Bパート−001
(CM)
「ルリカ様!ステーショニア・ウォッチで変身を選ぶか、ワタシに変身したいと言えば変身できるピョン」
そうだっ!お仕事するなら魔法使いの服に変身しないとね!
「るりか、変身したい、変身したーいっ!」
るりかがウサギさんに言うと、ウサギさんは器用に敬礼して言った。
「モード移行申請受理したピョン!プリンセスモード、起動するピョン!」
右手のスマートウォッチからピンクと黄色の光の粒子が溢れ出し、るりかの身体をふわりと包み込む。
「わぁっ!きれー」
包みこんだ光の粒子が帯になってるりかの足元から螺旋を描いて駆け上る。
光の帯がるりかの身体に触れると、お洋服が全て光の粒になって消えていった。
「きゃっ!」
気がついたら裸だった。恥ずかしくて思わず両手で胸を隠してしまう。
頭の上まで駆け上がった光の帯は、ピンク色になって今度は逆に下に向かって駆け下りてきた。
その光が身体に触れると、ふわりと広がるパステルピンクとフリルいっぱいのドレスに変わっていく。
首元と腰に光沢のある大きめのリボン、幾重にも重なったちょっぴりミニのスカート。
そして、残った光が背中に回ったと思ったら、背中に慣れ親しんだ感覚。
見慣れた赤いランドセルが現れた。
「変身シークエンス、完了だピョン!」
ウサギさんが器用にパチパチと拍手をしている。
「瑠璃香、可愛いじゃないか」
「似合っているわ、瑠璃香」
パパとママも手を叩いて喜んでくれた。
るりかはリビングの姿見に駆け寄って、くるくると回ったり、ポーズを取ったりしてみた。
「すごーい!ほんとに変身した!……でも、なんでランドセルなの?」
「それはステーショニアの掟だっピ」
モノがいつの間にか食卓の上に乗って、腕を組んで頷きながら何故かドヤ顔をしている。
「そうね、ママが瑠璃香くらいの時もお仕事の時はランドセル背負ってたわ。懐かしいわね」
ママは椅子に座ってテーブルに頬杖をつきながら懐かしんでいる。
ママもるりかくらいの時があったんだね……でも、パパはどうなんだろう?
パパはるりかの視線に気付いたのか、照れながら言った。
「男の子は変身したりしないんだ。だからランドセルも背負わないんだよ。男の子はお仕事じゃなくて訓練ばかりだからね」
「そうなんだぁ……男の子って大変」
「そうだ、せっかく変身したから、瑠璃香に今日のお仕事を送っておくよ」
パパが自分のスマートウオッチを操作すると、るりかのスマートウオッチのウサギさんがジャンプしながら言った。
「メールが来たピョン!メールが来たピョン!」
……ジャンプする度におみみが揺れてとっても可愛い。
ウサギさんを見ていて、とても大事なことに気がついた。
「そういえばあなたのお名前は?」
「ワタシにはまだ名前がないピョン。ルリカ様に付けてほしいピョン」
そうなんだ。るりかが名前をつけなくちゃいけないんだ。
……うーん……どうしよう……。そうだ!ウサギさんだもんね。これに決まりっ!
「決めたわ!あなたの名前はラビ!」
るりかが言うと、ラビは嬉しそうに何度も飛び跳ねた。
「固有名『ラビ』設定完了。……ルリカ様!今日からラビをよろしくピョン!」
るりかがそんな可愛いラビの様子を眺めていると、肩に乗ったモノが呆れたように言った。
「ずいぶん安直な名前だっピね……」
るりかはそんな嫌味は無視してラビに言う。
「ラビ、パパからのメールを見せて!」
「はいはーい!メール開封するピョン!」
空中にメールの本文と写真が浮かび上がった。
映し出されたのは、ちょっと疲れた顔をした男の人の写真。
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氏名:佐々木健一
年齢:22
職業:印刷業
状況:公園でため息をつきながら空を眺めている事が多い。
:激務のため夢を諦めかけている。
侵食度:60%
夢 :絵本作家
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……えーと……さ、ささき……けんいち……、22さい……いん……さつぎょう?
るりかが困っていると、パパがメールの内容を教えてくれた。
「佐々木健一さん、22歳。公園でため息をつきながら空を眺めているらしいよ。昔は絵本の作家さんになりたかったらしいんだけど、今は印刷会社のお仕事が忙しいみたい」
「えほん?るりか、絵本だーい好き!」
るりかが両手を挙げて喜ぶと、ママが椅子から立ち上がってるりかの方に微笑みながら歩いてきた。
「ふふ、そうね。瑠璃香、いい? 初仕事だからって緊張しなくていいのよ。佐々木さんに、子どもの頃のワクワクした気持ちを思い出させてあげてね」
ママはるりかの前に立って、そう言いながらるりかの頭を優しく撫でてくれた。
「はーい。パパ、ママ!行ってきます!」
「気をつけてね、瑠璃香ならきっとできるわ!でもね刺激しすぎて暴走させちゃダメよ?」
「ぼーそー?」
「あんまりしつこくすると、大人は怒っちゃったりするからね、それと変な人についてっちゃだめだぞ、瑠璃香」
「はーい!いってきまーす!」
◇
玄関を開けて外に出ると、お外は晴れだった。
おひさまの光がお洋服に当たるとキラキラと反射する。
「しゅっぱーつ!」
るりかが右手を高々と突き上げて駆け出すと、背中のランドセルがトントンと軽快に跳ねる。
「ルリカ様、待つっピ!ボクが案内しないと道に迷うっピよ」
「ふん、お前などついていくだけ無駄であろう。姫様、私が空から周囲を確認いたします故」
……後ろからバタバタとモノとクルトが追いかけてくる。
「ルリカ様、そこの角を右だピョン!」
ラビが指さす方向に曲がればいいみたい。
「モノと違って頼りになるのね。ラビは」
「うぬぬ、ボクだってルリカ様のために一生懸命だっピ!」
モノの言葉を笑って受け流す。
右に曲がってから住宅街を抜けると、時々遊びに行く児童公園が見えてきた。
るりかはこっちの公園には来ないから、よくわかんないんだけど。
「ルリカ様〜、あそこに座ってるのがターゲットの佐々木健一さんだピョン」
ラビが指さした方向にはベンチに座っている若い男の人がいた。
よく見るとさっきのメールの人に似ている。
……でも、何だかちょっと元気がないみたい。スケッチブックを抱えてうつむいてるの。
「あの者はだいぶ夢の力が失われて、現実の悪夢に侵食されてるのである」
クルトが目をまん丸にして教えてくれた。
だったら早く助けてあげなくちゃね。




