から言われたでしょ!まずは靴を揃えてからっ!」

リビングに入った途端、ママが大きな声で叱る。

「はーい」

いきなり怒られちゃった。ちょっとしょんぼり。

靴を揃えてもう一度リビングに戻ると、そこには笑顔のパパとママが待っていた。

「おかえり、瑠璃香。初めてのお仕事はうまくいったのかな?」

パパが椅子から立ち上がって駆け寄り、るりかのことを抱き上げてくれた。

「おかえり、瑠璃香」

ママも抱っこされたるりかの頭を優しく撫でてくれる。

るりかも改めて言う。

「ただいま!パパ、ママ。お仕事うまくいったよ!」

「頑張ったな!瑠璃香」

「すごいわ、瑠璃香」

パパとママが口々に褒めてくれる。

「今日はね、お誕生日のケーキの他に、初めてのお仕事よくできましたのケーキも用意しなくちゃね!」

ママがすごいこと言ったの、るりかびっくり!

「はははっ、今日は豪華にケーキを2段にして食べられるな!」

パパも一緒になって笑ってる。

こんな誕生日、はじめて!

えへへ、るりかの魔法のお仕事、これからも頑張っちゃうんだから!


(エンディングテーマ)


・次回予告

モノだっピ!

ルリカ様の活躍見てくれたっピかな?

今回は何とか無事にお仕事が終わったっピ、それもぜ〜んぶオイラのおかげだっピよ?

次回! ステーショナリィ☆プリンセス るりか!

『悪夢の変身にご用心!』

来週も、みんなで夢をリライト☆だっピ!

本当はCMも入れたかった。

文字数制限とか聞いてないです。

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